【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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40.賢者の指輪 ②

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 薄暗い視界、目が慣れないのでよく見えない。ここは一体何処だろう? 固くて冷たい床に寝かされているみたいだ。

 遺跡の中?
 みんなは何処……?
 後ろに引っ張られて、口を塞がれた。魔物が出た?
     何かが足元の方から上がってくる。冷たい空気の塊が胸までやって来た。

 体が動かない。指先さえ張り付いてるみたいだ。

    真っ白い髪の毛が見えた。
 ゴースト!?

『へぇぇ。琥珀の瞳……綺麗だね』
 こ、怖くて声が出ない。

『なんで、あんなのくっ付けてるの? 真っ黒の……バケモノ』

 くっ付けてる?
 真っ黒のバケモノ?クロが魔物だから?
『なんか、ものすごく禍々しいんだけど……誰だったっけ? 昔……会ったような? 似てるけど、違うか。あいつはもっと狂気に満ちてたな』

「ク……クロ……は、僕の大切な黒兎です」
 怖いけど、この感じは聖遺物レリックに似ている。聖女の髪飾りバレッタの時に感じた感覚だった。

『あ、聖女の髪飾りバレッタの匂いもする。知り合い?』
明るい口調になった。
「髪飾りは、マリア様が身につけています。カイル様は勇者の願い石ネックレスを持っています」

『へぇぇ、懐かしい。また必要になってるの? 魔王城に行くの? だったら、ここから出してくれる?』

「僕達は、捜し物をしています。平面図が……合わなくて。賢者の指輪リングを見つけられないんです」

『ああ。なんか混ざった変な物のせいで、トラップが発動しちゃうんだよ~。昔設定して、忘れてた。結構、人気者だから、盗賊に狙われるんだ。自衛したまま忘れてた』

「そうなんですね。皆のところに戻らせて下さい。一緒に来て下さい。勇者様が待っています」

『──勇者は、ネックレスを選んだんだよね?アレは本当に勇者一筋だからな……ねぇ僕と相性のいいのって他にいる?』

「エ、エルフのテオ様とか?」
『エルフ……清廉潔白みたいな振りする奴らか、お?』

「あの?」

『おお~、君の仲間めちゃ怒ってるね~。こっちに来そうだ。すごいな、ここを見つけるのか。君の名前おしえて?』

「──シェリル」

 ドォォォォ────ン。
 爆音と共に岩壁が壊されたみたいだ。砂混じりの風が吹き抜けていく。

「シェリル!!」
 カイル様の声がした。
 黒兎姿のクロが、走ってくるのが見えた。

『───我は選ぶ。シェリルは、我が主だ』

 眩い光と共に、白い人影は指輪に姿を変えて僕の右手の中指に収まった。

 僕は、賢者の指輪リングに選ばれてしまったみたいだ。
 
    でも───あ、つい。

     思わず、胸を押さえた。
    クロがつけくれた契約の印が、熱を持って痛みに変わる。
    焼けるような痛みに、片手で胸を押さえる。
     近付いてきた黒兎の姿に、助けを求めた。
    『クロ……』
   思わずクロに向かって、手を伸ばした。








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