美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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38.遺跡②

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 王都から少し離れた森のような場所に、クロッカス王国の遺跡がある。

 最近、魔物が目撃されているとの事だ。廃墟と化している白亜の建物。昔の首都で、魔族との戦いの時にここを捨てたのだ。

 所々ひび割れた壁。壊れた床や天井を見ると、どれだけ戦闘が激しかったのか分かる。

 今は静寂の中、緑に覆われて廃墟になってしまった。

「ダンジョンとも違うけど、廃墟の中も微妙に気持ち悪いわね」
 細長杖ロッドを握り締めて、マリア様が入口らしい場所を覗き込んだ。髪には、聖女の髪飾りバレッタが付けられていて、何となくだけど視線を感じてしまう。

「魔獣じゃ無くて、生きる屍アンデッドでも出てきそうだな」

 キース様が体を解しながら、同じ場所を見ている。

「ここにあるのは、賢者の指輪リング だ。聖女の髪飾りバレッタのように護られている可能性がある。罠には注意しよう」

 いつもの順番で言えば、キース様が先頭になる。でも、今回は珍しくテオ様が前に出たいと言ったのだ。

「まともにテオと話した事がないが、賢者の指輪リングとの適合を確認したいって事だな。俺は出来れば聖騎士の耳飾りイヤーカフを狙っている」

 魔法騎士のキース様なら確かに、聖騎士の聖遺物レリックが欲しいと思う。

 それぞれの聖遺物レリックに相性の良さがあるみたいだ。

 クロは、相変わらず背中にくっ付いている。
『無茶をするな。危険な事は、前の二人にさせておけばいい。真ん中にいろ』

『キース様とテオ様? でもテオ様が前衛にいるなら、後衛は僕かマリア様になる。でも、マリア様はカイル様と並んでるから後ろにいたい』

 クロがカプリと項あたりを甘噛みしてくる。

『──シェリルの後ろだけは、守ってやる。それにアレは……たぶん』

『アレって何?』
『面倒ごとだ。無視しろ。ほだされるなよ』

『──面倒ごと?』

「シェリル」
 後ろを振り返ったカイル様に名前を呼ばれた。

「はい」
「遅れないようにそばにいろ。一人で無理はするな」

「──はい」

「シェリル……あの」
 マリア様の様子が、聖女の髪飾りバレッタの一件からおかしいのだ。
 ズバズバとハッキリした口調だったのに。

「──後方は、私もいるんだから……無理とか、邪魔とかしないのよ。そ、それだけよ。ちゃんと、ついてくるのよ」

「はい」
 そう言うと、前を向き直した。
 そして、マリア様は、細長杖ロッドをトンと垂直に降ろした。ポンポンポンと両側面に拳より小さな球体が淡く光って遺跡内を照らした。

 魔法で出来た簡易照明だ。ひんやりした空気を感じながら、古い遺跡内の平面図に従って、賢者の指輪リングを探しに向かった。



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