【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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39.賢者の指輪 ①

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「カイル。本当にこっちなのか?」

 キース様が、壁の前で止まった。平面図と合わない壁が出てくる。誘蝶ルアハ幻影兎ラビィアに惑わされている訳ではない。壁はしっかりと存在している。
 厚さも十分にある。

 平面図が偽物だったりするのだろうか? 聖女の髪飾りバレッタを貰えなかったから、王家が偽物を寄こした?

 そんな事をしていたら、魔王討伐は遅れるだけだ。王家が個人的な恨みで動くとも思えない。王女は、脅えてしまい見送りも出てこなかった。聖女の髪飾りバレッタにより言葉を言われたのだろうと、クロは言った。

『アレは、気に要らない奴に容赦がないからな』
 今はマリア様を選んでくれたのだから、良かった。

 しかし、遺跡の奥が把握出来ずにずっと歩いているのだ。

 ──迷子になっている状態だ。マリア様の疲弊も、キース様の苛立ちもメンバー伝わり始める。

「テオ。何か分かるか?エルフの力で」
 テオ様は、エルフだ。
 人間に興味は無いってアルト様が言っていたけど。特に不平不満は聞いた事がない。

 皆がテオ様を見つめる。

「そう……だな。拒絶されている? 気がする」

「えっ? それって聖女の髪飾りバレッタの時みたいに……反応してくれなかった感じ? でも、手には入ったもの。あの時以上に、私達が嫌って事かしら?」

聖遺物レリックに拒絶されてどうするんだ? 敵が出ないのは助かるが、永遠と探し回る訳にもいかない……あ」

 突然、変な声を出したキース様を皆が注目した。

「シェリル……その黒兎、聖女の髪飾りバレッタを取ってこれただろ? 今回も、魔獣の能力で場所を突き止められないか? テイマーの能力で命令したらどうだ?」

「キース。ちょっと調子良すぎるわよ。散々、シェリルの事否定してたじゃない」

 キース様を見ていた皆が、クロを見ている。あの時は、クロはご褒美の為に頑張ってくれたのだけど。

「──いい加減にしろ。キースもマリアも、魔獣に頼るな。俺たちで見つける。だが、少し休憩をどこかで取ろう。テオ、安全そうな所を見つけてくれ」

 テオ様が頷いて、先を歩く。少し座れそうなスペースに着いて、マリア様が細長杖ロッドをトン、トン床に当てて行く。光の陣が、結界を作った事を示した。

 簡易式のテーブルに、温かい飲み物を用意する。その間に平面図が広げられ色々と皆で確認していた。

 クロは、大人しく背中に張り付いている。少し離れて座っていると、カップに紅茶を入れたカイル様がそばに来た。

「シェリルも、ちゃんと休むんだ」
 カイル様にそう言われて、素直にカップを受け取った。

「シェリル、お前は正式なメンバーだと皆に伝えたい。そんなに離れて気を使う必要もない」

 ───本気で言ってるんだ。でも、期待して違ったら? クロの能力が欲しいのかな? あの時、槍で死んでしまうと心配したんだ。出来れば、クロに危険な事させたくない。
 
「お役に立てる事はします。でもクロを犠牲にするとかは、出来ません」

「そんな事はしない。シェリル、今まで傷付けて悪かったと思っている。お前の才能に嫉妬してたんだ。本当にすまなかった。だから聖遺物レリック集めて終わりじゃなく、この先もずっとそばにいて欲しい」

「え、あの。聖遺物レリックを全部集めるまでじゃなくて……もしかして魔王討伐までですか? それは、もう少し優秀な人がいいと思いますが」

 背中のクロが、前に移動してきた。

「この黒兎、本当にシェリルを守ろうと必死だな……」

 クロに声をかけようとした時、背中に気配を感じた。ローブを引っ張られているみたいだ。
誰か、いる?
口元を塞がれて、後ろに引っ張られていく。誰も気が付かない? カイル様はクロに話しかけてる。

『クロ……』
視界が真っ黒になってしまった。



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