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33.王女
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勇者一行として、大歓迎を受けパーティにも招待される事になった。
みな、それぞれが正装を準備されている。何故か僕の分までだ。
従者のような立場なので、クロと従者用の部屋に案内してもらうつもりでいたのだ。
カイル様にもきちんと着替えて、陛下の挨拶に同行する旨念押しされた。
カイル様は、最近僕に何か話したそうにしている。いよいよ、新しいメンバーでも見つけたのかも知れない。
そんな時、何やら騒ぎが起きていると、報告が来た。女性用の待合室でマリア様と王女が揉めているらしいのだ。
聖女の髪飾りを今夜のパーティーでマリア様がつけるはずだったのだ。
それなのに、王女が試しに身に付けさせて欲しいと言っているそうだ。
マリア様は同意出来ずに握りしめたままらしい。
そして王宮の従者の方が、カイル様を呼びに来たのだ。
「王女殿下は、勇者様に相応しいのは自分ではないかと、おっしゃって引かないのです。一度、聖女の髪飾りを王女殿下に付けさせて欲しいと、陛下からも伝言がございます」
大陸間で平和協定等事もある。マリア様も強くは言えない。それでもダンジョンで命懸けて探して来た物を簡単に譲る事も出来ない。
念の為に、皆がいる場所で二人とも装着を試す事になった。
まずはマリア様の髪に合わせて見たが、銀細工の髪飾りの紫水晶は、何の反応もしない。
それを見たクロが、少し笑った気がした。
そして、見事な金髪の王女殿下が微笑む。
「──適合していないと、聞きましたので。私も、神への祈りを欠かす事などありません。試しに付けさせてくださいませ。選ばれたなら魔王城に同行させていただきますわ」
共に連れて来られたキース様や、興味のなさそうなテオ様もことの成り行きをじっと見守っている。
逃げる事が叶わなかった僕も、カイル様と背中にくっついてるクロとその様子を見ていた。
『面倒だな……』
『反応あるのかな?』
『あったとしても、面倒事の予感しかしない』
クロは、項の辺りが好きなのか何時もスリスリとしてくる。
『面倒事って? こら、だめだって変な声でるから』
『──馬鹿だな。意思を持つ聖遺物を付けたいなんて』
『それどう言う意味?』
銀細工の繊細な髪飾りだった。紫水晶の小さな石が点在して、神聖な雰囲気がある。その髪飾りが意思があって面倒とは一体?
豊かな金髪は綺麗に編み込まれ、そこへ聖女の髪飾りが付けられた。
なんの反応もないかと思ったが、淡く発光した。
王女が勝ち誇ったように微笑んだ後、意思があるバレッタは強く反応したのだ。
──最悪の方向に。
銀細工が動いた様に見えた。王女の髪の毛に絡まり、後方へ引っ張られるように動いた。その反動で王女は椅子ごとひっくり返った。
そのまま、ズルズルとこちらに王女を引きずって来る。誰も気味悪がって近寄らない。
え? 僕の方に寄ってくる。
『本来は、マリアが相応だろうな。だが、お前の瞳に惹かれるのだろう。ティムをしたら大人しくなるが、俺としては鬱陶しいな』
『聖遺物をティム?嘘だよね?』
「痛い!痛い───た、助け……勇者様。これ、外してぇ。ごめんなさい。許してぇ」
王女が泣き始める。ブチ、ブチ……と髪の毛が抜ける音がした。
髪の毛が強く引っ張られて、顔は引きつっている。
髪が絡まったまま浮いてる銀細工のバレッタに、思わず膝をつき手を伸ばした。
『魅了、我が支配下に入れ』
何やら、嬉しそうな声が聞こえてきた。
『そんな事しなくても、私は貴方がいいのに。だめ?』
『どうかお願いします。マリア様を守って』
絡まっていた髪の毛は解かれて、手の中にバレッタがある。
見守っていた侍女達が、慌てて王女を支え起こした。床に金糸の髪がバラバラと落ちていた。
僕は、それを座って呆然と見ていたマリア様の所へ持っていく。手先は器用な方なので、髪を編み込んでバレッタを付けてみた。淡く紫色の光に包まれる。
聖女の髪飾りは、素直に言う事を聞いてくれたのだ。
『分かったわ。それでも、貴方を優先させてね』
ただ、そう一言つけ加えられた。
みな、それぞれが正装を準備されている。何故か僕の分までだ。
従者のような立場なので、クロと従者用の部屋に案内してもらうつもりでいたのだ。
カイル様にもきちんと着替えて、陛下の挨拶に同行する旨念押しされた。
カイル様は、最近僕に何か話したそうにしている。いよいよ、新しいメンバーでも見つけたのかも知れない。
そんな時、何やら騒ぎが起きていると、報告が来た。女性用の待合室でマリア様と王女が揉めているらしいのだ。
聖女の髪飾りを今夜のパーティーでマリア様がつけるはずだったのだ。
それなのに、王女が試しに身に付けさせて欲しいと言っているそうだ。
マリア様は同意出来ずに握りしめたままらしい。
そして王宮の従者の方が、カイル様を呼びに来たのだ。
「王女殿下は、勇者様に相応しいのは自分ではないかと、おっしゃって引かないのです。一度、聖女の髪飾りを王女殿下に付けさせて欲しいと、陛下からも伝言がございます」
大陸間で平和協定等事もある。マリア様も強くは言えない。それでもダンジョンで命懸けて探して来た物を簡単に譲る事も出来ない。
念の為に、皆がいる場所で二人とも装着を試す事になった。
まずはマリア様の髪に合わせて見たが、銀細工の髪飾りの紫水晶は、何の反応もしない。
それを見たクロが、少し笑った気がした。
そして、見事な金髪の王女殿下が微笑む。
「──適合していないと、聞きましたので。私も、神への祈りを欠かす事などありません。試しに付けさせてくださいませ。選ばれたなら魔王城に同行させていただきますわ」
共に連れて来られたキース様や、興味のなさそうなテオ様もことの成り行きをじっと見守っている。
逃げる事が叶わなかった僕も、カイル様と背中にくっついてるクロとその様子を見ていた。
『面倒だな……』
『反応あるのかな?』
『あったとしても、面倒事の予感しかしない』
クロは、項の辺りが好きなのか何時もスリスリとしてくる。
『面倒事って? こら、だめだって変な声でるから』
『──馬鹿だな。意思を持つ聖遺物を付けたいなんて』
『それどう言う意味?』
銀細工の繊細な髪飾りだった。紫水晶の小さな石が点在して、神聖な雰囲気がある。その髪飾りが意思があって面倒とは一体?
豊かな金髪は綺麗に編み込まれ、そこへ聖女の髪飾りが付けられた。
なんの反応もないかと思ったが、淡く発光した。
王女が勝ち誇ったように微笑んだ後、意思があるバレッタは強く反応したのだ。
──最悪の方向に。
銀細工が動いた様に見えた。王女の髪の毛に絡まり、後方へ引っ張られるように動いた。その反動で王女は椅子ごとひっくり返った。
そのまま、ズルズルとこちらに王女を引きずって来る。誰も気味悪がって近寄らない。
え? 僕の方に寄ってくる。
『本来は、マリアが相応だろうな。だが、お前の瞳に惹かれるのだろう。ティムをしたら大人しくなるが、俺としては鬱陶しいな』
『聖遺物をティム?嘘だよね?』
「痛い!痛い───た、助け……勇者様。これ、外してぇ。ごめんなさい。許してぇ」
王女が泣き始める。ブチ、ブチ……と髪の毛が抜ける音がした。
髪の毛が強く引っ張られて、顔は引きつっている。
髪が絡まったまま浮いてる銀細工のバレッタに、思わず膝をつき手を伸ばした。
『魅了、我が支配下に入れ』
何やら、嬉しそうな声が聞こえてきた。
『そんな事しなくても、私は貴方がいいのに。だめ?』
『どうかお願いします。マリア様を守って』
絡まっていた髪の毛は解かれて、手の中にバレッタがある。
見守っていた侍女達が、慌てて王女を支え起こした。床に金糸の髪がバラバラと落ちていた。
僕は、それを座って呆然と見ていたマリア様の所へ持っていく。手先は器用な方なので、髪を編み込んでバレッタを付けてみた。淡く紫色の光に包まれる。
聖女の髪飾りは、素直に言う事を聞いてくれたのだ。
『分かったわ。それでも、貴方を優先させてね』
ただ、そう一言つけ加えられた。
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