【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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31.魔王クロフィス

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 人間に興味はない。

 こちらに干渉してこなければ、どうでもいいのだ。

 北の魔族領などと荒地のように言われているが、我々に不便はない。食料に困ることも無ければ、人間よりマシな暮らしをしている事を知らないのだろう。最北の荒れ果てた土地に見せているだけだ。

 そして強い者に従う。それで領内は上手くいっていたはずだ。

 種族にもよる。攻撃性の高い魔物。人間の血を好む魔獣など……そんなもの人間界でも同じだろう。

 そいつらのおかげで領内に人間は来たがらない。それで住み分けしているだけだ。

 関わるのも、面倒だった。

    何度か、勇者と呼ばれる者が魔王城へとやって来た。やれ封印だと騒ぐ。その当時側近だった俺は、幻影と記憶操作で処置していた。
    それを良しとしない魔族が偶に暴れる位は、仕方の無いことだ。

 まあ確かに……胸糞悪い魔王がいたのは覚えている。
 そいつは、血を見ると興奮すると言って、人間を嬲り遊んでいた。次第に狂気性が強くなり、弱い魔物まで壊し始めた。

 流石に見ている訳には行かず、つい首を切り落としたら俺が次代の魔王を襲名した。

   こちらに来なければ何もする気は無い。それなのに、人間達が未だに魔王城にやって来る。
    わざわざ死にに来なくてもいいだろうに。
 適当にあしらうのも面倒になり、部下に優秀な奴がいたので、大概の事は押し付けてきたのだ。
    あまり、揉めないように上手くやれと言っていたのだが。
    流石にブチ切れたみたいだ。いい加減、魔王として領内を統治しないのなら、嫁を取って跡継ぎを作れと言う。

「───面倒過ぎる」

 嫁が無理でも、恋人を作れと煩い。ここに居ると、魔族の女や人間の女を勝手に連れてくる。面倒だ。
 仕方がない。自分で探すからと、さらにアレに押し付けて出て来た……地下迷宮ダンジョン深層で、適当に時間を潰す。不思議な進化をした魔物がいて、中々にいい暇つぶしが出来た。
どれくらい経ったか?  寿命の長い俺達は、時間の感覚が違う。
    一番目立たずに紛れ込める場所として選んでいたのに、何やら騒がしい。

「魔獣が騒々しい……魔族領で何かおきているのか?」

 そんな時に、琥珀色の双眸と視線があった。

 惹かれてやまない、その瞳。
 まだ、子供だ。だが……魔力が心地良い。
     育ててみるか?魔族ではない。不思議な魔力を持っている。
 面倒事は嫌なのに。気になって会いに行ってしまう。

 何度となく、会ってる内に名前まで呼ばれるようになった。
 もう少し育てば、連れて行けるか?そう思っていると何やら、嫌な気を纏う男がいる。

 ──勇者の願い石ネックレスを付けている今代の勇者がいた。関わりたくない種族だ。
    その後見かけなくなり、シェリルの魔力を探した。我ながら、こんなにも執着するとは思わなかった。

 もうそろそろ、シェリルを自分のものにする気だった。
    会う直前に巨大蚯蚓ワームが俺を喰うつもりか、目の前に現れる。消すか?と思っていると、勇者以外にも面倒そうな人影が立ち尽くしていた。
    
    それにしても、シェリルの魔力は別格だな。目が合うと、こちらへ向かって来る。この程度魔獣など、今のシェリルなら簡単に消せる。あの綺麗な琥珀を見たくて、じっとしていると他の奴らがごちゃごちゃと動いている。
    
    背中に飛び乗り、成り行きを見ていると何故か、シェリルが殴られた。

 全員、殺してしまうか? 
 そう思ってシェリルの表情をうかがうと、泣きそうな顔をしているので、少し待ってみる事にした。なぜやり返さないのだ?

 防音の結界の中、泣き叫ぶシェリルに胸が傷んだ。

    ──シェリルが欲しい。
 俺が護るべき存在。
 全てのものから、護ってやる。



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