【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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30.カイルの後悔

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 シェリルのティムは、かなり高度だ。ダンジョンで簡単に魔獣をティムしてしまう。
 昔……目立たない様に瞳の色を隠せと言った。子供の時は、自分より優秀な事に嫉妬したからだ。
 兄上だけではなく、シェリルにまで置いて行かれたくなかった。
 あんなに酷いことをしたのに、一生懸命ついてくるのだ。

 いつからか、シェリルを見て思う。
 ──可愛くてしょうがない。

 シェリルより、強くなりたい。俺が、一緒に居られるくらい成果を上げないと、父上達にも認めてもらえないからだ。
    
 今では、琥珀色の瞳は魅了チャーム持ちでは無いかと疑っている。
    昔から、簡単に動物が懐いていた。そんな時は隠していた瞳の色が戻っていた。知らずに魅了する、蜂蜜のような金の瞳。

 あんな馬鹿な事をした為に、接し方が分からなくなった。
 情けない事に冷たくしてしまう。それなのに顔を見れば触れたくなる。他の奴と仲良くしていると、腹が立つ。

     いよいよ学園に入学する事になった。
 学園に従者候補のシェリルも連れて行けばいいと、父上は言ったのだ。
 従者は一人だけ、連れて行ける。

   それでも今回は……連れて行くのは止めたのだ。

 離れれば、この想いが勘違いと分かるかも知れない。
 そう思ったのに。
 置いていく事で、余計に会いたいと思ってしまう。この気持ちがそうじゃないのだと、気の迷いだと思いたくて必死に体を鍛えたんだ。

 それに学園なら、シェリルより優秀になれると思ったのも確かだ。必死に魔法も、剣も、座学も学んだ。

 領内に戻ると、仲間と嬉しそうにしてるシェリルがいた。

 手放したくない。

 そんなある日、神託により……勇者の可能性が出てきたのだ。

 もし……勇者として、確固たる地位を持つ事が出来たら……兄上のいる身として爵位を継げない俺に、爵位が与えられる可能性がある。

半信半疑で、参加したのに勇者の願い石ネックレスが反応したのだ。

 ただ魔王城なんて、いつ戻れるか分からない。俺がいない間に、シェリルが邸を出ていく可能性があった。シェリルを置いて行くには、不安が多すぎた。

 雑用係にしたのも、正規メンバーにしてしまったら……あいつを欲しがる者がいるかもしれないと思ったからだ。

 雑用……身分が低いのだと周りを牽制する為だ。

 本当に、最低だ。

 マリアや王女は、俺を勇者として見てくる。だが、何の気持ちもわかない。

王女と婚姻なんて、何も考えられなかった。

俺を見てるわけじゃない。という名だけが欲しいそれだけの女達に興味はない。

 本当にどうかしている。
どうしてもそばにいて欲しいのが、シェリルなんだ。

あんな事になって、泣かせてしまった。

 シェリルに、泣かれるのは駄目だ。可愛すぎて、抱きしめたくなる。守りたい。俺のものにしたい。唇にも触れたい。命令ではなく、振り向かせたい。せっかく旅をするのだ。
この機会に、シェリルとの距離を詰めていかなければ。

それにしても───あの黒兎、邪魔すぎる。

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