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27.マリア様
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黒兎に戻ったクロが、あろうことかその髪飾りをキース様の折れた剣に投げつけた。
キィ─ンと音が反響すると閃光が空間を照らした。その光が徐々に収束していく。
折れたはずのキース様の剣が元に戻り聖女の髪飾りが、そのまま地面に転がっている。
慌てて走り寄り、剣を掴んだのはキース様だ。マリア様は、髪飾りを細長杖でつついて何も起こらないか確認をしているみたいだ。
「大丈夫ね……変な魔力も、闇の様な属性も感じない。何も知らずにあの中に入ってたら、危なかったわ。誰かが大怪我したかも知れない」
「マリアおかしくないか? この剣が簡単に折れた上に、なんで簡単に戻るんだ? まさか幻影兎の幻影を見せられただけじゃないのか?」
「キースあれが、幻影の訳ないだろう。勇者の願い石の効果で扉を開けたんだ。あの場所を幻影兎が幻影を見せたり出来ないはずだ……シェリルのティムした黒兎が、直接取りに行ったんだ」
キース様は、剣をマリア様の細長杖で確認してもらってから、背中に帯剣した。
「ティムした魔獣が、好き勝手やってただけだろ? シェリルだって、何が起きてるか分かってやってたか?」
「だが、誰も怪我をしなかったんだ。このままシェリルは連れて行って問題ないはずだ」
「分かったよ。でも、聖遺物に適合しないのに、渡したりするなよ?」
「ちょっと、まずは私に付けさせて」
長い髪のマリア様に似合うだろう。
そう思いながら、そばにきた幻影兎を抱きかかえる。
短い手で僕の結んだ髪の毛を軽く引っ張ってきた。
『──どうだ? シェリルの恋人は、役に立っただろう?』
本当に僕の為だったんだ。思わず抱きしめた。幻影でないのなら、怪我をしてないのだろうか?
『それより本当にクロは、怪我はしてない? 』
『あんなもので、怪我などする訳が無い。聖女の髪飾りが、俺に干渉して来たから投げ捨てただけだ』
『え? 折った剣を直すつもりだったんじゃ……』
『聖女の魔法が、勇者の仲間の剣を勝手に修復したんだ。ふ、案外赤髪の髪飾りにしたら、相性がいいんじゃないか?』
マリア様じゃなくて……大柄なキース様に髪飾り?思わず笑ってしまう。
『笑うと、ますます愛おしいな』
美形にキスされた事を思い出した。思わず頬が熱くなる。
『と、とりあえず。背中に居て』
そう言うと、しぶしぶクロは背中の方へと移動する。
項付近を今度は、カプッと食まれた。
「ひっ」
カイル様が、近付いて来た。
「また、幻影兎が何かしたのか?」
「何でもありません。ひ、ひげが当たったので、ビックリしただけです」
両手で、カイル様を制して一歩下がった。
「聖女の髪飾りが手に入った。今からセーフティポイントに向かう。そこで、野営の準備だ。今から地上に向かうには危険だから。それと一人で離れたりするな」
「はい」
「シェリル。よ……くやった」
「え?」
「なんでもない」
マリア様が髪飾りに手で触れると、髪飾りの輝きが消えた。
「えっ? なんで……?」
「マリア……選ばれなかったのか?」
マリア様とキース様の会話が聞こえて来た。
聖遺物は、持ち主を選ぶ。選ばれた場合は、輝いて反応すると言っていた。
『才能があっても、気に入られるとは限らない』
クロがそう言って、笑った気がした。
キィ─ンと音が反響すると閃光が空間を照らした。その光が徐々に収束していく。
折れたはずのキース様の剣が元に戻り聖女の髪飾りが、そのまま地面に転がっている。
慌てて走り寄り、剣を掴んだのはキース様だ。マリア様は、髪飾りを細長杖でつついて何も起こらないか確認をしているみたいだ。
「大丈夫ね……変な魔力も、闇の様な属性も感じない。何も知らずにあの中に入ってたら、危なかったわ。誰かが大怪我したかも知れない」
「マリアおかしくないか? この剣が簡単に折れた上に、なんで簡単に戻るんだ? まさか幻影兎の幻影を見せられただけじゃないのか?」
「キースあれが、幻影の訳ないだろう。勇者の願い石の効果で扉を開けたんだ。あの場所を幻影兎が幻影を見せたり出来ないはずだ……シェリルのティムした黒兎が、直接取りに行ったんだ」
キース様は、剣をマリア様の細長杖で確認してもらってから、背中に帯剣した。
「ティムした魔獣が、好き勝手やってただけだろ? シェリルだって、何が起きてるか分かってやってたか?」
「だが、誰も怪我をしなかったんだ。このままシェリルは連れて行って問題ないはずだ」
「分かったよ。でも、聖遺物に適合しないのに、渡したりするなよ?」
「ちょっと、まずは私に付けさせて」
長い髪のマリア様に似合うだろう。
そう思いながら、そばにきた幻影兎を抱きかかえる。
短い手で僕の結んだ髪の毛を軽く引っ張ってきた。
『──どうだ? シェリルの恋人は、役に立っただろう?』
本当に僕の為だったんだ。思わず抱きしめた。幻影でないのなら、怪我をしてないのだろうか?
『それより本当にクロは、怪我はしてない? 』
『あんなもので、怪我などする訳が無い。聖女の髪飾りが、俺に干渉して来たから投げ捨てただけだ』
『え? 折った剣を直すつもりだったんじゃ……』
『聖女の魔法が、勇者の仲間の剣を勝手に修復したんだ。ふ、案外赤髪の髪飾りにしたら、相性がいいんじゃないか?』
マリア様じゃなくて……大柄なキース様に髪飾り?思わず笑ってしまう。
『笑うと、ますます愛おしいな』
美形にキスされた事を思い出した。思わず頬が熱くなる。
『と、とりあえず。背中に居て』
そう言うと、しぶしぶクロは背中の方へと移動する。
項付近を今度は、カプッと食まれた。
「ひっ」
カイル様が、近付いて来た。
「また、幻影兎が何かしたのか?」
「何でもありません。ひ、ひげが当たったので、ビックリしただけです」
両手で、カイル様を制して一歩下がった。
「聖女の髪飾りが手に入った。今からセーフティポイントに向かう。そこで、野営の準備だ。今から地上に向かうには危険だから。それと一人で離れたりするな」
「はい」
「シェリル。よ……くやった」
「え?」
「なんでもない」
マリア様が髪飾りに手で触れると、髪飾りの輝きが消えた。
「えっ? なんで……?」
「マリア……選ばれなかったのか?」
マリア様とキース様の会話が聞こえて来た。
聖遺物は、持ち主を選ぶ。選ばれた場合は、輝いて反応すると言っていた。
『才能があっても、気に入られるとは限らない』
クロがそう言って、笑った気がした。
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