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26.聖女の髪飾り
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ここに、隠し通路がある筈だ。カイル様が手をその場所に付けると、勇者の願い石の石が青く輝いた。
ゆっくりと岩に扉のように四角く隙間のような亀裂が入っていく。そして、それが奥へと動いていく。奥は空洞のようだ。
「すごい」
本当にカイル様は、勇者なんだと納得してしまう。
「シェリルは、王宮に呼ばれなかったものね。カイルは、本当にかっこよかったんだから……パーティメンバーじゃないのに、ここにいられるなんて本当にラッキーよね。カイルの優しさに感謝しなさい」
マリア様の一言は、もっともだった。バルコニーの立つ前の儀式を、僕は見る事が出来なかった。
「本当ですね」
思わずそう答える。何故かカイル様のそばで様子を見ていたキース様が、吹き出した。
「キース様、変ですか?」
「別に。お前本当にカイルの、ただの従者なんだな。マリアは気にしすぎだろ」
マリア様が、不機嫌な顔をしてキース様に詰め寄った。
「それ、どう言う意味?」
「いやぁ。てっきり、俺もシェリルはカイルの秘密の恋人か夜の相手だと疑ってたんだが……。本当にただの使用人なんだなと思って。マリアが嫉妬して警戒してるのがおかしくてさ」
なんで、そんな風に思うのか分からない。邪魔に思われても、嫉妬する要素はどこにも無い。 僕が雑用係だと聞いてるはずなのに。
「こんな子が、恋人の訳ないでしょ? 勇者の恋人は王女か聖女に決まってるの!だから魔王城に行く私に、聖女の髪飾りは、付けさせてね」
「それぞれ強化アイテムみたいなものだからな。適合したらいいんじゃないか?俺にも、テオにも髪飾りは無いだろう?だがシェリルは、髪を下ろせば似合うかもな」
また、キース様は大笑いする。
「僕は、男です。それに使用人みたいなものですから。聖遺物を僕が、身につける事はありません」
ふと真顔になったキース様が、カイル様に向かって話し始める。
「そうだな。誰か新しいメンバーに聖遺物は持たせるべきだな。シェリルには必要ない」
「キース、メンバーを選ぶ権限は、俺にある。これ以上勝手な事を言うな」
「カイル、お前はSランクでしかも勇者として選ばれた。だがシェリル程度のAランクは、どこにでもいるだろ? たかだかテイマーだぞ? 幻影兎を捕まえただけだ。もっと役に立つものなら、認めてやるよシェリル。俺は役立たずはいらないんだよ」
「──はい」
今更気にしても仕方がない事を、悩むのは止めたんだ。
キース様の眉間に皺が寄り、剣を構えて僕を睨んだ。
「おい、黒兎の様子が……おかしくないか?」
『クロ?』
『心配するな、俺が役に立てばいい』
僕の背中からクロが降りると、姿が黒い霧の様なものに包まれて行く。動けずにいると、キース様が剣をふるう。だが簡単に剣の方が折れてしまう。
「くそっ」
黒い霧は、先程通じた空洞の中へ向かっていく。移動しながら漆黒のローブを着ているような後ろ姿に変わった。身長はマリア様位だ。
一度立ち止まり、パチンと指を鳴らすとポンポンポンと灯りがつき、祭壇のようなものが見えた。
ビュンビュン──と風が鳴り、矢のようなものが何本も側面から飛んできた。
一瞬だった。カイル様に抱き止められる。
「カイル様、離して……」
「行ったら駄目だ!」
「ちょっと罠なの? ここに入ったら仕掛けがあったって事?」
なぜかその矢は、簡単に燃えて消失していった。クロは無事みたいで、先へと進んでいく。その度に魔法陣の様な物が足元に浮かび上がるが、その上を歩くだけで破壊音と共に魔法陣を簡単に壊した。
その光景に、誰も何も言えず見ているだけになった。
聖女の髪飾りらしい銀細工がみえた。
嫌な感じがする。
「クロ! 触っちゃ駄目っ」
クロが持った瞬間に上から、槍が何十本と神速のような速さで突き刺さった。
何が起きてるのか分からない。
クロ? 無事? カイル様に抱き止められている。
皆、息をのんで……ただ事の成り行きを見守っている。
「クロ!!」
思わず、指揮棒を握り締めた。
その時──右手が上がり、またパチンと指を鳴らした。
槍を一瞬で消し去った。こちらに向きを変えても、深くフードを被っているので顔は見えない。
髪飾りを持って、こちらに来るとあっという間に岩が繋がり岩壁になった。
皆が、注目する中──フード姿の幻影兎は、すすすすと小さな黒兎に戻ったのだ。
ゆっくりと岩に扉のように四角く隙間のような亀裂が入っていく。そして、それが奥へと動いていく。奥は空洞のようだ。
「すごい」
本当にカイル様は、勇者なんだと納得してしまう。
「シェリルは、王宮に呼ばれなかったものね。カイルは、本当にかっこよかったんだから……パーティメンバーじゃないのに、ここにいられるなんて本当にラッキーよね。カイルの優しさに感謝しなさい」
マリア様の一言は、もっともだった。バルコニーの立つ前の儀式を、僕は見る事が出来なかった。
「本当ですね」
思わずそう答える。何故かカイル様のそばで様子を見ていたキース様が、吹き出した。
「キース様、変ですか?」
「別に。お前本当にカイルの、ただの従者なんだな。マリアは気にしすぎだろ」
マリア様が、不機嫌な顔をしてキース様に詰め寄った。
「それ、どう言う意味?」
「いやぁ。てっきり、俺もシェリルはカイルの秘密の恋人か夜の相手だと疑ってたんだが……。本当にただの使用人なんだなと思って。マリアが嫉妬して警戒してるのがおかしくてさ」
なんで、そんな風に思うのか分からない。邪魔に思われても、嫉妬する要素はどこにも無い。 僕が雑用係だと聞いてるはずなのに。
「こんな子が、恋人の訳ないでしょ? 勇者の恋人は王女か聖女に決まってるの!だから魔王城に行く私に、聖女の髪飾りは、付けさせてね」
「それぞれ強化アイテムみたいなものだからな。適合したらいいんじゃないか?俺にも、テオにも髪飾りは無いだろう?だがシェリルは、髪を下ろせば似合うかもな」
また、キース様は大笑いする。
「僕は、男です。それに使用人みたいなものですから。聖遺物を僕が、身につける事はありません」
ふと真顔になったキース様が、カイル様に向かって話し始める。
「そうだな。誰か新しいメンバーに聖遺物は持たせるべきだな。シェリルには必要ない」
「キース、メンバーを選ぶ権限は、俺にある。これ以上勝手な事を言うな」
「カイル、お前はSランクでしかも勇者として選ばれた。だがシェリル程度のAランクは、どこにでもいるだろ? たかだかテイマーだぞ? 幻影兎を捕まえただけだ。もっと役に立つものなら、認めてやるよシェリル。俺は役立たずはいらないんだよ」
「──はい」
今更気にしても仕方がない事を、悩むのは止めたんだ。
キース様の眉間に皺が寄り、剣を構えて僕を睨んだ。
「おい、黒兎の様子が……おかしくないか?」
『クロ?』
『心配するな、俺が役に立てばいい』
僕の背中からクロが降りると、姿が黒い霧の様なものに包まれて行く。動けずにいると、キース様が剣をふるう。だが簡単に剣の方が折れてしまう。
「くそっ」
黒い霧は、先程通じた空洞の中へ向かっていく。移動しながら漆黒のローブを着ているような後ろ姿に変わった。身長はマリア様位だ。
一度立ち止まり、パチンと指を鳴らすとポンポンポンと灯りがつき、祭壇のようなものが見えた。
ビュンビュン──と風が鳴り、矢のようなものが何本も側面から飛んできた。
一瞬だった。カイル様に抱き止められる。
「カイル様、離して……」
「行ったら駄目だ!」
「ちょっと罠なの? ここに入ったら仕掛けがあったって事?」
なぜかその矢は、簡単に燃えて消失していった。クロは無事みたいで、先へと進んでいく。その度に魔法陣の様な物が足元に浮かび上がるが、その上を歩くだけで破壊音と共に魔法陣を簡単に壊した。
その光景に、誰も何も言えず見ているだけになった。
聖女の髪飾りらしい銀細工がみえた。
嫌な感じがする。
「クロ! 触っちゃ駄目っ」
クロが持った瞬間に上から、槍が何十本と神速のような速さで突き刺さった。
何が起きてるのか分からない。
クロ? 無事? カイル様に抱き止められている。
皆、息をのんで……ただ事の成り行きを見守っている。
「クロ!!」
思わず、指揮棒を握り締めた。
その時──右手が上がり、またパチンと指を鳴らした。
槍を一瞬で消し去った。こちらに向きを変えても、深くフードを被っているので顔は見えない。
髪飾りを持って、こちらに来るとあっという間に岩が繋がり岩壁になった。
皆が、注目する中──フード姿の幻影兎は、すすすすと小さな黒兎に戻ったのだ。
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