【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
22 / 98

20.リタ神聖国のギルド

しおりを挟む
 移動は、スムーズに出来てリタ神聖国へ入った。聖遺物レリックのある可能性の場所は、神殿の地下。

 神殿の地下と言っても、地下に位置する遺跡のような場所を示してある。入口はダンジョンの階層と繋がっているようで、冒険者ギルドに向かっている。

 四頭の馬が用意されていた。二人乗りが二組で、キース様が一人で乗るなら一頭余ってしまう。テイマーの事は、カイル様以外に伏せている状況だ。でも、ここでティムすれば楽に一人で騎乗出来る。実は、下手なりに乗れるのだ。

「僕は、一人で」
 カイル様が、耳打ちしてくる。
「マリアと相乗りしたくないんだ。分かるな?」

 王女様達に求婚されているのだから、それもそうか。

「でも、何かあった時のために馬をティムして並走させてくれ。皆には良く訓練されている馬と言う事にしておく」

「はい」

 カイル様が、マリア様達に今後の話をしている間に栗毛の子の所へ移動する。じっと見ていると自然に頭を寄せてくれた。

「──いい子」
 もう一度目を合わせる。皆に背を向けた状態だから、僕の瞳の色が変わっても気が付かない。

魅了チャーム、我が支配下に入れ』

「皆についてきて」
 一度目を瞑る、そしてまた色を変えた。

 馬を用意してくれてた転移門ゲートの警護の方々に挨拶をして、ギルドを経由してダンジョンへ向かう。こちらのギルドは大きいらしい。宿泊用に四部屋確保してもらっていて一泊して、明日からがダンジョンに入る。
 予定通り、僕はカイル様と騎乗している。栗毛の子は、ちゃんと並走してきた。可愛い。これなら、馬に乗れると思う。それをもう一度伝えようとした。
「カイル様。二人乗りはもう……」
「シェリルはこのままだ。それと今日は、同じ部屋だ」
「いえ僕は、野宿でも馬小屋でも大丈夫です」
 勇者一行は、四人と広まっている為に僕は頭数に入っていなかったのだ。

「疲れがとれないだろ? それに虫除けになる」
(女性冒険者避け……か)

 ギルドにつけば、勇者一行は歓迎されてギルドの中へ入っていった。僕は馬の世話をするついでに、現地の冒険者に魔物の情報を共有する事にした。事前の情報収集はとても大事だ。アルト様からの教えは、本当に役に立つ。

「シェリル。失敗したとか、イレギュラーが起きた、そう言う話を上手く聞きだして。今後の対策を練りやすくなる。それが困った時に役立つよ。分かるか?」

初めて会った時は、あんなに威嚇してきたのに。
「魔物をティムしてでも、生きろ」
 アルト様、教え通り頑張るので無駄死にはしませんから。

 ようやく落ち着いたのか、カイル様が店内から出て迎えに来た。
「悪い。遅くなった。部屋に行く」

 二人で部屋に行こうとした時に、キース様に呼び止められた。

「雑用済んだなら、すぐ戻ってこい。カイルの手を煩わすな。本当に気が利かないな。他に優秀な魔法師を入れた方が良くないか? それに勇者のベッドを取るなよ」

「はい」

「この子、必要なんですか? 気が利かない見たい。カイルに迷惑かけないでよね」
「気をつけます」

「俺が呼びに行っただけだ。いくぞ」
「はい」

「もう、カイルったらそんな子、ほっとけばいいのに……」

 頭を一度下げて、部屋へとついていく。ドアを閉めて中を確認すると、割と良い部屋に見えた。
    少し大きめのベッドがある寝室。サイドテーブルには、食事が置いてある。ソファもあった。
    隣りの小さめの部屋には、クローゼットや他に机や椅子まである綺麗な部屋だ。
     それから、ソファの所にブランケットが多めに置いてあった。

「何も食事してないだろ? 少しでもいいから口にした方がいい。それから、俺はソファで寝るから……」

「いいえ。ベッドでゆっくり休んで下さい。僕は床で寝ます。食事もさっき外で食べたので大丈夫です。ブランケットを一枚だけお借りしますね。では隣の部屋を借りますね」

「──シェリル!」
「お休みなさい」
 
そう言って、寝室を後にした。





しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【完結】地獄行きは確定、に加え ~地獄の王に溺愛されています~

墨尽(ぼくじん)
BL
地獄の長である獄主に、何故か溺愛されてしまった34歳おっさんのお話 死んで地獄に行きついた霧谷聡一朗(34)は、地獄の長である獄主の花嫁候補に選ばれてしまう 候補に選ばれる条件は一つ「罪深いこと」 候補者10人全員が極悪人の中、聡一朗だけは罪の匂いがしないと獄主から見放されてしまう 見放されたことを良いことに、聡一朗は滅多に味わえない地獄ライフを満喫 しかし世話役の鬼たちと楽しく過ごす中、獄主の態度が変わっていく 突然の友達宣言から、あれよあれよと聡一朗は囲い込まれていく 冷酷無表情の美形×34歳お人好し天然オジサン 笑ったことのない程の冷酷な獄主が、無自覚お人良しの聡一朗をあの手この手で溺愛するストーリーです。 コメディ要素多めですが、シリアスも有り ※完結しました 続編は【続】地獄行きは~ です

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

【本編完結】 ふたりを結ぶ古書店の魔法

Shizukuru
BL
弟が消えた。記憶消去? スマホの画像も何もかも残っていない。 両親には、夢でも見たのかって……兄の俺より背が高くてイケメンで本当に兄弟?って言われてたけど。 弟は、存在してなかったなんて、そんなはずがない。 記憶が消される前に、探すんだ。 辿り着いた古書店。必ずその人にとって大切な一冊がそこにある。必要な人しか辿り付けないと噂されている所だ。 「面白い本屋を見つけたんだ」 弟との数日前の会話を思い出す。きっとそこに何かがある。 そして、惹かれるままに一冊の本を手にした。登場人物紹介には、美形の魔法騎士の姿が……髪色と瞳の色が違うけれど、間違いなく弟だ。 聖女に攻略されるかもしれない、そんなの嫌だ。 ごめん。父さん母さん。戻れないかも知れない。それでも、あいつの所へ行きたいんだ。 本を抱きしめて願う。神様お願い、弟を取り戻したい。 本だけ残して……時砂琥珀は姿を消した。 年下魔法騎士(元弟)×神使?(元兄) 微R・Rは※印を念の為につけます。 美麗表紙絵は、夕宮あまね様@amane_yumia より頂きました。 BL小説大賞に参加しています。 応援よろしくお願いします。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

処理中です...