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24.カイル様?
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クロが背中にしがみついた。幻影を見せられたのか?そう思っていると、声が聞こえて来た。
『人型に戻ろうか?』
まさか、幻影兎の姿の方が幻影だった?
「いや待って、理解が及ばないよ。クロ……ねぇ、言葉が話せるの?」
クロに向かって独り言の様に話しかけていると、突然目の前に現れたカイル様に抱きしめられた。
「うわ……な、なんで? あ、そうか……戻りが遅かったですよね? 心配かけてすみません」
「泣いていたのか?──大丈夫だ。キースも殴った事、悪かったと言っていた。それにマリアが傷を診ると……」
クロが、カイル様の手をパシパシと叩いたり、短い足で脇腹を蹴ろうと画策しているのが分かった。
「クロ……ありがとう」
思わず笑うと、カイル様の表情が柔らかいものに変わる。そして抱きしめる腕を解き、殴られた頬を手で触れてきた。
「頬の傷、治療したんだ。良かった」
そうだ、さっきクロが治してくれたんだ。魔獣が……治療出来たりした?
「ポーションで治したのか?」
「は、はい。ポーションは十分あります。他にも薬草なども持ってきました。ただ勝手な行動をしたので、罰として傷を残したままでも……良かったんですが」
クロが、治したとか。それに人型になったとか……これって、やっぱり幻影……?
「シェリルに罰なんて必要無い。お前は優しいから、ティムした魔獣を守りたかっただけだ。──俺が、雑務を任せたって言ってたから。マリアとキースはお前が上級ランク持ちと思っていなかったんだ。それでもテオは、お前と組んでたからお前の事分かってたんだな」
カイル様が、落ち込んでいるみたいだ。
「そう、ですね。次はもう……前には出ません。聖女の髪飾りが見つかって、ダンジョンを出たら、メンバーから外してもらってかまいせん」
役に立つ方法なんて、別にきっとある。伯爵領に戻って、事務方の仕事とか……なんなら掃除でも構わない。ふと、カイル様を見ると顔色が悪くなっていく。
突然伸びてきた手が、両肩に置かれる。
「その……次の賢者の指輪 も、一緒に探してくれ」
突然大きな声で迫られて、驚いて声が出ない。
「シェリルは、伯爵領に戻りたいのか? 一緒に聖遺物を探すのは、嫌なのか?」
必死のカイル様に、驚いてしまう。勇者推薦で参加してる僕が、失敗したままじゃ立場が悪いのだろうか?
「──バレッタ探しは、最後まで手伝わせて下さい。でも、戻ったらもっとランクの上の方がいいと思うのですが……」
「──シェリル。俺は、お前にいて欲しい」
なぜ、そんなに必死なんだろう。
「そんなに雑用ありますか?」
「そうじゃなくて……」
「そうじゃなくて?」
なんだろう? ああそうか、マリア様や他の女性冒険者の壁になるのに必要なんだ。
「虫除けですね」
──腑に落ちた。
そう思っていると、肩に置かれたカイル様の手が離れた。
すると背中にいたクロが、前の方に移動して来る。
「クロどうしたの? こら、あ……仕方ないな」
落ちないように手を添えると、胸の所から顔を近づけてきた。
「待って、くすぐったいって……ん」
小さなクロが、ちょんと軽くキスしてきた。
一連のクロの様子を見ていたカイル様が、クロを捕まえた。
「なんだコイツ……」
「懐かれてて、あはは。可愛いですよね」
僕の方を向いたまま、ジタバタと暴れている。そのうち、瞳の色が光り始めた。
(待って、やばくない?)
思わず、カイル様の手から取り返し抱きしめる。
「駄目。大人しくして。背中にくっついてて」
そう言うと、クロは背中に渋々もどった。
「なんなんだ……シェリルにベッタリくっつくなんて。幻影兎、お前は魔獣なんだからキスとかするなよ」
「すみません」
「いや、悪い。シェリルを責めたわけじゃない」
「カイルー! まだかぁー」
キース様の声がした。
カイル様が、手を振って合図をした。
「シェリル、とりあえず戻ろう。最後まで、一緒にいて欲しい」
何故か手を繋がれて皆のところに急ぎ戻った。
『人型に戻ろうか?』
まさか、幻影兎の姿の方が幻影だった?
「いや待って、理解が及ばないよ。クロ……ねぇ、言葉が話せるの?」
クロに向かって独り言の様に話しかけていると、突然目の前に現れたカイル様に抱きしめられた。
「うわ……な、なんで? あ、そうか……戻りが遅かったですよね? 心配かけてすみません」
「泣いていたのか?──大丈夫だ。キースも殴った事、悪かったと言っていた。それにマリアが傷を診ると……」
クロが、カイル様の手をパシパシと叩いたり、短い足で脇腹を蹴ろうと画策しているのが分かった。
「クロ……ありがとう」
思わず笑うと、カイル様の表情が柔らかいものに変わる。そして抱きしめる腕を解き、殴られた頬を手で触れてきた。
「頬の傷、治療したんだ。良かった」
そうだ、さっきクロが治してくれたんだ。魔獣が……治療出来たりした?
「ポーションで治したのか?」
「は、はい。ポーションは十分あります。他にも薬草なども持ってきました。ただ勝手な行動をしたので、罰として傷を残したままでも……良かったんですが」
クロが、治したとか。それに人型になったとか……これって、やっぱり幻影……?
「シェリルに罰なんて必要無い。お前は優しいから、ティムした魔獣を守りたかっただけだ。──俺が、雑務を任せたって言ってたから。マリアとキースはお前が上級ランク持ちと思っていなかったんだ。それでもテオは、お前と組んでたからお前の事分かってたんだな」
カイル様が、落ち込んでいるみたいだ。
「そう、ですね。次はもう……前には出ません。聖女の髪飾りが見つかって、ダンジョンを出たら、メンバーから外してもらってかまいせん」
役に立つ方法なんて、別にきっとある。伯爵領に戻って、事務方の仕事とか……なんなら掃除でも構わない。ふと、カイル様を見ると顔色が悪くなっていく。
突然伸びてきた手が、両肩に置かれる。
「その……次の賢者の指輪 も、一緒に探してくれ」
突然大きな声で迫られて、驚いて声が出ない。
「シェリルは、伯爵領に戻りたいのか? 一緒に聖遺物を探すのは、嫌なのか?」
必死のカイル様に、驚いてしまう。勇者推薦で参加してる僕が、失敗したままじゃ立場が悪いのだろうか?
「──バレッタ探しは、最後まで手伝わせて下さい。でも、戻ったらもっとランクの上の方がいいと思うのですが……」
「──シェリル。俺は、お前にいて欲しい」
なぜ、そんなに必死なんだろう。
「そんなに雑用ありますか?」
「そうじゃなくて……」
「そうじゃなくて?」
なんだろう? ああそうか、マリア様や他の女性冒険者の壁になるのに必要なんだ。
「虫除けですね」
──腑に落ちた。
そう思っていると、肩に置かれたカイル様の手が離れた。
すると背中にいたクロが、前の方に移動して来る。
「クロどうしたの? こら、あ……仕方ないな」
落ちないように手を添えると、胸の所から顔を近づけてきた。
「待って、くすぐったいって……ん」
小さなクロが、ちょんと軽くキスしてきた。
一連のクロの様子を見ていたカイル様が、クロを捕まえた。
「なんだコイツ……」
「懐かれてて、あはは。可愛いですよね」
僕の方を向いたまま、ジタバタと暴れている。そのうち、瞳の色が光り始めた。
(待って、やばくない?)
思わず、カイル様の手から取り返し抱きしめる。
「駄目。大人しくして。背中にくっついてて」
そう言うと、クロは背中に渋々もどった。
「なんなんだ……シェリルにベッタリくっつくなんて。幻影兎、お前は魔獣なんだからキスとかするなよ」
「すみません」
「いや、悪い。シェリルを責めたわけじゃない」
「カイルー! まだかぁー」
キース様の声がした。
カイル様が、手を振って合図をした。
「シェリル、とりあえず戻ろう。最後まで、一緒にいて欲しい」
何故か手を繋がれて皆のところに急ぎ戻った。
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