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19.リタ神聖国へ
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今回勇者一行が最初に向かうのは、マリア様の故郷リタ神聖国だ。
一番ロスのない道を順番に辿る予定だ。聖遺物を集める間は、各国の冒険者がダンジョンのクエストをこなしつつダンジョン内の監視を兼ねる。異常があれば、他の冒険者ギルドも情報を共有する事になった。
また、魔族領が見える国境付近には各国の精鋭の騎士達が、魔族の動向を監視する。
ただし魔族や魔物を刺激しないようにと通達された。
たった四人に全てが任される訳ではない。皆の協力の元、大陸戦争にならないように聖遺物を集める。その目的の一つに魔王との交渉も入っている。封印しない代わりに、和平の約束を取り付けるのだ。
討伐にしても、和平交渉にしても……被害が最小限になるのが一番なのは変わらない。
その重責を担うのが、カイル様だ。
「聖女の髪留めが早めに見つかるといいですね」
相変わらずカイル様は、無駄な話はしたくないようで会話が続かない。
「──アルトさんと、何話してたんだ?」
「無事に帰って来いって、僕は雑用係だから……無理するなって感じの事です」
また、カイル様の表情が暗くなる。
「もし、聖遺物を探している時に……素晴らしい人に出会ったら、何時でも交代します。安心して下さい」
「そ──ない」
「え?」
ガタンと揺れて、馬車が止まった。
「あの?よく聞こえなくて……」
外からノックされて、声が聞こえてきた。
「リタ神聖国への転移門に到着しました。マリア様達も馬車から降り始めてます」
「分かった。降りる」
カイル様の返事と共に、ドアが開いた。
勇者の権限で、各国の転移門の使用許可は降りている。
少しでも移動は、短縮しなければいけないからだ。
リタ神聖国のマリア様が居るのも大きい。神聖国の中央都市にかなり近い場所に転移が出来る。
勇者パーティと言えど異国の民の集まりだ。王宮や神殿内部主要機関には直接転移は出来ない。それでも、関係者がいるだけで大分違う。
馬車から降りてきた、マリア様達と合流する。
「馬車……もう少し良い物を用意して欲しかったわ。腰痛すぎよ」
「俺は体が大きい分、たしかに馬車ばっかりはしんどいな。この先俺は、馬に騎乗させてくれ。お嬢さんは、馬には乗れるのか?」
マリア様はムッとしたままだ。
「乗れないことはないわ」
「その辺に散歩する程度とかで、乗れるとか言わないでくれよ?」
キース様は体を伸ばしてゴキゴキと骨を鳴らながら、笑っている。
テオ様は相変わらず興味がないようで、黙ったままだ。
マリア様と目が合った気がした。いや僕じゃなくて、カイル様を見たのかな?
「カイル様、次は一緒に馬車に乗ってください」
カイル様は、その言葉を聞いてわずかに表情を強ばらせた。その一瞬の表情は、他の人は気が付かないと思う。
「転移門をくぐったら、馬に乗る。君は、本当に馬に乗れるのか?」
「少しは、乗れますが……あ、一緒に」
そう言いかけた時に、カイル様は続けて提案をした。
「テオ、マリア様が馬に慣れるまで後ろに乗せてくれ。キース様は、体格がいいから一人が良いな。馬に負担がかかる」
「勇者様……頼む、呼び捨てでいいか?パーティならその方がやりやすい。テオとその雑用係は知り合いみたいで様呼びしてないんだろう? 全員、呼び捨てな」
「そうだな。キース。マリアも構わないか?」
皆が頷く中、マリア様に細長杖を向けられた。
「私、その子にだけは、呼び捨てにされたくないわ」
「もちろんです。呼び捨てなど出来ません」
「ならいいわ」
カイル様が、僕を見て肩に手を軽く置いた。
「──シェリルは、俺の馬に乗れ」
「ちょっと私を乗せて……」
カイル様が振り返ると、マリア様が黙った。
「ずっとダンジョンを一緒に行動してきた。誰よりも息が合うんだ。動きに無駄が無くて済むそれだけだ。ほら、転移門をくぐるぞ」
そう行って、リタ神聖国へと移動した。
一番ロスのない道を順番に辿る予定だ。聖遺物を集める間は、各国の冒険者がダンジョンのクエストをこなしつつダンジョン内の監視を兼ねる。異常があれば、他の冒険者ギルドも情報を共有する事になった。
また、魔族領が見える国境付近には各国の精鋭の騎士達が、魔族の動向を監視する。
ただし魔族や魔物を刺激しないようにと通達された。
たった四人に全てが任される訳ではない。皆の協力の元、大陸戦争にならないように聖遺物を集める。その目的の一つに魔王との交渉も入っている。封印しない代わりに、和平の約束を取り付けるのだ。
討伐にしても、和平交渉にしても……被害が最小限になるのが一番なのは変わらない。
その重責を担うのが、カイル様だ。
「聖女の髪留めが早めに見つかるといいですね」
相変わらずカイル様は、無駄な話はしたくないようで会話が続かない。
「──アルトさんと、何話してたんだ?」
「無事に帰って来いって、僕は雑用係だから……無理するなって感じの事です」
また、カイル様の表情が暗くなる。
「もし、聖遺物を探している時に……素晴らしい人に出会ったら、何時でも交代します。安心して下さい」
「そ──ない」
「え?」
ガタンと揺れて、馬車が止まった。
「あの?よく聞こえなくて……」
外からノックされて、声が聞こえてきた。
「リタ神聖国への転移門に到着しました。マリア様達も馬車から降り始めてます」
「分かった。降りる」
カイル様の返事と共に、ドアが開いた。
勇者の権限で、各国の転移門の使用許可は降りている。
少しでも移動は、短縮しなければいけないからだ。
リタ神聖国のマリア様が居るのも大きい。神聖国の中央都市にかなり近い場所に転移が出来る。
勇者パーティと言えど異国の民の集まりだ。王宮や神殿内部主要機関には直接転移は出来ない。それでも、関係者がいるだけで大分違う。
馬車から降りてきた、マリア様達と合流する。
「馬車……もう少し良い物を用意して欲しかったわ。腰痛すぎよ」
「俺は体が大きい分、たしかに馬車ばっかりはしんどいな。この先俺は、馬に騎乗させてくれ。お嬢さんは、馬には乗れるのか?」
マリア様はムッとしたままだ。
「乗れないことはないわ」
「その辺に散歩する程度とかで、乗れるとか言わないでくれよ?」
キース様は体を伸ばしてゴキゴキと骨を鳴らながら、笑っている。
テオ様は相変わらず興味がないようで、黙ったままだ。
マリア様と目が合った気がした。いや僕じゃなくて、カイル様を見たのかな?
「カイル様、次は一緒に馬車に乗ってください」
カイル様は、その言葉を聞いてわずかに表情を強ばらせた。その一瞬の表情は、他の人は気が付かないと思う。
「転移門をくぐったら、馬に乗る。君は、本当に馬に乗れるのか?」
「少しは、乗れますが……あ、一緒に」
そう言いかけた時に、カイル様は続けて提案をした。
「テオ、マリア様が馬に慣れるまで後ろに乗せてくれ。キース様は、体格がいいから一人が良いな。馬に負担がかかる」
「勇者様……頼む、呼び捨てでいいか?パーティならその方がやりやすい。テオとその雑用係は知り合いみたいで様呼びしてないんだろう? 全員、呼び捨てな」
「そうだな。キース。マリアも構わないか?」
皆が頷く中、マリア様に細長杖を向けられた。
「私、その子にだけは、呼び捨てにされたくないわ」
「もちろんです。呼び捨てなど出来ません」
「ならいいわ」
カイル様が、僕を見て肩に手を軽く置いた。
「──シェリルは、俺の馬に乗れ」
「ちょっと私を乗せて……」
カイル様が振り返ると、マリア様が黙った。
「ずっとダンジョンを一緒に行動してきた。誰よりも息が合うんだ。動きに無駄が無くて済むそれだけだ。ほら、転移門をくぐるぞ」
そう行って、リタ神聖国へと移動した。
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