【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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10.偶然

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 仮のC級プラスのランクをもらった。祝いだーと盛り上がってて申し訳ないけど、酒場に顔を出すのは目立つので断った。ギルマスに謝罪をして、リリー様とマーティス様に参加をお願いした。

 エルフのテオ様は、あの後会っても僕の事は記憶していないみたいだ。人に興味が無くて助かっている。エルフって彫りが深いから、ぼんやり顔の一般人なんて区別が付かないのかも知れない。

「目立たない……気配を悟られないって難しいな」
    なんだかんだと、ギルマスのアルト様は面倒見がいい。師匠に教わった期間は短いし、その後は自己流だ。
 自分に足りないもの、ダンジョン攻略の考えを、教えてくれるのはありがたい。

 そして何より、ダンジョン内で幻影兎ラビィアの黒兎に遭遇するのが楽しい。他の子と顔が違う。色もあれだけ艶やかな黒毛の子は、見ないんだよね。なんというか……愛嬌のある顔に癒される。
 他にも気になる魔物はいるけど、ティムとかするのは危険かもしれない……魔物を使役するのは、まだ無理かな。

 それに、なんと言うか……幻影兎ラビィアなのに幻影を使わないのか、頻繁に別の魔獣などに狙われているのだ。幻影を使えない?もしくは、下手なのだろうか?でもあの時、深紅の目が光ってが引いたのだ。力はありそうなんだけど。
 役にはあまり立たないかも知れないな。ただ可愛いだけ。

「よく会うのって、懐かれちゃったのかな?」
 かまって欲しいって言うのが見え隠れしてて、おいでって声をかけてしまう。

 あれから二年近く通い詰めている。中層は楽に移動出来るようになっていた。ダンジョン内のセーフティポイントで野営を張って更に、地下に進むくらいに行動範囲も広がっている。

 十七になった時には、ゴールドのタグを貰った。リリー様が、ほらねって言いながら、タガーナイフの使い方も教えてくれている。
 タグもランクも公にしない事を理解してもらっているので、Aランクなのは秘密だ。

 基本はバディで動くので、今の所マーティス様かギルマスのアルト様に指導を兼ねて組んでもらってる。僕が目立つことはない。

 スキルアップ以外にダンジョンに行きたくなる理由は、結局あの子に会いたいからだ。この二年で何度も遭遇してしまう黒兎に、名前もつけてしまった。
「クロ」
 ぴょーんと、胸に飛び込んでくる。すぐ顔や首の所を舐めてくるし。可愛いんだよね。

「本当にそれ、懐いてるよね。ティムしてないんでしょ?」
 アルト様には、色々バレている。下の階層でも、クロはひょっこり現れる。

「まだ、魔物を使役するかは悩んでます」
「その子は、喜んでティムされたそうだけどねぇ」
「クロは思ったより、魔力が多そうなんですよね。ティムしてやばい方になっても困るし」

「魔力の相性は問題なさそうだけどね。用心に越したことはないか。でも臆病な幻影兎ラビィアがこんなに人に懐くのは聞いた事がないんだよ。能力を利用出来るなら、ダンジョン内の安全性が上がるから……欲しいねぇ」

「幻影……は魅力的ですか?」

「まあね。突然上級魔物に遭遇した時に、逃げる時間を稼いでくれたら助かる」

 S級のアルト様でさえ、逃げる選択をするような魔物。利用できる物は、利用して生き残る。

「地下は、S級でも厳しいですか?」
「まだ、未到達域があるからね。何が出るか、人で対応出来るかなんてわからない。レア素材は欲しいが、命は惜しいよ」

 今は中層のクエストの最中だ。クロは背中にしがみついてる。重さを感じないのは魔物だからだと思う。使役して拘束するのを、まだためらってしまう。

 でも、強くならないと従者に選ばれない。ちゃんと今までの恩を返さないといけないのに。魔物をティムした方がいいのかな?

    どうしても、焦ってしまう。
 僕も成長はしていると思うけど、もうすぐ……学園を卒業してカイル様が戻ってくるからだ。







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