【本編完結】 美形魔王の弱点は、僕。

Shizukuru

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6.ギルドマスター

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 ギルドの中は、思っていたより広かった。受付に男女二人が立っていた。テーブルが四つ程あって、既に何人か座っていた。ギルドの依頼クエストを相談をしている人達や、待ち合わせの様な人もいる。受付の先にある壁には、大きさがバラバラの紙が貼られていた。古そうな傷んだ紙もあれば、立派な金色の紋章が入ったものもある。あれが掲示板で……クエストなのかな?

 ガタイのいい人や、背の高い細身の人。女性冒険者が異国の服を着ている。肌の色や髪の毛、瞳の色が様々だ。なんかドキドキしてしまう。

「シェリル……。ギルマスを呼ぶように言ったからもうすぐ出て来るはずだ」

 そして、良く通る大きな声がした。
「マーティス!!」

 二階の踊り場からこちらを見ているのは、右頬に傷のある綺麗な赤毛の人だ。

 (ギルマスって女性なんだ)

 階段をかけ下りるのではなく、ひらりと手すりを乗り越えて飛び降りた。一つに結んだ長い赤髪が揺れる。床に降り立ったのに音は全くしない。こちらを向いた瞬間、目の前に移動してきて抱きついたのだ。

 ──マーティス様に。

 一連の動作が、無音だった。これ、これを学びたい。ゾクゾクして二人を見ると、ギルマスが今にも唇がくっつきそうなくらい顔を寄せている。それを両手で防御しているのは、マーティス様だ。

「あの?」
 こちらを見た、美女の顔が引きつった。

「このガキ……お前の子?」
 マーティス様の名前を呼んだ時の声が嘘のように、低く変わった。

 まさかこの美女って……?

「領主様のご子息の従者候補なんだ。かわいいだろう?」

「かわいい?」
 雰囲気がさらに悪くなった。

「僕、男だから安心してください!」
 さらに、睨まれた。
「お前、男か?なお悪いわ」

 ダンッとギルマスが片足で床を踏み鳴らした。肩幅位の陣が床に浮き上がりそこから、紅蓮の炎をまとった剣がせり上がって来る。

 「アルト!」

 剣を持った瞬間に、僕の方へ踏み込んで来た!
    (速い)
 とっさに指揮棒ワンドを掴み防御壁を作る。その間にマーティスさんが、剣をギルマスの喉元スレスレで止めた。
 紅蓮の剣は指揮棒ワンドに当たらないギリギリの所で止まっている。

「へぇ。小さいのに……中々だね。それよりさ。マーティス、剣を引いてよ」

「お前が先に剣を引かないなら、俺も引かない」

「ったく。分かったって。続きは二階で聞く。

   笑顔は美女としか言い様がない……綺麗な男の人だ。この人、すごい。

 紅蓮の剣が、床に吸い込まれていく。
 マーティス様も剣をベルトの鞘に戻した。

「ユニコーンの角の指揮棒ワンドか、君どこかの貴族の隠し子?」
 耳元で囁かれて、慌てて首を振った。

 「まぁ、おいおい君の事教えてもらうから。ようこそ、冒険者ギルドへ。の名はアルト。ここのギルドマスターだよ。さぁギルド会員の手続きを始めようか? 詳しい説明は二階でするけど、ランクは近々ダンジョンに行ってから確定する。歓迎会はその後だ新人」

 さっきまで、静まり返っていたのに、歓声が上がった。
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