7 / 98
5.冒険者ギルド
しおりを挟む
カイル様が学園の寮に入っているのは、約四年間だ。学園生によっては、二~三年で単位を取って自領に戻る方もいるみたいだ。
目立たない為のスキルを得るため、冒険者ギルド会員になるのだ。
伯爵様の従者で護衛も担うマーティス様は、魔法も剣もかなりの腕前でギルド会員のゴールドタグを持っていた。
「ゴールドはA級ですよね? 本当はS級も狙えるって聞きました」
いつも優しくしてくれるマーティス様は、首にある細いチェーンを摘んでゴールドのネームタグを見せてくれた。
「格好良い……」
ニカッと豪快に笑って、またシャツの中へ戻す。
「本業は、伯爵様の護衛だからね。冒険者じゃないから、無理はしない。ダンジョンは危険と隣り合わせだから、欲張り過ぎて命を落としたらもったいない」
そう言って、髪の毛をくしゃくしゃと掻き回される。
「そうですね」
この人は、僕を見るとこんな風に髪をくしゃくしゃにしてくる。侍女のリリー様は、可愛がられてていいわね。そう言って時々髪を結び直してくれるのだ。
本当に、伯爵様の人柄のおかげか、ここにいる方達は平民の僕にも優しい。
「シェリルは才能の塊だからね。俺としても期待してるよ。ギルド長にも面倒を見るように念押ししといたからね……将来S級になれば、平民とか気にしなくて良くなるし、自分を守れると相手を守るのも余裕が出来る。頑張れよ」
「はい」
十五歳からギルド会員になるには、紹介者が必要なのだ。ゴールドのタグを持つマーティス様が、僕の実力を保証してくれる。カイル様が戻ってくるまでの約二年間の間に鍛えないといけない。
カイル様が僕を従者に、と言うのならそれに相応しくなりたい。要らないと言われれば、出て行く事も頭に置いてある。勉強も魔法も、ギルド会員になるのも、いずれ一人になった時に役に立つから。
マーティス様の横を歩きながら、これから会うギルド長を想像してしまう。大柄のマーティス様と同じ位だろうか? 子供の僕は、受け入れてもらえるだろうか?
不安で気持ちがグルグルしている。首を横に振って、頬を両手でパシッと叩いた。
マーティス様が、緊張し過ぎだと豪快に笑った。
僕はギュッと鞄のショルダーストラップを握りしめた。この中には師匠の指揮棒が入っている。普段は見せない事にしていた。
「シェリル、目立たなく魔法を使いたいのは……あの時の事がトラウマになっているのか?」
魔法の試験の事と、先生が師匠の形見を盗もうとした時の事だ。
「師匠の形見の──指揮棒って目立ちますよね。でも絶対にこれは誰にも譲れないんです。平民のくせにって言われるのも仕方ないけど」
握りしめる手に力が入ってしまう。
「教わったのは短い期間だったんだろう? それでもお前を弟子にって、それに魔法をかけてくれたんだからな。それはシェリルの物だよ。確かに目立たないように、大切な人を守るって難しいな。でも、出来たら格好良いな」
また、手が伸びてきたので。頭を防御した。
「マーティス様、ギルドマスターに会うのにボサボサになり過ぎます!」
そして、オレンジ色の三角屋根が見える。二階建ての一階にはふたつの大きな扉があった。それぞれに木の吊り看板に名前が刻まれていた。
一つは、冒険者ギルド。もう一つは、BAR★Labyrinthだ。
ギルドと酒場が一階にあり、外階段から二階へ上がる事も出来るみたいだ。
その奥に細長いレンガ作り塔がそびえていた。ギルドの倍の高さがあるように見える。
「眺望の塔だよ。かなり遠くまで見えるから、後で登らせてもらうといい」
そして、ギルドの扉を開けた。
目立たない為のスキルを得るため、冒険者ギルド会員になるのだ。
伯爵様の従者で護衛も担うマーティス様は、魔法も剣もかなりの腕前でギルド会員のゴールドタグを持っていた。
「ゴールドはA級ですよね? 本当はS級も狙えるって聞きました」
いつも優しくしてくれるマーティス様は、首にある細いチェーンを摘んでゴールドのネームタグを見せてくれた。
「格好良い……」
ニカッと豪快に笑って、またシャツの中へ戻す。
「本業は、伯爵様の護衛だからね。冒険者じゃないから、無理はしない。ダンジョンは危険と隣り合わせだから、欲張り過ぎて命を落としたらもったいない」
そう言って、髪の毛をくしゃくしゃと掻き回される。
「そうですね」
この人は、僕を見るとこんな風に髪をくしゃくしゃにしてくる。侍女のリリー様は、可愛がられてていいわね。そう言って時々髪を結び直してくれるのだ。
本当に、伯爵様の人柄のおかげか、ここにいる方達は平民の僕にも優しい。
「シェリルは才能の塊だからね。俺としても期待してるよ。ギルド長にも面倒を見るように念押ししといたからね……将来S級になれば、平民とか気にしなくて良くなるし、自分を守れると相手を守るのも余裕が出来る。頑張れよ」
「はい」
十五歳からギルド会員になるには、紹介者が必要なのだ。ゴールドのタグを持つマーティス様が、僕の実力を保証してくれる。カイル様が戻ってくるまでの約二年間の間に鍛えないといけない。
カイル様が僕を従者に、と言うのならそれに相応しくなりたい。要らないと言われれば、出て行く事も頭に置いてある。勉強も魔法も、ギルド会員になるのも、いずれ一人になった時に役に立つから。
マーティス様の横を歩きながら、これから会うギルド長を想像してしまう。大柄のマーティス様と同じ位だろうか? 子供の僕は、受け入れてもらえるだろうか?
不安で気持ちがグルグルしている。首を横に振って、頬を両手でパシッと叩いた。
マーティス様が、緊張し過ぎだと豪快に笑った。
僕はギュッと鞄のショルダーストラップを握りしめた。この中には師匠の指揮棒が入っている。普段は見せない事にしていた。
「シェリル、目立たなく魔法を使いたいのは……あの時の事がトラウマになっているのか?」
魔法の試験の事と、先生が師匠の形見を盗もうとした時の事だ。
「師匠の形見の──指揮棒って目立ちますよね。でも絶対にこれは誰にも譲れないんです。平民のくせにって言われるのも仕方ないけど」
握りしめる手に力が入ってしまう。
「教わったのは短い期間だったんだろう? それでもお前を弟子にって、それに魔法をかけてくれたんだからな。それはシェリルの物だよ。確かに目立たないように、大切な人を守るって難しいな。でも、出来たら格好良いな」
また、手が伸びてきたので。頭を防御した。
「マーティス様、ギルドマスターに会うのにボサボサになり過ぎます!」
そして、オレンジ色の三角屋根が見える。二階建ての一階にはふたつの大きな扉があった。それぞれに木の吊り看板に名前が刻まれていた。
一つは、冒険者ギルド。もう一つは、BAR★Labyrinthだ。
ギルドと酒場が一階にあり、外階段から二階へ上がる事も出来るみたいだ。
その奥に細長いレンガ作り塔がそびえていた。ギルドの倍の高さがあるように見える。
「眺望の塔だよ。かなり遠くまで見えるから、後で登らせてもらうといい」
そして、ギルドの扉を開けた。
47
お気に入りに追加
911
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる