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5.冒険者ギルド
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カイル様が学園の寮に入っているのは、約四年間だ。学園生によっては、二~三年で単位を取って自領に戻る方もいるみたいだ。
目立たない為のスキルを得るため、冒険者ギルド会員になるのだ。
伯爵様の従者で護衛も担うマーティス様は、魔法も剣もかなりの腕前でギルド会員のゴールドタグを持っていた。
「ゴールドはA級ですよね? 本当はS級も狙えるって聞きました」
いつも優しくしてくれるマーティス様は、首にある細いチェーンを摘んでゴールドのネームタグを見せてくれた。
「格好良い……」
ニカッと豪快に笑って、またシャツの中へ戻す。
「本業は、伯爵様の護衛だからね。冒険者じゃないから、無理はしない。ダンジョンは危険と隣り合わせだから、欲張り過ぎて命を落としたらもったいない」
そう言って、髪の毛をくしゃくしゃと掻き回される。
「そうですね」
この人は、僕を見るとこんな風に髪をくしゃくしゃにしてくる。侍女のリリー様は、可愛がられてていいわね。そう言って時々髪を結び直してくれるのだ。
本当に、伯爵様の人柄のおかげか、ここにいる方達は平民の僕にも優しい。
「シェリルは才能の塊だからね。俺としても期待してるよ。ギルド長にも面倒を見るように念押ししといたからね……将来S級になれば、平民とか気にしなくて良くなるし、自分を守れると相手を守るのも余裕が出来る。頑張れよ」
「はい」
十五歳からギルド会員になるには、紹介者が必要なのだ。ゴールドのタグを持つマーティス様が、僕の実力を保証してくれる。カイル様が戻ってくるまでの約二年間の間に鍛えないといけない。
カイル様が僕を従者に、と言うのならそれに相応しくなりたい。要らないと言われれば、出て行く事も頭に置いてある。勉強も魔法も、ギルド会員になるのも、いずれ一人になった時に役に立つから。
マーティス様の横を歩きながら、これから会うギルド長を想像してしまう。大柄のマーティス様と同じ位だろうか? 子供の僕は、受け入れてもらえるだろうか?
不安で気持ちがグルグルしている。首を横に振って、頬を両手でパシッと叩いた。
マーティス様が、緊張し過ぎだと豪快に笑った。
僕はギュッと鞄のショルダーストラップを握りしめた。この中には師匠の指揮棒が入っている。普段は見せない事にしていた。
「シェリル、目立たなく魔法を使いたいのは……あの時の事がトラウマになっているのか?」
魔法の試験の事と、先生が師匠の形見を盗もうとした時の事だ。
「師匠の形見の──指揮棒って目立ちますよね。でも絶対にこれは誰にも譲れないんです。平民のくせにって言われるのも仕方ないけど」
握りしめる手に力が入ってしまう。
「教わったのは短い期間だったんだろう? それでもお前を弟子にって、それに魔法をかけてくれたんだからな。それはシェリルの物だよ。確かに目立たないように、大切な人を守るって難しいな。でも、出来たら格好良いな」
また、手が伸びてきたので。頭を防御した。
「マーティス様、ギルドマスターに会うのにボサボサになり過ぎます!」
そして、オレンジ色の三角屋根が見える。二階建ての一階にはふたつの大きな扉があった。それぞれに木の吊り看板に名前が刻まれていた。
一つは、冒険者ギルド。もう一つは、BAR★Labyrinthだ。
ギルドと酒場が一階にあり、外階段から二階へ上がる事も出来るみたいだ。
その奥に細長いレンガ作り塔がそびえていた。ギルドの倍の高さがあるように見える。
「眺望の塔だよ。かなり遠くまで見えるから、後で登らせてもらうといい」
そして、ギルドの扉を開けた。
目立たない為のスキルを得るため、冒険者ギルド会員になるのだ。
伯爵様の従者で護衛も担うマーティス様は、魔法も剣もかなりの腕前でギルド会員のゴールドタグを持っていた。
「ゴールドはA級ですよね? 本当はS級も狙えるって聞きました」
いつも優しくしてくれるマーティス様は、首にある細いチェーンを摘んでゴールドのネームタグを見せてくれた。
「格好良い……」
ニカッと豪快に笑って、またシャツの中へ戻す。
「本業は、伯爵様の護衛だからね。冒険者じゃないから、無理はしない。ダンジョンは危険と隣り合わせだから、欲張り過ぎて命を落としたらもったいない」
そう言って、髪の毛をくしゃくしゃと掻き回される。
「そうですね」
この人は、僕を見るとこんな風に髪をくしゃくしゃにしてくる。侍女のリリー様は、可愛がられてていいわね。そう言って時々髪を結び直してくれるのだ。
本当に、伯爵様の人柄のおかげか、ここにいる方達は平民の僕にも優しい。
「シェリルは才能の塊だからね。俺としても期待してるよ。ギルド長にも面倒を見るように念押ししといたからね……将来S級になれば、平民とか気にしなくて良くなるし、自分を守れると相手を守るのも余裕が出来る。頑張れよ」
「はい」
十五歳からギルド会員になるには、紹介者が必要なのだ。ゴールドのタグを持つマーティス様が、僕の実力を保証してくれる。カイル様が戻ってくるまでの約二年間の間に鍛えないといけない。
カイル様が僕を従者に、と言うのならそれに相応しくなりたい。要らないと言われれば、出て行く事も頭に置いてある。勉強も魔法も、ギルド会員になるのも、いずれ一人になった時に役に立つから。
マーティス様の横を歩きながら、これから会うギルド長を想像してしまう。大柄のマーティス様と同じ位だろうか? 子供の僕は、受け入れてもらえるだろうか?
不安で気持ちがグルグルしている。首を横に振って、頬を両手でパシッと叩いた。
マーティス様が、緊張し過ぎだと豪快に笑った。
僕はギュッと鞄のショルダーストラップを握りしめた。この中には師匠の指揮棒が入っている。普段は見せない事にしていた。
「シェリル、目立たなく魔法を使いたいのは……あの時の事がトラウマになっているのか?」
魔法の試験の事と、先生が師匠の形見を盗もうとした時の事だ。
「師匠の形見の──指揮棒って目立ちますよね。でも絶対にこれは誰にも譲れないんです。平民のくせにって言われるのも仕方ないけど」
握りしめる手に力が入ってしまう。
「教わったのは短い期間だったんだろう? それでもお前を弟子にって、それに魔法をかけてくれたんだからな。それはシェリルの物だよ。確かに目立たないように、大切な人を守るって難しいな。でも、出来たら格好良いな」
また、手が伸びてきたので。頭を防御した。
「マーティス様、ギルドマスターに会うのにボサボサになり過ぎます!」
そして、オレンジ色の三角屋根が見える。二階建ての一階にはふたつの大きな扉があった。それぞれに木の吊り看板に名前が刻まれていた。
一つは、冒険者ギルド。もう一つは、BAR★Labyrinthだ。
ギルドと酒場が一階にあり、外階段から二階へ上がる事も出来るみたいだ。
その奥に細長いレンガ作り塔がそびえていた。ギルドの倍の高さがあるように見える。
「眺望の塔だよ。かなり遠くまで見えるから、後で登らせてもらうといい」
そして、ギルドの扉を開けた。
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