44 / 46
42.終わりの時
しおりを挟む
来た────
階層を破壊し、轟音とともに1人の青年が現れた。
アスベル。
アークライドの大切な人。
地下に封印されていたせいで、色の白さが際立つ。長身の彼のダークブロンドの髪の毛は、緩やかに波打ち背中辺りまで伸びていた。
切長の紅の瞳が、じっと僕を見つめた。
「お前は誰だ?アークの匂いがしたが、別人か?」
どうする?
アーク、言いたい事を言う?自問自答のように、心に問いかける。
目を瞑り、ゆっくりと開く。
「俺の事忘れた?」
声のトーンが変わったのが、自分でも分かった。
今の瞳の色は、ワインレッドになっているだろうか?
「何故だ?何故混ざり者なんだ?」
「あれから何年も経ったんだよ。アスベルは、長い事封印されてたから。俺の肉体が消えたの知らなかったか?」
切れ長の目を見開き、じっと見つめてきた。
「アークの思念?ふぅん。
その指輪からが強い。
そうか、今度は、お前を錬成すれば良いんだ。」
嬉しそうに笑った。
「1人残されるのは、嫌だしな。なら、この先ずっと一緒にいる為に、アークも俺と同じになろう?」
一歩一歩近づいて来る。
僕の前に立って、手が肩に置かれた。
今───
足元の魔法陣が発動した。
グルグルと真ん中の図面に置かれた魔石に色が点灯していくかのようだ。外側へ外側へと魔石に添いながら点灯していくさまは、火薬に火が走っていくみたいだ。
違うのは、そのまま消えずに色が付いている事だ。
《聖域》
「叶夢!!!」ノアが叫ぶ。魔法陣自体が聖域と化し、魔石から、蔦が芽吹いていく。
ずっと、アシェルが集めてきた魔石もある。
エミリーが冒険者や魔術師達と集めたものもある。帝国の王子や敵国の魔術師が協力してくれたものも、かなり量だ。
魔石には、種を植え付けていた。
相手から魔力を吸い出しそれを養分として育つように。
枯れるまで、だ。
どんどん成長して、アスベルに絡みついていく。尋常じゃない成長速度と聖域の力なのか、アスベルは動けない。
ただ目を見開き、僕の顔を見つめている。
絡みつくと同時に、魔力を吸い出し、成長し続ける。
そして、またさらに巻きつき成長していく。
アスベルの魔力はとんでもない量だから、蔦は、木の様に太く育って伸びていく。
僕自身にも巻きつき伸びて、とうとう大樹のように育った。
小さき魔物の魂である魔石が悪魔化したその魂の塊に絡み付き自由と魔力を奪っていく。
魔術を発動しようとした、アスベルの指に僕の指を重ねて繋ぐ。
彼の想いを伝える。
2度も苦しめて、ごめん。
俺も一緒に行くから。ずっと、側にいさせて──
どうか、アークライドを許してあげて。
貴方の側に、アークの魂を届けたい。
すでに魔法陣を超えそうな太さになっている。
飲み込まれた2人の姿は見えない。
「叶夢、叶夢───!!」
ノアが、叫ぶ。
ディランがノアを魔法陣の中に入れさせないように押さえつけた。
「アシェル様、アークライド様、何もかも叶夢から奪い過ぎだ!返してくれ。」
その時、微かに聞こえた。
『ノア、ディラン。逃げて──』
拳を握り締め、歯を食いしばる。
地面を殴りつけた。
ノアが、顔を上げて大樹を睨みつけた。
「まだだ。まだ、叶夢は、生きてる。
──今なら間に合う!!」
ノアが、吐き捨てるように叫んだ。
《瞬間移動》
《略奪》
「な、ノア!!」
ディランが叫ぶ。
ノアが大樹の中に消えた。
しばらくして、叶夢を抱き上げたノアが現れた。
伸びた蔦で擦り切れた傷があちこちにある。
服もいたる所破れて、血が滲んでいる。
追いかけて来るように叶夢に向かって蔦が伸びてくる。
ノアは、すぐに叶夢の指輪を引き抜いた。
ディランが驚く。
ノアは黙ったまま──ガルシアの瞳を魔法陣の中へと投げ入れた。
「契約が途切れたのが、見えたんだ。」
指輪が、大樹に触れた瞬間に一気に燃え上がる。
「逃げるぞ。ディラン!」
叶夢を真ん中に3人で支え合う。
《瞬間移動》
そして、地上へと向かった。
階層を破壊し、轟音とともに1人の青年が現れた。
アスベル。
アークライドの大切な人。
地下に封印されていたせいで、色の白さが際立つ。長身の彼のダークブロンドの髪の毛は、緩やかに波打ち背中辺りまで伸びていた。
切長の紅の瞳が、じっと僕を見つめた。
「お前は誰だ?アークの匂いがしたが、別人か?」
どうする?
アーク、言いたい事を言う?自問自答のように、心に問いかける。
目を瞑り、ゆっくりと開く。
「俺の事忘れた?」
声のトーンが変わったのが、自分でも分かった。
今の瞳の色は、ワインレッドになっているだろうか?
「何故だ?何故混ざり者なんだ?」
「あれから何年も経ったんだよ。アスベルは、長い事封印されてたから。俺の肉体が消えたの知らなかったか?」
切れ長の目を見開き、じっと見つめてきた。
「アークの思念?ふぅん。
その指輪からが強い。
そうか、今度は、お前を錬成すれば良いんだ。」
嬉しそうに笑った。
「1人残されるのは、嫌だしな。なら、この先ずっと一緒にいる為に、アークも俺と同じになろう?」
一歩一歩近づいて来る。
僕の前に立って、手が肩に置かれた。
今───
足元の魔法陣が発動した。
グルグルと真ん中の図面に置かれた魔石に色が点灯していくかのようだ。外側へ外側へと魔石に添いながら点灯していくさまは、火薬に火が走っていくみたいだ。
違うのは、そのまま消えずに色が付いている事だ。
《聖域》
「叶夢!!!」ノアが叫ぶ。魔法陣自体が聖域と化し、魔石から、蔦が芽吹いていく。
ずっと、アシェルが集めてきた魔石もある。
エミリーが冒険者や魔術師達と集めたものもある。帝国の王子や敵国の魔術師が協力してくれたものも、かなり量だ。
魔石には、種を植え付けていた。
相手から魔力を吸い出しそれを養分として育つように。
枯れるまで、だ。
どんどん成長して、アスベルに絡みついていく。尋常じゃない成長速度と聖域の力なのか、アスベルは動けない。
ただ目を見開き、僕の顔を見つめている。
絡みつくと同時に、魔力を吸い出し、成長し続ける。
そして、またさらに巻きつき成長していく。
アスベルの魔力はとんでもない量だから、蔦は、木の様に太く育って伸びていく。
僕自身にも巻きつき伸びて、とうとう大樹のように育った。
小さき魔物の魂である魔石が悪魔化したその魂の塊に絡み付き自由と魔力を奪っていく。
魔術を発動しようとした、アスベルの指に僕の指を重ねて繋ぐ。
彼の想いを伝える。
2度も苦しめて、ごめん。
俺も一緒に行くから。ずっと、側にいさせて──
どうか、アークライドを許してあげて。
貴方の側に、アークの魂を届けたい。
すでに魔法陣を超えそうな太さになっている。
飲み込まれた2人の姿は見えない。
「叶夢、叶夢───!!」
ノアが、叫ぶ。
ディランがノアを魔法陣の中に入れさせないように押さえつけた。
「アシェル様、アークライド様、何もかも叶夢から奪い過ぎだ!返してくれ。」
その時、微かに聞こえた。
『ノア、ディラン。逃げて──』
拳を握り締め、歯を食いしばる。
地面を殴りつけた。
ノアが、顔を上げて大樹を睨みつけた。
「まだだ。まだ、叶夢は、生きてる。
──今なら間に合う!!」
ノアが、吐き捨てるように叫んだ。
《瞬間移動》
《略奪》
「な、ノア!!」
ディランが叫ぶ。
ノアが大樹の中に消えた。
しばらくして、叶夢を抱き上げたノアが現れた。
伸びた蔦で擦り切れた傷があちこちにある。
服もいたる所破れて、血が滲んでいる。
追いかけて来るように叶夢に向かって蔦が伸びてくる。
ノアは、すぐに叶夢の指輪を引き抜いた。
ディランが驚く。
ノアは黙ったまま──ガルシアの瞳を魔法陣の中へと投げ入れた。
「契約が途切れたのが、見えたんだ。」
指輪が、大樹に触れた瞬間に一気に燃え上がる。
「逃げるぞ。ディラン!」
叶夢を真ん中に3人で支え合う。
《瞬間移動》
そして、地上へと向かった。
11
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
【完結】前世は魔王の妻でしたが転生したら人間の王子になったので元旦那と戦います
ほしふり
BL
ーーーーー魔王の妻、常闇の魔女リアーネは死んだ。
それから五百年の時を経てリアーネの魂は転生したものの、生まれた場所は人間の王国であり、第三王子リグレットは忌み子として恐れられていた。
王族とは思えない隠遁生活を送る中、前世の夫である魔王ベルグラに関して不穏な噂を耳にする。
いったいこの五百年の間、元夫に何があったのだろうか…?
可愛くない僕は愛されない…はず
おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。
押しが強いスパダリα ✕ 逃げるツンツンデレΩ
ハッピーエンドです!
病んでる受けが好みです。
闇描写大好きです(*´`)
※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております!
また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)
主人公にはなりません
negi
BL
俺は異世界転生したらしい。
しかも転生先は俺が生前プレイしていた18禁BLゲームの主人公。
主人公なんて嫌だ!ゲームの通りにならないようにするためにはどうしたらいい?
攻略対象者と出会わないようにしたいけど本当に会わずに済むものなのか?
本編完結しました。お気に入りもありがとうございます!
おまけ更新しました。攻め視点の後日談になりました。
初心者、初投稿です。読んだことあるような内容かもしれませんが、あたたかい目でみてもらえると嬉しいです。少しでも楽しんでもらえたらもっと嬉しいです。
【R18/短編】2度目の人生はニートになった悪役だけど、賢王に全力で養われてる
ナイトウ
BL
有能わんこ系王様攻め、死に戻り私様ツンデレ悪役従兄弟受け
乳首責め、前立腺責め、結腸責め、好きって絶対言わせるマン
音楽の神と呼ばれた俺。なんか殺されて気づいたら転生してたんだけど⁉(完)
柿の妖精
BL
俺、牧原甲はもうすぐ二年生になる予定の大学一年生。牧原家は代々超音楽家系で、小さいころからずっと音楽をさせられ、今まで音楽の道を進んできた。そのおかげで楽器でも歌でも音楽に関することは何でもできるようになり、まわりからは、音楽の神と呼ばれていた。そんなある日、大学の友達からバンドのスケットを頼まれてライブハウスへとつながる階段を下りていたら後ろから背中を思いっきり押されて死んでしまった。そして気づいたら代々超芸術家系のメローディア公爵家のリトモに転生していた!?まぁ音楽が出来るなら別にいっか!
そんな音楽の神リトモと呪いにかけられた第二王子クオレの恋のお話。
完全処女作です。温かく見守っていただけると嬉しいです。<(_ _)>
騎士団長である侯爵令息は年下の公爵令息に辺境の地で溺愛される
Matcha45
BL
第5王子の求婚を断ってしまった私は、密命という名の左遷で辺境の地へと飛ばされてしまう。部下のユリウスだけが、私についてきてくれるが、一緒にいるうちに何だか甘い雰囲気になって来て?!
※にはR-18の内容が含まれています。
※この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
僕の策略は婚約者に通じるか
藍
BL
侯爵令息✕伯爵令息。大好きな婚約者が「我慢、無駄、仮面」と話しているところを聞いてしまった。ああそれなら僕はいなくならねば。婚約は解消してもらって彼を自由にしてあげないと。すべてを忘れて逃げようと画策する話。
フリードリヒ・リーネント✕ユストゥス・バルテン
※他サイト投稿済です
※攻視点があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる