だから、それは僕じゃない!〜執着イケメンから追われています〜

Shizukuru

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36.魔石

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「何の事だか分かりかねますが、アシェル王子が何者かに殺されたと言う事でしょうか?」

毅然として何事もなかったかの様にセオドアが答えてくる。

「そう。何も無かったと?
なるほど。
僕は───時々、記憶の欠如があるらしくて、ノアとディランに心配されてしまうんだ。

夢?妄想かな。

神託によって、頭が変になった新王の戯言だと思っていいよ?

だが、これだけは、伝えて迷宮に入るよ。」

じっ、とセオドアに視線を合わせる。


「ダレン・リード。エドワード国王の命令で、レオンとカティを殺しただろ?
その時に《氷弾グラスヴレ》がアシェルを貫いた。」

その場の空気が変わって行くのを肌で感じる。

「ダレンの口から、あの子は出てきたかな?
ちゃんと、魔石になった?
紅色?
揃えたら、色とりどりで綺麗だと思うよ。

黄金は、あまりないからエミリーに回収を頼んだんだ。

もうそろそろ出来上がるからって。
夢なら、エミリーに手間をかけたかな?」

セオドアがその意味を理解したようだ。

「何を、何をしたんだ!」

「やだな。妄想だよ。
貴方も言ってたでしょう?何も無かったと。」


空気が歪み、エミリーが顔をだした。

「叶夢?アークライド?どっち?
頼まれてた、金の魔石回収してきたよ!」
さっき巫女のままだ。美女なのにエミリーの口調が、軽くて面白い。

「な、お前、デラクールに行ってたのか?
王に何をしてきたんだ!」

誰この人という様な胡乱な目でセオドアを見て、僕に視線を戻す。

頷いてみせる。

「やだなぁ。殺してないよぅ?
そんな事したら、禍根が残っちゃうでしょう?ちょっと、能力を貰っただけ。
もう野心は、いだけないんじゃないかな?
この先何も、分からない方が幸せかもよ?」

僕の側にやってきて、「はいっ」
そう言って黄金の魔石をもらう。



セオドアが移動を試みるが──
ノアとディランが一瞬で距離を詰めて腕を掴んだ。

「ガルシア王家の者を殺したんだ。生かされただけましと思え。すぐにでもお前達デラクールを滅ぼしたかったが、は世界が壊れかけている今は優先することじゃない。」
ディランが怒気をはらんだ声でそう言い放つ。




叶夢が、その場にきた者に伝える

【冷やかしで来たのなら逃げろ。倒せなくても、封印だけはこの身を差し出してでも行う。
無駄死にしたくなければ、今引き返せ。
魔石が必要なんだ。
残ってくれる者は、ダンジョンの魔物を沢山狩って欲しい。
魔石だけは、悪いけど全部回収する。
それ以外の物は、見つけた者が持ち帰っていい。35階層までで引き返せ。封印先は39階層だが、封印が先に解ければ、逃げきれなくなるから、無理に下層に来るな。
にされたくはないだろう?】

エミリーの拡声魔法で入り口にいる者に伝える。

「セオドア、もう帰っても良いよ?欲しい物は、手に入れた。
クロスウェルの王子様も、自国の守りを強化しに戻って構わない。
これだけの魔術師が居れば、魔石は集められそうだし。
元々、最下層に行くのは、僕だけだ。」

「叶夢、置いてくな。」
ディランが、セオドアから手を離し側に来る。
「護るっていったよ。」ノアが笑う。
「魔石回収は任せなさ~い。」
エミリーが冒険者風の服装に変わっている。
いつもの赤毛に戻している。

「じゃあ、行こう。」



「待て。叶夢。
クロスウェルには、俺の代わりになる王子もいる。世界が壊れるかも知れない相手なら、全力で手伝う。何か、方法があるのだろう?

それに、魔石以外もらっていいなら、欲しいものがあるからな。」
不敵に笑う、ルカニア王子の姿があった。
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