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33.叶夢とアシェル

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『すまない、叶夢。』

どうして、謝るの?

『いや、って呼んでもいい?』

ああ、そうだ──
波長が合う気がするのは、同じ血が流れているから?

「どうして、僕を助けたの?
アシェルの方が、僕を取り込めば良かったのに。」

『身体が、もたなかったんだ。最期に受けた傷が致命的だったしね。それに王家の力は、1人目にほとんど継がれるんだよ。
ガルシア王家は、封印されし者に力を注ぎ続けなければならない。陛下…父上も限界だった。』

「封印?」

『禁忌だったんだ。
死んだ者を錬成し、失敗した。』

「アシェルの大切な人?」

『違うよ。
アークライドの大切な人。』

「その人の為にアシェルが犠牲になったの?」

『昔、自惚れた錬金術師達が生命までも実験し始めた。
小動物から、人まで。
身分の低い子供や奴隷を使って。
殺しては、他の生きている者を材料にして復活させようとする。
肉体を強化する為に、健康な人の身体を切り刻む。
アークライドは、止めたかったんだ──』


そんな。
人体実験なんて──

「止めれなかったの?」

『止めたんだ。
だけど…術に溺れた者達に最愛の人を殺されてしまったんだ。

これでも錬成をしたくないのか?と…

魔が刺したでは許されないが、精神的に追い詰められ、自身も錬成を試みてしまったんだ。』

酷い。
なんて事を──

『出来上がったのは、外見だけ愛する人の形をした魔物だったんだよ。』



「それで、どうなったの?」

『殺戮が始まったよ。
事実は隠され、ダンジョンから魔物が現れたとして、王国の錬金術師や魔術師総出で封印するのがやっとだったんだ。王家最大の罪なんだ。』

「アークライドは?どうしたの?」

『兄さんの持っている指輪が──アークライドの魔力結晶かけらだよ。

歴代の錬金術のレシピも全て取り込んで、いつか使い熟せる者が現れた時の為に。歴代の王の力が込められている。

それに、封印先にも魔力を送るためのアイテムでもあるんだ。』

この指にあるのは、王達の魔力結晶かけらなんだね。

『限界がきている。
封印が解かれるのは、時間の問題なんだ。
錬金術欲しさに他国からの介入も大きくなるばかりだ。
デラクールからの妨害も大きい。』

「封印が解けたらどうなるの?」

『正確には分からないが、甚大な被害が出るだろう。壊滅的な事態に陥るかな。
その前に、彼を消滅させたいんだ。
兄さんには、巫女の力もある。
俺の全ても渡した。
王国を救ってほしい。』



「──どうしたら、良いの?」

『魔物を滅ぼす事、そして最後に指輪を消して欲しい。指輪が導いてくれるよ…。』


「アシェル?」

『兄さんと共にいるから』

「僕を壊れない様に護ってくれてたんだね。待ってて、

その時、エミリーの声が聞こえて来た。
「禁忌を犯したのは、王だよ。
殺された、従者を錬成した。」

彼を助けたい。魔物になんかしたくない。
それが、アークライドの願い。
王国の人を少しでも助け、錬成の力を指輪ごと消滅させたい。
これは、アシェルや王家の願い。

「ノア、エミリー。お願いがあるんだ。」

ゆっくりと目を開けて、2人を見た。








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