だから、それは僕じゃない！〜執着イケメンから追われています〜

31.デラクール王国

ガルシア王国の王弟アルロを引き込み、クーデターを起こさせた。

たいした能力もないくせに、王を夢見る王弟愚か者のアルロ。

デラクール国の配下で踊ってくれればそれで良い。目の前の利しか見ない者など、鬱陶しくなれば処分するだけだ。

アシェルの能力を貰えさえすれば、王国の地下に眠る悪魔を目覚めさせる事が出来るはずだ。
能力だけではなく、あの美麗な顔を歪ませるのも面白い。

多少の怪我は、構わないと言ったがダレンは、やり過ぎたようだ。

大怪我を負わせた上に逃すとは。

やはり、セオドア・バトラーを向かわせるべきだったな。

セオドアなら、異界に逃げたアシェルでも捕まえられるだろう。


なのに。
何故だ。何が起きた。

ボロボロに焼かれた男が空間から落ちてきた。

ダレン・リードか！？

その異臭に、執務室は混乱した。
セオドアを呼び治療をさせ、アシェル追跡の経緯をダレンに聞くはずだった。
だが、治癒も欠損回復等も全て術が解除されてダレンに魔術が施される事はなかった。

ダレンの瞳はセオドアの事も俺の事も認識する事は最期までなかった。

狂ったように泣き叫び突如奇声をあげ、のたうち回る。

そして──口腔から魔石蟲が這い出て来た。

セオドアの顔が一瞬強張りすぐにダレンの周りに結界を張った。
《氷花ジーフルフ》
を唱え、氷花に蟲が固められる。

セオドアが帯剣していた剣に炎をまとわせ魔核を貫いた──
紅玉石だけが残っている。

「ガルシア王国のダンジョンにのみ生息している魔石蟲です。」

「セオドア！ダレンに何があったか、聞け！！」
執務室では、嘔吐する者や、恐怖のあまり逃げ出す者など収拾が付かない有様になっていた。

横に首を振り「手遅れです。もう、皮と骨だけで人形と同じ。中身はありません。」

もはや、骸と化したダレンが横たわるだけだ。その側に紅玉の石が転がる。

「誰だ、誰がやった？心当たりはないのか？セオドア！」
ここは、結界が二重に張られていたのだ。
こんな、簡単に破られるなど、あってはならない。

「ガルシア王国の魔術師としか言えません。」
剣をしまいながら、こちらを見てくる紅目に視線を合わせる。

「ならば、アシェルではないのか？
王も王妃も王子達もすでにいない。
アルロは、たいした魔術も使えない役たたずのはずだ。

セオドア、アシェルの足取りを追え！魔術師団に王宮の結界を強化させろ！必ず捕まえて来い！！」

逃がさない捕まえてやる。