だから、それは僕じゃない!〜執着イケメンから追われています〜

Shizukuru

文字の大きさ
上 下
20 / 46

18.叶夢  ◇ノア  

しおりを挟む
叶夢が、戻ってこない。
遅い──

ガルシア王国でも、帝国でも18歳を過ぎれば、仕事をして働いているのが普通だ。


叶夢の国では、さらに専門的な勉強をするための学舎がたくさんあるそうだ。

叶夢の夢は、医師になる事。
それを、閉ざさせたのは俺達だ。

家族を失い夢を絶たれた。
どれだけ、悔しい思いをしているのか…。

学舎に将来の相談をしてくると言う、叶夢の顔は蒼白だった。
それでも、必死に作り笑いをして俺に手を振って去って行く。

来ないで──小さな拒絶。

拒むな、頼って欲しい。
そう思ってしまうくらい、心配なんだ。

アシェル様の願いだが──
それは、ただの言い訳だ。

1人で足掻くお前を見ていると、支えたいんだ。

騎士ならば、生涯の忠誠を誓う所だ。
ディランは、たぶんそうなんだろう。


王家の影として暗部にいた俺に
人を殺す事に躊躇いは無い。
血に塗れている俺が、仕事以外で護りたいと思う者に出会うなんて、な。


王家なんて華やかな見た目の裏で、やっている事は薄汚れている。

戦争を起こし、他民族を殺戮していく。
無実の臣下を、冤罪で簡単に処理していく。

あの、美しいアシェル様であっても、闇の部分はあった。
綺麗事だけで王国は護れないのだから。




叶夢の別人格は、いずれ叶夢に淘汰されて消えていく者なのか?

それとも、そのまま暗部として残る者なのか?

逆に、叶夢を取り込み上書きして主格になる者なのか?

ガルシア王国からしてみれば、
継承者として立つ場合は、叶夢が消える方が良いはず…。

だが──
護りたい。叶夢を消されたくない。

世話好きのディランを慕い。俺の事を兄弟のように懐き始めた。

感情を読み取られないように、飄々と生きてきた。
誰にも深入りしない為だったのにな。
受け入れ構う事が、楽しくなってきている。

可愛くてたまらないんだ。
みたいで。


それなのに、失敗した。
泣かないように、堪えているその背を見送った。
やはり、《隠密ステルス》をかけて追えば良かった、不安が襲う。



感覚を研ぎ澄ます──
捕捉キャプチャー

何処だ?
何処だ?叶夢、俺を呼んで──





『ノア』
聞こえた───

あそこか?
魔力の高い者が側にいるのは、何故だ。
追手か?


奪われてたまるか!
さらってしまえ──
手を伸ばし、速攻魔術を放つ。
略奪リジアル
瞬間移動テディト

空間に引き摺り込む。
捕まえた。
瞬時に移動をする。

撒けるか?
色々な所に、撹乱用にワザとマーキングを残す。

叶夢は、抱きついたままだ。
安眠ドルミール
ですぐに眠らせた。
魔力量が回復していないのに、
錬金術を試したのだ。
エミリーの薬も飲んでいなかった。
体力も魔力も戻ってなかったんだろう。
簡単に眠りに落ちるはずだ。

マジックバックからディランのローブを取り出し着せている。
阻害オブストラ》の上位機能付きのローブだ。

これで、簡単には追って来れないはずだ。

だが何故、叶夢が見つかり襲われた?

何か、目印をつけられたか?

ディランに情報を送る。
とりあえず、マンションから離れて、ディランを待つ。



「ごめん。
誕生日は、後で祝ってやるからそのまま寝てな。」

そう呟いて、ローブのフードの部分をずらして頬にキスを落とした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

当て馬的ライバル役がメインヒーローに喰われる話

屑籠
BL
 サルヴァラ王国の公爵家に生まれたギルバート・ロードウィーグ。  彼は、物語のそう、悪役というか、小悪党のような性格をしている。  そんな彼と、彼を溺愛する、物語のヒーローみたいにキラキラ輝いている平民、アルベルト・グラーツのお話。  さらっと読めるようなそんな感じの短編です。

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

処理中です...