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18.叶夢 ◇ノア
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叶夢が、戻ってこない。
遅い──
ガルシア王国でも、帝国でも18歳を過ぎれば、仕事をして働いているのが普通だ。
叶夢の国では、さらに専門的な勉強をするための学舎がたくさんあるそうだ。
叶夢の夢は、医師になる事。
それを、閉ざさせたのは俺達だ。
家族を失い夢を絶たれた。
どれだけ、悔しい思いをしているのか…。
学舎に将来の相談をしてくると言う、叶夢の顔は蒼白だった。
それでも、必死に作り笑いをして俺に手を振って去って行く。
来ないで──小さな拒絶。
拒むな、頼って欲しい。
そう思ってしまうくらい、心配なんだ。
アシェル様の願いだが──
それは、ただの言い訳だ。
1人で足掻くお前を見ていると、支えたいんだ。
騎士ならば、生涯の忠誠を誓う所だ。
ディランは、たぶんそうなんだろう。
王家の影として暗部にいた俺に
人を殺す事に躊躇いは無い。
血に塗れている俺が、仕事以外で護りたいと思う者に出会うなんて、な。
王家なんて華やかな見た目の裏で、やっている事は薄汚れている。
戦争を起こし、他民族を殺戮していく。
無実の臣下を、冤罪で簡単に処理していく。
あの、美しいアシェル様であっても、闇の部分はあった。
綺麗事だけで王国は護れないのだから。
叶夢の別人格は、いずれ叶夢に淘汰されて消えていく者なのか?
それとも、そのまま暗部として残る者なのか?
逆に、叶夢を取り込み上書きして主格になる者なのか?
ガルシア王国からしてみれば、
継承者として立つ場合は、叶夢が消える方が良いはず…。
だが──
護りたい。叶夢を消されたくない。
世話好きのディランを慕い。俺の事を兄弟のように懐き始めた。
感情を読み取られないように、飄々と生きてきた。
誰にも深入りしない為だったのにな。
受け入れ構う事が、楽しくなってきている。
可愛くてたまらないんだ。
弟みたいで。
それなのに、失敗した。
泣かないように、堪えているその背を見送った。
やはり、《隠密》をかけて追えば良かった、不安が襲う。
感覚を研ぎ澄ます──
《捕捉》
何処だ?
何処だ?叶夢、俺を呼んで──
『ノア』
聞こえた───
あそこか?
魔力の高い者が側にいるのは、何故だ。
追手か?
奪われてたまるか!
掻っ攫ってしまえ──
手を伸ばし、速攻魔術を放つ。
《略奪》
《瞬間移動》
空間に引き摺り込む。
捕まえた。
瞬時に移動をする。
撒けるか?
色々な所に、撹乱用にワザとマーキングを残す。
叶夢は、抱きついたままだ。
《安眠》
ですぐに眠らせた。
魔力量が回復していないのに、
錬金術を試したのだ。
エミリーの薬も飲んでいなかった。
体力も魔力も戻ってなかったんだろう。
簡単に眠りに落ちるはずだ。
マジックバックからディランのローブを取り出し着せている。
《阻害》の上位機能付きのローブだ。
これで、簡単には追って来れないはずだ。
だが何故、叶夢が見つかり襲われた?
何か、目印をつけられたか?
ディランに情報を送る。
とりあえず、マンションから離れて、ディランを待つ。
「ごめん。
誕生日は、後で祝ってやるからそのまま寝てな。」
そう呟いて、ローブのフードの部分をずらして頬にキスを落とした。
遅い──
ガルシア王国でも、帝国でも18歳を過ぎれば、仕事をして働いているのが普通だ。
叶夢の国では、さらに専門的な勉強をするための学舎がたくさんあるそうだ。
叶夢の夢は、医師になる事。
それを、閉ざさせたのは俺達だ。
家族を失い夢を絶たれた。
どれだけ、悔しい思いをしているのか…。
学舎に将来の相談をしてくると言う、叶夢の顔は蒼白だった。
それでも、必死に作り笑いをして俺に手を振って去って行く。
来ないで──小さな拒絶。
拒むな、頼って欲しい。
そう思ってしまうくらい、心配なんだ。
アシェル様の願いだが──
それは、ただの言い訳だ。
1人で足掻くお前を見ていると、支えたいんだ。
騎士ならば、生涯の忠誠を誓う所だ。
ディランは、たぶんそうなんだろう。
王家の影として暗部にいた俺に
人を殺す事に躊躇いは無い。
血に塗れている俺が、仕事以外で護りたいと思う者に出会うなんて、な。
王家なんて華やかな見た目の裏で、やっている事は薄汚れている。
戦争を起こし、他民族を殺戮していく。
無実の臣下を、冤罪で簡単に処理していく。
あの、美しいアシェル様であっても、闇の部分はあった。
綺麗事だけで王国は護れないのだから。
叶夢の別人格は、いずれ叶夢に淘汰されて消えていく者なのか?
それとも、そのまま暗部として残る者なのか?
逆に、叶夢を取り込み上書きして主格になる者なのか?
ガルシア王国からしてみれば、
継承者として立つ場合は、叶夢が消える方が良いはず…。
だが──
護りたい。叶夢を消されたくない。
世話好きのディランを慕い。俺の事を兄弟のように懐き始めた。
感情を読み取られないように、飄々と生きてきた。
誰にも深入りしない為だったのにな。
受け入れ構う事が、楽しくなってきている。
可愛くてたまらないんだ。
弟みたいで。
それなのに、失敗した。
泣かないように、堪えているその背を見送った。
やはり、《隠密》をかけて追えば良かった、不安が襲う。
感覚を研ぎ澄ます──
《捕捉》
何処だ?
何処だ?叶夢、俺を呼んで──
『ノア』
聞こえた───
あそこか?
魔力の高い者が側にいるのは、何故だ。
追手か?
奪われてたまるか!
掻っ攫ってしまえ──
手を伸ばし、速攻魔術を放つ。
《略奪》
《瞬間移動》
空間に引き摺り込む。
捕まえた。
瞬時に移動をする。
撒けるか?
色々な所に、撹乱用にワザとマーキングを残す。
叶夢は、抱きついたままだ。
《安眠》
ですぐに眠らせた。
魔力量が回復していないのに、
錬金術を試したのだ。
エミリーの薬も飲んでいなかった。
体力も魔力も戻ってなかったんだろう。
簡単に眠りに落ちるはずだ。
マジックバックからディランのローブを取り出し着せている。
《阻害》の上位機能付きのローブだ。
これで、簡単には追って来れないはずだ。
だが何故、叶夢が見つかり襲われた?
何か、目印をつけられたか?
ディランに情報を送る。
とりあえず、マンションから離れて、ディランを待つ。
「ごめん。
誕生日は、後で祝ってやるからそのまま寝てな。」
そう呟いて、ローブのフードの部分をずらして頬にキスを落とした。
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