だから、それは僕じゃない!〜執着イケメンから追われています〜

Shizukuru

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15.錬金術

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「ノア?」
ここ、リビングのベッド?
ノアが僕の手を握ったまま、僕のベッドに上半身を預けて眠っている。

ぼんやりと、ノアを眺めていたら、

「おっ。起きたか?
叶夢かなめ、フラフラしたりとか気分は、悪くないか?
お腹とか、痛い所は?」
ディランの声が、少し離れた所からした。

「う、ん。平気。
また、倒れた?
なんで、ノアと手を繋いでるのかな?」

ゆっくりと、身体を起こして座り直したノアに顔を覗き込まれる。
「何も、覚えてない?」

朝から、イケメンは眩し過ぎる。

「おはよう。ん~覚えてない。
手を繋いでるのは、どうして?」

繋いだ手を離された。
その手が僕の髪を撫でてくる。
「魔力切れで倒れたんだよ。
だから、俺の魔力あげたの。
昨日何をしてたか、思い出したら教えてね。」


「う、ん。
魔力切れって、寝て起きたら回復とかしない?」

「しないねぇ。」


キッチンの奥からガチャガチャと音がして、何やら焦げた臭いがしてきた。
「焦げてる?」

「悪い。卵を無駄にした。」

料理は無理って言うくせに、なんとかしようとしてくれてるのが、
なんか、嬉しくなってしまう。

ディランは、本当にお母さんみたい。男の人に、こんな風に思うのは内緒だけど。

「結局パンだけになった。ごめんな、叶夢。」


そのパンも少し焦げてる。ふふ。
「全然平気だよ。ありがとう。
それより、大学に行きたいんだ。
休学届けを確認したくて。」

「それは、構わないが。
俺かノアが、護衛について行くよ。

それから!叶夢サイズのローブを作ったから、後で試着してくれ!」

「護衛?昼間に出かけるだけだよ。それにローブとか、日本じゃ可笑しな目でみられちゃうと、思うから…その。」

ディランが、変な顔をする。

「必要?」
ベッドから降りて、ダイニングテーブルに移動した。
その後をノアがついてくる。

焦げたパンと変な色の液体が入ったコップが運ばれて来た。飲めるのかな?これ。

「あれ、3人分?エミリーは?」

「エミリーは、王国のダンジョンに材料探しに行ってる。不足している材料があるそうだ。」

少し間があって、ディランが話を続けてきた。

「叶夢。俺達は、追われてこの世界に来たのは分かるよな?」

「うん。」

「で、お前は時々、記憶を無くすだろう?」

「そう、だね。」

「記憶を無くしている間、別の人格に支配されているんだ。
俺達の静止を振り切って、王国へ行って戻って来た。」

手に持っていた食パンを思わず落としてしまった。

「異世界に行ってた?僕が?」

「魔力を使い過ぎて、倒れたんだ。
継承者の契約を結んだ叶夢は、結果的に狙われてしまう。
アシェル様に頼まれたが、今はそれだけじゃないんだ。
俺達は、叶夢を護りたい。
連れ去られるような事だけは、防ぎたいんだ。」

真っ直ぐに真摯に伝えられる言葉を、断るなんて出来ない。

「そうなんだ…ありがとう。
分かるけど。この目の色だけでも、目を惹くし。
2人も異国の人だから目立ち過ぎると思う。

魔術で変装出来ないかな?
黒か茶色とかの髪色で黒目なら。
一緒でも良いけど。

僕の瞳の色も魔術で隠せるかな?」

ノアは、マルチドリンクを飲み終えて、溜め息をつく。

「多分。叶夢のは魔術じゃ無理だねぇ。」
頬杖をつきながら、僕をじっと見ている。

隠装キャシェ

ノアの金髪は、ダークブラウンへ。
瞳も黒に近い。

隣りにいたディランも茶髪は、そのままで、綺麗な青目が黒目に変わった。

2人とも格好良い、じゃなくて。

僕は?

その疑問に、ノアが鏡の様な物を手の上に作りだした。

「あっ。深緑。」
なんで?僕だけ?

「叶夢。アシェル様の瞳の色は、王家の証でしょ。その色彩は、他人の魔術には干渉されないんじゃ無いかな。
王家を偽る事が出来ないようにしていると思うんだよね。」

ディランも、頷いた。
「直接の魔術干渉は無理だな。
メガネのレンズを錬成してみたらどうだ?
叶夢が作れば、隠せる可能性はあるな。」

「僕?いや、待って。魔術もの時は駄目でしよ?錬金術なんて無理だよ。」

右手の指輪を見つめる。

ガルシアの瞳。
僕がアシェルから受け継いだ瞳と同じ色の宝石──

「それ、錬金術のレシピが入ってるってエミリーが言ってたよ。
何か、思い出せない?
アシェル様のマジックバックもあるから、使える物が入ってるかも。」

錬金術のレシピ?
瞳の色彩を隠すレンズの作り方…


何かが、記憶を掠めていく。

ふらふらと、自室へと向かう。
ずっとリビングに寝てたから、変な感じがする。

机の引き出しに、メガネを入れてたはず。

あ、これだ。

必要なのは、セイレーンの涙。
銀妖蝶の鱗粉。
錬成用の魔法陣に分量を調整しながら落としていく。

しばらくすると、綺麗な青色の液体が出来上がる。
バックからスポイドの蓋付きの小瓶を出して液体を入れた。

魔法陣を上書きして、その上に自分のメガネを置いた。

一滴づつ、スポイドからレンズに垂らす。
青色の膜がレンズに広がり、消えていった。

「出来た。」思わず呟いた。
2人がドアの所に立っていて、
呆れたような顔をした。

「出来たな。」苦笑いのディラン。

「無意識かな?
叶夢の安全の為に、自動で反応するのかな?その指輪。」
ノアは、冷静に判断しているみたい。

「分からないけど、頭に浮かんで来たんだ。」
どうしよう。二重人格の上に無意識で錬金術使ったりとか、危ない人になってる?

「とりあえず。メガネかけてよ。」

そのメガネをかけてみた。

「ん。だよ。
じゃあ、用意して。俺がついて行くから。ディランは、が忙しいからね。」




1年、休学で足りるかな?
本当の王家の人に指輪を渡して、
継承の事、諦めてもらおう。

そんな事を僕は、考えていた。












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