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13.違和感
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※蟲の表現あります。
苦手な方すみません。
小柄で、華奢。
シミひとつない色白の肌。
真っ黒な髪に、長めの前髪がサラサラと揺れる。
綺麗な二重の深緑の瞳。
一瞬でワインレッドへと色が変化した。
アシェルの瞳のようだった。
別人なのか?
少年いや、青年か。
中性的な顔つき、極薄ピンク色の唇が、紡ぐ声。
美しい──
妖艶というのか──
被りを振り、何を考えているのだと自分を戒める。
俺が探さないといけないのは、アシェルだ。
初めて会った人物なのに、惹かれてしまう。
幻影の中に佇む、1人の青年の姿が焼き付いて離れない。
一体アレは、誰だ?
膨大な魔力に、そして美しい魔術。
異世界の蝶か。
「ガルシアの王家にあの様な者がいたのか?
隠し子か?いずれにせよ、秘匿されていた血族と見るべきだな。」
目印を付けた。気づかれる前に
会いに行くのも面白いな。
「ルカニア殿下。」
「なんだ?」振り向く事なく問う。
「デラクール王国へ送っている影より連絡が、ありました。」
「何か分かったか?」
「魔術師ダレンが、片腕、片足を焼かれた状態で王宮に送られた様です。」
「なんだと?」
思わず、《隠密》をかけているだろう方向に振り向く。俺は空間魔法が使える為、僅かな空気の振動で、ある程度の居場所を感知出来る。
だから、隠密を使っていたあの青年が、隠れていたのが分かった訳だが…。
「詳しく知りたい。一旦、クロスウェルに戻るぞ。」
「はっ。」
《瞬間移動》
謁見室に、宰相のキース・ウォーカーと俺の側近のヒューゴが待っていた。
「エイダンから魔術師ダレンの事を聞いた。お前達も聞いたか?」
「こちらも、連絡がきております。」
ウォーカー宰相が答える。
「エイダン、先程の続きを頼む。皆、座れ。」
「はっ。」
エイダンは、《隠密》を解いて席に着く。
「魔術師ダレン・リードですが、
何も覚えておらず、自身が誰かも分からない状態で、転送された様です。
あちらの魔術師団長のセオドア・バトラーが、身体欠損を回復させようとしたらしいのですが…。」
「なんだ?セオドアなら、欠損を治し、忘却も解除出来るだろう?」
「いいえ。無理だったそうです。
デラクールに送られる前に、紅玉蟲を飲まされていたと。」
「何だと!」ウォーカー宰相が声を荒げた。
「あの蟲は…ガルシアの地下迷宮にしか生息していない、肉食系の魔石蟲だ。
動物の内蔵を食べ、魔石を産む。紅玉蟲ならば、紅玉石を。」
なんて、酷い事だと宰相は言う。
「王国に送られた時には、手遅れか。」
「そのようです。
蟲は、退治され紅玉石だけ残ったようです。」
エイダンが、嫌悪感を露わにして告げる。
「すごいな。
余程の恨みが、あったか?
それに、蟲がそんな簡単に手に入るのか?」
あの青年の顔が、よぎる。
「ガルシア王国のレオン王子とカテリーナ王女も、酷い姿だったと。
ダレンに暴行を受けていたと報告があります。
もともと、ダレンは残虐性が強く怨みを買いやすいかと…。
蟲については、錬金術に使用する事もあるようなので、ガルシアの術師ならば可能でしょう。」
「報復か?」
ならば、アシェル──
じゃないのか?
だが、なんなんだ、この違和感は。
「確かめたい事がある。少し離れるが、他言無用にしてくれ。
ヒューゴ、俺の振りを頼んだ。エイダン、怪しまれない様にヒューゴの護衛に付け。」
「な?ルカニア殿下!」
宰相のウォーカーが慌てて、引き止めようとしたが、
それを無視して、俺は青年の後を追う──
《空間移動》───
苦手な方すみません。
小柄で、華奢。
シミひとつない色白の肌。
真っ黒な髪に、長めの前髪がサラサラと揺れる。
綺麗な二重の深緑の瞳。
一瞬でワインレッドへと色が変化した。
アシェルの瞳のようだった。
別人なのか?
少年いや、青年か。
中性的な顔つき、極薄ピンク色の唇が、紡ぐ声。
美しい──
妖艶というのか──
被りを振り、何を考えているのだと自分を戒める。
俺が探さないといけないのは、アシェルだ。
初めて会った人物なのに、惹かれてしまう。
幻影の中に佇む、1人の青年の姿が焼き付いて離れない。
一体アレは、誰だ?
膨大な魔力に、そして美しい魔術。
異世界の蝶か。
「ガルシアの王家にあの様な者がいたのか?
隠し子か?いずれにせよ、秘匿されていた血族と見るべきだな。」
目印を付けた。気づかれる前に
会いに行くのも面白いな。
「ルカニア殿下。」
「なんだ?」振り向く事なく問う。
「デラクール王国へ送っている影より連絡が、ありました。」
「何か分かったか?」
「魔術師ダレンが、片腕、片足を焼かれた状態で王宮に送られた様です。」
「なんだと?」
思わず、《隠密》をかけているだろう方向に振り向く。俺は空間魔法が使える為、僅かな空気の振動で、ある程度の居場所を感知出来る。
だから、隠密を使っていたあの青年が、隠れていたのが分かった訳だが…。
「詳しく知りたい。一旦、クロスウェルに戻るぞ。」
「はっ。」
《瞬間移動》
謁見室に、宰相のキース・ウォーカーと俺の側近のヒューゴが待っていた。
「エイダンから魔術師ダレンの事を聞いた。お前達も聞いたか?」
「こちらも、連絡がきております。」
ウォーカー宰相が答える。
「エイダン、先程の続きを頼む。皆、座れ。」
「はっ。」
エイダンは、《隠密》を解いて席に着く。
「魔術師ダレン・リードですが、
何も覚えておらず、自身が誰かも分からない状態で、転送された様です。
あちらの魔術師団長のセオドア・バトラーが、身体欠損を回復させようとしたらしいのですが…。」
「なんだ?セオドアなら、欠損を治し、忘却も解除出来るだろう?」
「いいえ。無理だったそうです。
デラクールに送られる前に、紅玉蟲を飲まされていたと。」
「何だと!」ウォーカー宰相が声を荒げた。
「あの蟲は…ガルシアの地下迷宮にしか生息していない、肉食系の魔石蟲だ。
動物の内蔵を食べ、魔石を産む。紅玉蟲ならば、紅玉石を。」
なんて、酷い事だと宰相は言う。
「王国に送られた時には、手遅れか。」
「そのようです。
蟲は、退治され紅玉石だけ残ったようです。」
エイダンが、嫌悪感を露わにして告げる。
「すごいな。
余程の恨みが、あったか?
それに、蟲がそんな簡単に手に入るのか?」
あの青年の顔が、よぎる。
「ガルシア王国のレオン王子とカテリーナ王女も、酷い姿だったと。
ダレンに暴行を受けていたと報告があります。
もともと、ダレンは残虐性が強く怨みを買いやすいかと…。
蟲については、錬金術に使用する事もあるようなので、ガルシアの術師ならば可能でしょう。」
「報復か?」
ならば、アシェル──
じゃないのか?
だが、なんなんだ、この違和感は。
「確かめたい事がある。少し離れるが、他言無用にしてくれ。
ヒューゴ、俺の振りを頼んだ。エイダン、怪しまれない様にヒューゴの護衛に付け。」
「な?ルカニア殿下!」
宰相のウォーカーが慌てて、引き止めようとしたが、
それを無視して、俺は青年の後を追う──
《空間移動》───
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