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10.ガルシアの瞳
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魔術と錬金術に優れている民が集まって建国されたと言われるのが、ガルシア王国だ。
特に王家の者は、神がその才を分け与えた種族と言われる程の術師が生まれて来た。
その中で、ガルシアの瞳と言われる深緑の宝石を生み出したのが、賢王アークライドと言われている。
錬金術は、特殊な材料と能力が必要になるが、多種多様の薬や金や銀などの希少な鉱物を作り上げる術の総称とされている。
魔術師の中でも治癒特化している者は、欠損した身体を再生出来る。
だが、錬金術師は、欠損した腕の代わりの義手、足には義足。瞳には義眼を作り上げる事が出来る。特殊技能を付加されたソレは不自由をカバーするだけではない。
武器としての能力を付加したパーツを嵌め込む事を可能とした。
それを、近隣の王国、そして帝国は恐れた。
武器を装填した肉体を持ち、不眠不休で戦える兵士を作り上げていると──
もちろん、そんな事は、簡単には出来ない。
だが、その噂を真実のようにしたのが、賢王アークライドだった。
類い稀な、錬金術を使える王。
戦争をする事なく、不可侵条約を締結させて王国を護った賢王。
他にも錬金術を恐れさせた理由の一つには、ガルシア王国の環境だった。
魔石、ユニコーンやミノタウルスの角、妖精の羽、セイレーンの涙。
ペガサスの立髪…火龍、水龍、黒龍の鱗。ワイバーンの爪など得難い材料が手に入る環境を持ち合わせていたからだ。
ガルシア王国には、様々な魔物が住むという地下迷宮の存在が知れ渡っていたのだ。
材料を簡単に手に入れてしまう事が可能な環境──
神に愛されし王国に加護付きと言われた賢王アークライド。
王が、作り上げたガルシアの瞳と呼ばれる宝石に影響を与える事が出来る者が、継承者となる。
そして、その者の内なる能力をさらに引き出す遺物となる。
薬の中で、どんな傷でも、欠損でも余命幾許もない病でも治す薬を
万能薬。
不老不死でいられるという薬を不死飲料。
その様々なレシピが、宝石に記憶されていると言うのが王国の言い伝えだ。
魔術により欠損の治療が出来たのが、アシェル様だった。
魔力の枯渇は、術者が死亡しなければ他者の力やポーションで回復する事が出来る。
だが、錬金術には、等価が生じてしまう。
だから──
エリクサーやアムリタなどと言う
生命に関わる物を作る時は、自らの命を削ると言われている。
アシェル様を犠牲に作られて良い物ではない──
しかし世の権力者は、不老不死を欲してやまない。
賢王アークライドのみが作れた物として、それは夢のまた夢とされている。
我々には、アシェル様がエリクサーやアムリタを作れるのかどうかは、判断出来ないが…。
国王が病に倒れた時に、アシェル様から指輪を国王が外させ、契約を解除させた。
その理由は、薬のために等価交換をさせないようにしたからではないかと考えている。
これは、あくまでも憶測だ。
無理やりの契約解除をされた事でアシェル様に影響が出てしまった。
魔術の魔力量まで抑えられてしまったんだ。
この時に、敵に狙われてしまった。
ディランが、淡々と僕に話してくれたガルシア王国と指輪の秘密の話。
そして、まだ語られる事実──
「逃げて来たこの世界で叶夢、君に出会ったんだ。
理由は、分からないが…。
俺達が転移した時には、すでに事故は起きていたんだ。
ただ、アシェル様が──
『見つけた。』
そう言ったんだよ。
俺達から見ても、アシェル様の怪我は酷いものだった。
『まずは、治療を!』
だが、首を横に振るだけで──
『全てをこの者に託す。
頼む、この先を支えてやって欲しい。』
《聖域》
そうアシェル様が
呟いて、俺達は気を失った。
すでに君の家族は亡くなって葬式が終わっていた。
そして、病院の寝台に君は寝ていたよ。
アシェル様は、身体が半透明になっていて今にも消えてしまいそうに見えた。
そして、君の側で優しく笑っていたよ。」
その時の姿を思い出していたのか、
しばらく、ディランが黙り込んでいた。
また、視線を合わせて僕に告げた。
「『叶夢を頼む。
王国の事を押し付けてしまうが、きっとこれが俺の生まれた意味だ。
頼む──ディラン。ノア。エミリー。彼を憎まずに、支えて欲しい
──ガルシアの瞳に選ばれし者なんだ。』
そして、消えてしまったんだ。」
特に王家の者は、神がその才を分け与えた種族と言われる程の術師が生まれて来た。
その中で、ガルシアの瞳と言われる深緑の宝石を生み出したのが、賢王アークライドと言われている。
錬金術は、特殊な材料と能力が必要になるが、多種多様の薬や金や銀などの希少な鉱物を作り上げる術の総称とされている。
魔術師の中でも治癒特化している者は、欠損した身体を再生出来る。
だが、錬金術師は、欠損した腕の代わりの義手、足には義足。瞳には義眼を作り上げる事が出来る。特殊技能を付加されたソレは不自由をカバーするだけではない。
武器としての能力を付加したパーツを嵌め込む事を可能とした。
それを、近隣の王国、そして帝国は恐れた。
武器を装填した肉体を持ち、不眠不休で戦える兵士を作り上げていると──
もちろん、そんな事は、簡単には出来ない。
だが、その噂を真実のようにしたのが、賢王アークライドだった。
類い稀な、錬金術を使える王。
戦争をする事なく、不可侵条約を締結させて王国を護った賢王。
他にも錬金術を恐れさせた理由の一つには、ガルシア王国の環境だった。
魔石、ユニコーンやミノタウルスの角、妖精の羽、セイレーンの涙。
ペガサスの立髪…火龍、水龍、黒龍の鱗。ワイバーンの爪など得難い材料が手に入る環境を持ち合わせていたからだ。
ガルシア王国には、様々な魔物が住むという地下迷宮の存在が知れ渡っていたのだ。
材料を簡単に手に入れてしまう事が可能な環境──
神に愛されし王国に加護付きと言われた賢王アークライド。
王が、作り上げたガルシアの瞳と呼ばれる宝石に影響を与える事が出来る者が、継承者となる。
そして、その者の内なる能力をさらに引き出す遺物となる。
薬の中で、どんな傷でも、欠損でも余命幾許もない病でも治す薬を
万能薬。
不老不死でいられるという薬を不死飲料。
その様々なレシピが、宝石に記憶されていると言うのが王国の言い伝えだ。
魔術により欠損の治療が出来たのが、アシェル様だった。
魔力の枯渇は、術者が死亡しなければ他者の力やポーションで回復する事が出来る。
だが、錬金術には、等価が生じてしまう。
だから──
エリクサーやアムリタなどと言う
生命に関わる物を作る時は、自らの命を削ると言われている。
アシェル様を犠牲に作られて良い物ではない──
しかし世の権力者は、不老不死を欲してやまない。
賢王アークライドのみが作れた物として、それは夢のまた夢とされている。
我々には、アシェル様がエリクサーやアムリタを作れるのかどうかは、判断出来ないが…。
国王が病に倒れた時に、アシェル様から指輪を国王が外させ、契約を解除させた。
その理由は、薬のために等価交換をさせないようにしたからではないかと考えている。
これは、あくまでも憶測だ。
無理やりの契約解除をされた事でアシェル様に影響が出てしまった。
魔術の魔力量まで抑えられてしまったんだ。
この時に、敵に狙われてしまった。
ディランが、淡々と僕に話してくれたガルシア王国と指輪の秘密の話。
そして、まだ語られる事実──
「逃げて来たこの世界で叶夢、君に出会ったんだ。
理由は、分からないが…。
俺達が転移した時には、すでに事故は起きていたんだ。
ただ、アシェル様が──
『見つけた。』
そう言ったんだよ。
俺達から見ても、アシェル様の怪我は酷いものだった。
『まずは、治療を!』
だが、首を横に振るだけで──
『全てをこの者に託す。
頼む、この先を支えてやって欲しい。』
《聖域》
そうアシェル様が
呟いて、俺達は気を失った。
すでに君の家族は亡くなって葬式が終わっていた。
そして、病院の寝台に君は寝ていたよ。
アシェル様は、身体が半透明になっていて今にも消えてしまいそうに見えた。
そして、君の側で優しく笑っていたよ。」
その時の姿を思い出していたのか、
しばらく、ディランが黙り込んでいた。
また、視線を合わせて僕に告げた。
「『叶夢を頼む。
王国の事を押し付けてしまうが、きっとこれが俺の生まれた意味だ。
頼む──ディラン。ノア。エミリー。彼を憎まずに、支えて欲しい
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そして、消えてしまったんだ。」
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