64 / 76
63魔力同調②
しおりを挟む
とりあえず、話を聞いてからだとレライエの離宮のサロンに皆移動した。
セバスがお茶を運んで、メグがカップに注いでいる。
キリエと王太子殿下、レライエとセラフィーレが隣同士になって向い合うようにソファに腰掛けた。
ディードはレライエのすぐ斜め後ろに、メグはセラフィーレ側に少し下がって立っている。セバスが外に出た後に、少し冷ましたティースプーンが、口元に差し出された。
いつもは、膝の上にいるのだけど流石にそれは出来ず、差し出されたお茶を口に含み毒見をする。
次にフルーツタルトが目の前に来たので、パクッと食べて見せた。レライエが少しだけ目を細め口角が僅かに上がったのを見逃したりしない。甘いものをほとんど食べないくせに、頻繁にデザートが用意されているのは、食事の必要がなくても、味覚があるセラフィーレを喜ばせようとしているからだと思う。
これで、王太子殿下も安心して食べられるはずと、ニッコリ笑って見せたら、何故か殿下の顔が赤い。
「王太子殿下?あ、サロンの中が暑いですか?空調を調整しましょうか?」
「い、や……大丈夫だ。いつもそうやって、食べさせてもらっているのか?」
普段は二人の時にしかしないのだけれど、王太子殿下の為にも毒見をしただけだ。
(あ、自分の手で食べれば良かった。習慣って怖い)
「──セーレのそれは、一応、毒見をしているんだろう。テオがいるしな」
「毒見?……レライエ、セーレはお前の大切な人なんじゃ……」
途端に心配そうな顔をするテオドールを落ち着かせようと、レライエを悪く言われたくなくて、これは全部自分が望んだことだと伝える。
「それに、食べる前から毒がないことは分かってるんです。レイが、安心出来るならそれが一番なので」
「テオにも毒見係はいるだろう?」
「あ、ああ。そうだな……立場上仕方がないが、少し驚いた。そうか……セーレはレライエの為にやっているんだな」
痛々しく見られるのは困ってしまう。本当に毒見は、セラフィーレの体には問題ないのだから。
「あ、あの! 僕も、レイには魔力譲渡で支えてもらってますので、ウインウインと言うか!」
「ういんういん?」
「お互いに有益でって、損得じゃ無くて……二人だけの特別な関係で、魔力同調も怖いくらい相性が良くて!」
魔力過多であるレライエの魔力は、セラフィーレを安定させてくれるのは事実だ。特別な関係とわざわざ暴露しているようなもので、頬が熱くなってしまう。夜の事なんて言ってない。言ってないけれど……。
(ああ、馬鹿。ヘンタイ……っぽい)
中身青年であるキリエが呆れ顔になっていて、隣のテオドール殿下の顔が、さらに赤くなっている。ディードが笑いを抑えているが、漏れ聞こえてきた。
「セーレ?」
そう言って、レライエは表情を変えないまま、指をしれっと絡めて来る。
「レイ……な、なんでもない」
「とにかく、セーレは俺のだから二人とも手を出さないで欲しい。セーレを傷つけるような奴は、許しはしない」
「レイ。言っておくが、セーレは俺にとっても大切な友人だから、俺がそんなことするわけないだろう?解放してくれたのも、セーレなんだ。恩ある相手に礼は尽くす。今は、浄化とテオを護ることに協力して欲しい。それだけだ」
キリエの話によると、守護者を神殿側に付けたいと言う思惑で、神子が積極的に突撃してくるそうだ。
神子の魔力は相性が悪過ぎるからテオドール殿下に接触させたくないこと。王宮では魔力同調の訓練をしたいが、再三神官達が結界を壊そうと物量で押して来る為に、結界への魔力出力が多すぎて困っているらしい。
「既成事実でも作りたいのか、毎晩の様に押し掛けて来るんだ。いい加減にして欲しいが殺るのは、駄目だと言うからな……。テオはちゃんと休ませたい。人は睡眠は大事だろ?それにここは、セーレの魔力が綺麗だから安心出来る。とても癒される空間なんだ」
キリエがしみじみと、空間を確かめて見ている。何か呟いては、また何か別の言葉を紡いで口を閉じた。
「結界も強固ですごいな……。たぶん、俺を弾くようにしてないから、ここに入れた気がするが、神官長達が束になっても壊せないだろう。無理矢理入ってくるなら神だけだかもな」
「もしかして、キリエ、今結界壊そうとした?」
「すまない試した。テオを休ませたいんだ。安心出来る場所がない。なんなら、俺が魔法誓約をしても良い──テオを護るって誓ったんだ」
(キリエの大切な人は、テオドール殿下なんだね)
その言葉に顔をしかめたのは、レライエだった。安心させたくて絡めた指に魔力を乗せる。王族として二人とも、きっと神殿や王族の権力に振り回されて来たのだ。いつか、この溝を取り去ってあげたい。
「レイ。お願い」
「──なら、セーレに何かあれば、魔導書を灰にする」
「レイ!!そんなこと言わないで」
「レイ、それで構わない。セーレ、しばらく世話になる」
レライエが、ようやく頷いた。
セバスがお茶を運んで、メグがカップに注いでいる。
キリエと王太子殿下、レライエとセラフィーレが隣同士になって向い合うようにソファに腰掛けた。
ディードはレライエのすぐ斜め後ろに、メグはセラフィーレ側に少し下がって立っている。セバスが外に出た後に、少し冷ましたティースプーンが、口元に差し出された。
いつもは、膝の上にいるのだけど流石にそれは出来ず、差し出されたお茶を口に含み毒見をする。
次にフルーツタルトが目の前に来たので、パクッと食べて見せた。レライエが少しだけ目を細め口角が僅かに上がったのを見逃したりしない。甘いものをほとんど食べないくせに、頻繁にデザートが用意されているのは、食事の必要がなくても、味覚があるセラフィーレを喜ばせようとしているからだと思う。
これで、王太子殿下も安心して食べられるはずと、ニッコリ笑って見せたら、何故か殿下の顔が赤い。
「王太子殿下?あ、サロンの中が暑いですか?空調を調整しましょうか?」
「い、や……大丈夫だ。いつもそうやって、食べさせてもらっているのか?」
普段は二人の時にしかしないのだけれど、王太子殿下の為にも毒見をしただけだ。
(あ、自分の手で食べれば良かった。習慣って怖い)
「──セーレのそれは、一応、毒見をしているんだろう。テオがいるしな」
「毒見?……レライエ、セーレはお前の大切な人なんじゃ……」
途端に心配そうな顔をするテオドールを落ち着かせようと、レライエを悪く言われたくなくて、これは全部自分が望んだことだと伝える。
「それに、食べる前から毒がないことは分かってるんです。レイが、安心出来るならそれが一番なので」
「テオにも毒見係はいるだろう?」
「あ、ああ。そうだな……立場上仕方がないが、少し驚いた。そうか……セーレはレライエの為にやっているんだな」
痛々しく見られるのは困ってしまう。本当に毒見は、セラフィーレの体には問題ないのだから。
「あ、あの! 僕も、レイには魔力譲渡で支えてもらってますので、ウインウインと言うか!」
「ういんういん?」
「お互いに有益でって、損得じゃ無くて……二人だけの特別な関係で、魔力同調も怖いくらい相性が良くて!」
魔力過多であるレライエの魔力は、セラフィーレを安定させてくれるのは事実だ。特別な関係とわざわざ暴露しているようなもので、頬が熱くなってしまう。夜の事なんて言ってない。言ってないけれど……。
(ああ、馬鹿。ヘンタイ……っぽい)
中身青年であるキリエが呆れ顔になっていて、隣のテオドール殿下の顔が、さらに赤くなっている。ディードが笑いを抑えているが、漏れ聞こえてきた。
「セーレ?」
そう言って、レライエは表情を変えないまま、指をしれっと絡めて来る。
「レイ……な、なんでもない」
「とにかく、セーレは俺のだから二人とも手を出さないで欲しい。セーレを傷つけるような奴は、許しはしない」
「レイ。言っておくが、セーレは俺にとっても大切な友人だから、俺がそんなことするわけないだろう?解放してくれたのも、セーレなんだ。恩ある相手に礼は尽くす。今は、浄化とテオを護ることに協力して欲しい。それだけだ」
キリエの話によると、守護者を神殿側に付けたいと言う思惑で、神子が積極的に突撃してくるそうだ。
神子の魔力は相性が悪過ぎるからテオドール殿下に接触させたくないこと。王宮では魔力同調の訓練をしたいが、再三神官達が結界を壊そうと物量で押して来る為に、結界への魔力出力が多すぎて困っているらしい。
「既成事実でも作りたいのか、毎晩の様に押し掛けて来るんだ。いい加減にして欲しいが殺るのは、駄目だと言うからな……。テオはちゃんと休ませたい。人は睡眠は大事だろ?それにここは、セーレの魔力が綺麗だから安心出来る。とても癒される空間なんだ」
キリエがしみじみと、空間を確かめて見ている。何か呟いては、また何か別の言葉を紡いで口を閉じた。
「結界も強固ですごいな……。たぶん、俺を弾くようにしてないから、ここに入れた気がするが、神官長達が束になっても壊せないだろう。無理矢理入ってくるなら神だけだかもな」
「もしかして、キリエ、今結界壊そうとした?」
「すまない試した。テオを休ませたいんだ。安心出来る場所がない。なんなら、俺が魔法誓約をしても良い──テオを護るって誓ったんだ」
(キリエの大切な人は、テオドール殿下なんだね)
その言葉に顔をしかめたのは、レライエだった。安心させたくて絡めた指に魔力を乗せる。王族として二人とも、きっと神殿や王族の権力に振り回されて来たのだ。いつか、この溝を取り去ってあげたい。
「レイ。お願い」
「──なら、セーレに何かあれば、魔導書を灰にする」
「レイ!!そんなこと言わないで」
「レイ、それで構わない。セーレ、しばらく世話になる」
レライエが、ようやく頷いた。
299
お気に入りに追加
960
あなたにおすすめの小説
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。
めちゅう
BL
末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。
お読みくださりありがとうございます。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる