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53レライエの祝賀会
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レライエが18歳となり、王族として王宮にて成人祝賀会が開かれる。
セラフィーレがパートナーになる為、陛下との謁見も事前に済ませ、身分の証明も認められた。陛下側からレライエに別のパートナーを紹介する予定だったらしいが、実物のセーレを見たせいかその話は流れたらしい。
そして、今──
レライエには、専属護衛騎士のディードが帯同を許可され、セラフィーレにはメイシアが、男装に戻り専属護衛魔法師として傍にいる。
攻略対象の三人が傍にいて落ち着かないせいか、それとも王族や高位貴族の前でダンスを披露しなければならないせいなのか、妙に緊張して指先が冷えていく。レライエは第二王子殿下という立場なので、この場で気安く話しかけるのに躊躇ってしまい、思わずメイシアに声をかけようと足を止めた。
そこに、純白で銀糸の刺繍の煌びやかな神官服を着た神子が、神官長と共に現れこちらを向いたので、さらに嫌な汗がでてくる。
(本当に、大丈夫かな……)
神官長とも目が合うと、二人がゆっくりとこちらに近づいて来た。
(こ、来なくていいのに!)
この人も攻略対象者の一人だ。イケメンが揃い、広間の中で注目の的だ。
「──噂は聞いておりましたが、このような美しい方が、レライエ殿下のパートナーなのですね」
一歩前に出たレライエに庇われるようにセラフィーレは、その背に隠された。さらに近くに寄るメイシアと、後方から圧を感じるディードの魔力に、空気がピリピリとしてしまう。
そこに、陛下と共に来たテオドール殿下が登場したようで、広間が静かになりコツコツと靴音だけが近付いて来た。
(もぅ勘弁……して)
何を言われるのか身構えていると、第一王子殿下が神子に向かって礼をとる。
「神子様。それから神官長にレライエも祝賀会の後、王室のサロンに来るように。陛下からの大切な話がある。セーレ……殿も、確認しておきたいことがあるので、レライエと共に出席するように」
「第一王子殿下、私はずっと監視されているのです。その様な場に信用出来る護衛を連れて行けないのなら、出席出来かねます」
「レライエ不敬だぞ」
冷たく人を寄せつけないような雰囲気に悪役王子の姿が重なり、思わずレライエの腕に触れると、振り返った表情はとても優しいものだった。
「レイ……ぼ……私なら大丈夫だから」
「セーレに、酷いことはさせない」
指を絡めるように手を繋ぎ、向き直し第一王子殿下に淡々と話しかけていく。
「成人しましたので、何時でもこの場を離れる……」
スッと陛下の手が上がった。
「レライエ、軽々しくそのような発言してはいけない。その為の打ち合わせをするだけだ。心配なら、その護衛二人を同行させていい」
ゲーム内でも王妃の影響を考えて、レライエには公式にあまり接触して来なかった陛下が目の前にいた。第一王子に似たイケオジの穏やかな声色により、ピリピリした空気が一変していく。
「分かりました。ですが内容によっては、拒否権を認めていただきます」
「もちろんだ。レイ。せっかくだから祝賀会を楽しみなさい。成人おめでとう」
そう言って、高貴な集まりの方へと第一王子殿下を連れて行ってしまう。悪役王子の補正が入らなくて良かった。そう思うと絡めている指に少し力が入り、それに反応したのか握り返してくれる。
「レイ……成人おめでと」
「ねぇ!!レライエ様!!」
レライエの返事も聞けないまま割って入ってきたのは、黒髪にダイヤモンドの様な宝石がキラキラと輝くカチューシャのようなアクセサリーが目立つ神子だ。
(うわぁ。高そう……)
第一王子殿下との成人祝賀会の時よりも目立つ姿に、まるで今日の主役見たいだと思ってしまう。
途切れた会話の中、着飾った神子がレライエに手を差しのべて微笑でいた。
「レライエ様。お祝いにダンスをしましょう。私から祝福を殿下に」
「いい加減にして下さい。神子様と接することは、第一王子殿下とそちらにいる神官長も望まぬことです。無能の第二王子に関わるのは止めた方がいい」
「──レライエ殿下は、陛下に認められましたので、その様に卑下しなくていいのですよ。この機会に神殿も殿下を後押ししていると来賓に見て頂きましょう」
レライエが神殿に認められるなら、悪役王子から離れるかも知れない。
「レイ、私はメイシアと待ってるから」
「駄目です。十八になったのですから、この先は絶対に離しません。それにメイシアは護衛魔法騎士としては認めるが、セーレを譲る気はない」
「ちょっと、何で無視するの?」
「神子様の相手は、神官長か第一王子殿下ですよね。嫉妬させたいのでしょうが邪魔者は、馬に蹴られますので失礼します」
「はあ?」
変な声がフロアに響き、慌てて神子が口を閉じた。
そして、セラフィーレはフロアの中央に連れて行かれたのだ。
セラフィーレがパートナーになる為、陛下との謁見も事前に済ませ、身分の証明も認められた。陛下側からレライエに別のパートナーを紹介する予定だったらしいが、実物のセーレを見たせいかその話は流れたらしい。
そして、今──
レライエには、専属護衛騎士のディードが帯同を許可され、セラフィーレにはメイシアが、男装に戻り専属護衛魔法師として傍にいる。
攻略対象の三人が傍にいて落ち着かないせいか、それとも王族や高位貴族の前でダンスを披露しなければならないせいなのか、妙に緊張して指先が冷えていく。レライエは第二王子殿下という立場なので、この場で気安く話しかけるのに躊躇ってしまい、思わずメイシアに声をかけようと足を止めた。
そこに、純白で銀糸の刺繍の煌びやかな神官服を着た神子が、神官長と共に現れこちらを向いたので、さらに嫌な汗がでてくる。
(本当に、大丈夫かな……)
神官長とも目が合うと、二人がゆっくりとこちらに近づいて来た。
(こ、来なくていいのに!)
この人も攻略対象者の一人だ。イケメンが揃い、広間の中で注目の的だ。
「──噂は聞いておりましたが、このような美しい方が、レライエ殿下のパートナーなのですね」
一歩前に出たレライエに庇われるようにセラフィーレは、その背に隠された。さらに近くに寄るメイシアと、後方から圧を感じるディードの魔力に、空気がピリピリとしてしまう。
そこに、陛下と共に来たテオドール殿下が登場したようで、広間が静かになりコツコツと靴音だけが近付いて来た。
(もぅ勘弁……して)
何を言われるのか身構えていると、第一王子殿下が神子に向かって礼をとる。
「神子様。それから神官長にレライエも祝賀会の後、王室のサロンに来るように。陛下からの大切な話がある。セーレ……殿も、確認しておきたいことがあるので、レライエと共に出席するように」
「第一王子殿下、私はずっと監視されているのです。その様な場に信用出来る護衛を連れて行けないのなら、出席出来かねます」
「レライエ不敬だぞ」
冷たく人を寄せつけないような雰囲気に悪役王子の姿が重なり、思わずレライエの腕に触れると、振り返った表情はとても優しいものだった。
「レイ……ぼ……私なら大丈夫だから」
「セーレに、酷いことはさせない」
指を絡めるように手を繋ぎ、向き直し第一王子殿下に淡々と話しかけていく。
「成人しましたので、何時でもこの場を離れる……」
スッと陛下の手が上がった。
「レライエ、軽々しくそのような発言してはいけない。その為の打ち合わせをするだけだ。心配なら、その護衛二人を同行させていい」
ゲーム内でも王妃の影響を考えて、レライエには公式にあまり接触して来なかった陛下が目の前にいた。第一王子に似たイケオジの穏やかな声色により、ピリピリした空気が一変していく。
「分かりました。ですが内容によっては、拒否権を認めていただきます」
「もちろんだ。レイ。せっかくだから祝賀会を楽しみなさい。成人おめでとう」
そう言って、高貴な集まりの方へと第一王子殿下を連れて行ってしまう。悪役王子の補正が入らなくて良かった。そう思うと絡めている指に少し力が入り、それに反応したのか握り返してくれる。
「レイ……成人おめでと」
「ねぇ!!レライエ様!!」
レライエの返事も聞けないまま割って入ってきたのは、黒髪にダイヤモンドの様な宝石がキラキラと輝くカチューシャのようなアクセサリーが目立つ神子だ。
(うわぁ。高そう……)
第一王子殿下との成人祝賀会の時よりも目立つ姿に、まるで今日の主役見たいだと思ってしまう。
途切れた会話の中、着飾った神子がレライエに手を差しのべて微笑でいた。
「レライエ様。お祝いにダンスをしましょう。私から祝福を殿下に」
「いい加減にして下さい。神子様と接することは、第一王子殿下とそちらにいる神官長も望まぬことです。無能の第二王子に関わるのは止めた方がいい」
「──レライエ殿下は、陛下に認められましたので、その様に卑下しなくていいのですよ。この機会に神殿も殿下を後押ししていると来賓に見て頂きましょう」
レライエが神殿に認められるなら、悪役王子から離れるかも知れない。
「レイ、私はメイシアと待ってるから」
「駄目です。十八になったのですから、この先は絶対に離しません。それにメイシアは護衛魔法騎士としては認めるが、セーレを譲る気はない」
「ちょっと、何で無視するの?」
「神子様の相手は、神官長か第一王子殿下ですよね。嫉妬させたいのでしょうが邪魔者は、馬に蹴られますので失礼します」
「はあ?」
変な声がフロアに響き、慌てて神子が口を閉じた。
そして、セラフィーレはフロアの中央に連れて行かれたのだ。
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