53 / 61
52攻略対象者たち
しおりを挟む
突然、傍に来たレライエに抱きしめられ言葉を失ってしまう。
「駄目です。行かせない。なぜ?神子の元に行こうとするんですか?」
強制力がなかったとしても、この世界が終わることになったら別れが早まるのだ。この先に一緒にいる為の選択なら、間違いではないと思う。
「このままじゃ、厄災が終わらない。神子が魔導書と契約しなければ、キリエのような存在まで呪われてしまう!浄化に力を貸せる者がいなくなれば、王国の被害が拡がってしまうから。それは止めたい」
「セーレ様と神子の魔力は合わなかった。あんなに穢れたのに。渡せる訳がない!俺と契約を解除するなんて許さない」
皆からも隠されるかのように、すっぽりと抱きしめられている。温かくて、嬉しくてずっとこのままでいたいくらいだ。
「この世界が壊れてしまうのは嫌だから」
本来、神子の力が足りないなんてありえない。
星七が、邪魔をしたのなら浄化を終わらせる力を貸せばいい。そうすれば、世界は元に戻っていくのだから。
セバスも、メグも、ディードも既に家族のように大切な人たちで誰も失いたくない。何よりレライエは、星七が転生を望み、誰よりも護りたかった大切な人。
(──大好きなんだ)
ギュッと抱きしめ返す指先に力が入る。この体温も、匂いも、失いたくない。
「だから契約は解除しても、また戻るから。待ってて」
誰かが鼻をすする音がした。しんみりとした雰囲気の中、突然パンと手を叩く音が響いた。
音の方にいたのは、胸の前で手を合わせているメグだった。
「何、言ってるんですか?」
しんみりとしていた雰囲気に、メグが男らしく足を広げ仁王立ちしている。メイド姿なのに、男気が溢れていた。メイシアの口調になっている。
「何って……?」
「そもそも、あの神子に浄化の力はなさそうですが? セーレ様とレライエ殿下が、浄化すれば問題ないのでは? それに、もう一冊増えたので、誰か契約して浄化に帯同さえすれば、神殿も文句言えないと思いますけどね」
「え?でも、召喚された神子が……この世界を救わないと……?」
「能力の問題です。レライエ殿下の魔力と相性がいいのはセーレ様で、俺が見る限りキリエには、相応しい相手がいる」
ざわざわと、誰なのかを皆がお互いに顔を見合わせていた。
ディードもレライエも、メイシアに戻っているメグの言葉を待っている。
「とにかく……成人祝賀会の準備を進めましょうね。セーレ様が、レライエ殿下と離れる方が、世界が壊れそうなので。必要なら向こうから、何か言ってきますわ」
「でも」
「セーレ様は、私が何者か知っているのですから。キリエはここにいる間、私が保管しますね」
「な、何を言ってるんだ? 俺の相手がいるはずがない」
「お子様は、大人しく待っててください」
キリエの傍に行き、メグは襟元から銀のチェーンにぶら下がっているロケット部分をパチンと開いた。その手にある魔導書を取り上げると、その小さなロケット部分に本は吸い込まれていく。
「な、おい!」
「このままだと、元の姿には戻れませんわよ!しばらく隠れて力を温存しなさい。本当に感謝して下さいませ」
そしてキリエも消えた後に、そのロケットをパチンと閉じる。
「メ……グ? キリエは?」
「お子様は寝る時間なんですよ。ふふ」
「セーレ様。我々は、レライエ殿下とセーレ様に力が及ばないかも知れませんが、お二人の為ならこの身を賭しても構わないのです」
「ディ。でも」
「この離宮も、全部護って下さっているのは、セーレ様です。レライエ殿下が、無事にここまで生きて来られたのもセーレ様がいたからです。そんな悲しい顔をして、神子の元へは行かせません。浄化の役割をセーレ様がすると言うなら、一緒に行きます」
攻略対象たちが、格好良すぎてなんて会話をしていいのか分からなくなってきた。
本当──に、このままここにいて問題ないのだろうか?メイシアは、特別な隠れキャラなのは間違いない。
二冊目の魔導書が、現れたのは一体どういうことか? そして、キリエに相応しい相手が、誰なのか分からない。
「──メイシアが、キリエの?」
スッと人差し指を立てて、(シッ)と唇を動かした。
もう少しだけ、待ってもいいのかも知れない。神子と契約しなくていいのなら、レライエと共に浄化をする旅をしてもいい。
神殿や王妃派の動き次第なら、レライエの成人祝賀会に、何か動きがあるはずだ。
「レイ……の、傍にいていいのかな?」
「もちろんです。俺のパートナーはセーレだけです」
そして、王宮へと行く日が来た。
「駄目です。行かせない。なぜ?神子の元に行こうとするんですか?」
強制力がなかったとしても、この世界が終わることになったら別れが早まるのだ。この先に一緒にいる為の選択なら、間違いではないと思う。
「このままじゃ、厄災が終わらない。神子が魔導書と契約しなければ、キリエのような存在まで呪われてしまう!浄化に力を貸せる者がいなくなれば、王国の被害が拡がってしまうから。それは止めたい」
「セーレ様と神子の魔力は合わなかった。あんなに穢れたのに。渡せる訳がない!俺と契約を解除するなんて許さない」
皆からも隠されるかのように、すっぽりと抱きしめられている。温かくて、嬉しくてずっとこのままでいたいくらいだ。
「この世界が壊れてしまうのは嫌だから」
本来、神子の力が足りないなんてありえない。
星七が、邪魔をしたのなら浄化を終わらせる力を貸せばいい。そうすれば、世界は元に戻っていくのだから。
セバスも、メグも、ディードも既に家族のように大切な人たちで誰も失いたくない。何よりレライエは、星七が転生を望み、誰よりも護りたかった大切な人。
(──大好きなんだ)
ギュッと抱きしめ返す指先に力が入る。この体温も、匂いも、失いたくない。
「だから契約は解除しても、また戻るから。待ってて」
誰かが鼻をすする音がした。しんみりとした雰囲気の中、突然パンと手を叩く音が響いた。
音の方にいたのは、胸の前で手を合わせているメグだった。
「何、言ってるんですか?」
しんみりとしていた雰囲気に、メグが男らしく足を広げ仁王立ちしている。メイド姿なのに、男気が溢れていた。メイシアの口調になっている。
「何って……?」
「そもそも、あの神子に浄化の力はなさそうですが? セーレ様とレライエ殿下が、浄化すれば問題ないのでは? それに、もう一冊増えたので、誰か契約して浄化に帯同さえすれば、神殿も文句言えないと思いますけどね」
「え?でも、召喚された神子が……この世界を救わないと……?」
「能力の問題です。レライエ殿下の魔力と相性がいいのはセーレ様で、俺が見る限りキリエには、相応しい相手がいる」
ざわざわと、誰なのかを皆がお互いに顔を見合わせていた。
ディードもレライエも、メイシアに戻っているメグの言葉を待っている。
「とにかく……成人祝賀会の準備を進めましょうね。セーレ様が、レライエ殿下と離れる方が、世界が壊れそうなので。必要なら向こうから、何か言ってきますわ」
「でも」
「セーレ様は、私が何者か知っているのですから。キリエはここにいる間、私が保管しますね」
「な、何を言ってるんだ? 俺の相手がいるはずがない」
「お子様は、大人しく待っててください」
キリエの傍に行き、メグは襟元から銀のチェーンにぶら下がっているロケット部分をパチンと開いた。その手にある魔導書を取り上げると、その小さなロケット部分に本は吸い込まれていく。
「な、おい!」
「このままだと、元の姿には戻れませんわよ!しばらく隠れて力を温存しなさい。本当に感謝して下さいませ」
そしてキリエも消えた後に、そのロケットをパチンと閉じる。
「メ……グ? キリエは?」
「お子様は寝る時間なんですよ。ふふ」
「セーレ様。我々は、レライエ殿下とセーレ様に力が及ばないかも知れませんが、お二人の為ならこの身を賭しても構わないのです」
「ディ。でも」
「この離宮も、全部護って下さっているのは、セーレ様です。レライエ殿下が、無事にここまで生きて来られたのもセーレ様がいたからです。そんな悲しい顔をして、神子の元へは行かせません。浄化の役割をセーレ様がすると言うなら、一緒に行きます」
攻略対象たちが、格好良すぎてなんて会話をしていいのか分からなくなってきた。
本当──に、このままここにいて問題ないのだろうか?メイシアは、特別な隠れキャラなのは間違いない。
二冊目の魔導書が、現れたのは一体どういうことか? そして、キリエに相応しい相手が、誰なのか分からない。
「──メイシアが、キリエの?」
スッと人差し指を立てて、(シッ)と唇を動かした。
もう少しだけ、待ってもいいのかも知れない。神子と契約しなくていいのなら、レライエと共に浄化をする旅をしてもいい。
神殿や王妃派の動き次第なら、レライエの成人祝賀会に、何か動きがあるはずだ。
「レイ……の、傍にいていいのかな?」
「もちろんです。俺のパートナーはセーレだけです」
そして、王宮へと行く日が来た。
272
お気に入りに追加
889
あなたにおすすめの小説
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
可愛い悪役令息(攻)はアリですか?~恥を知った元我儘令息は、超恥ずかしがり屋さんの陰キャイケメンに生まれ変わりました~
狼蝶
BL
――『恥を知れ!』
婚約者にそう言い放たれた瞬間に、前世の自分が超恥ずかしがり屋だった記憶を思い出した公爵家次男、リツカ・クラネット8歳。
小姓にはいびり倒したことで怯えられているし、実の弟からは馬鹿にされ見下される日々。婚約者には嫌われていて、専属家庭教師にも未来を諦められている。
おまけに自身の腹を摘まむと大量のお肉・・・。
「よしっ、ダイエットしよう!」と決意しても、人前でダイエットをするのが恥ずかしい!
そんな『恥』を知った元悪役令息っぽい少年リツカが、彼を嫌っていた者たちを悩殺させてゆく(予定)のお話。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる