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54ダンスのその後に。
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「レイ……いいのかな? 」
「構わない。ずっと、セーレとダンスする日を楽しみにしていたんだ。誰にも邪魔はされたくない。それにメイシアに譲るつもりはない」
フロアの中央に二人が立つと、今日の主役の為に皆が気を利かせて脇の方へと下がっていく。視線が痛いので、出来れば近くにいて欲しいと引き留めたくなる。緊張で鼓動がレライエの耳にまで、聞こえてしまいそうだった。
「大丈夫。俺がリードするからステップを失敗してもバレない。魔力が不安定になって透けないか心配なら、途中口移しで魔力を分けようか?今日からはたくさんセーレに触れるの解禁だろう?」
「な、こんな所で。誤解されたら……大変だから」
ふっと笑い、耳元に触れないギリギリまで顔を寄せて「誤解じゃない。夜に続きを」と囁かれた。
「レ、レイ!お、大人を揶揄いすぎ」
「ははは、その調子。最初は身を任せて、余裕が出来たら好きに動いていいから。ああ、俺のものだって見せ付けるいい機会だ」
反則級の笑顔に、周りがざわついてる。でも、ダンスはメグに徹底的に叩き込まれたから、身を任せるよりは、対等に近づきたいという負けず嫌いがムクムクと表に出てくる。
音楽が流れて、最初の一歩を踏みだすと足が軽やかにステップを刻み、レライエの巧みなリードが姿勢を支えてくれる。止まることなく息ぴったりで、近い距離でも足を踏むことはない。
(た、楽しい……ダンス出来てる)
人の目も気にならない。レイの優しさがセラフィーレを気持ちの部分から支えてくれていて、安心感が強い。
「──楽しい?」
「うん。レイやメグのおかげで、ダンス出来てる気がする。レイ、願いを叶えてくれてありがとう」
レライエが途端に、真っ赤になる。
「え、ええ?ど、どうしたの?暑くなった?」
「そんな、可愛い顔は見せないで」
「?」
「俺だけのセーレでいて欲しい」
気がつけば二度のダンスを二人だけで披露することになり、ダンスの終わりに指輪にキスをされると歓声が上がった。レライエが合図をすると、少しゆっくりな曲に変わり来賓達も自然とダンスを始めた。ゆっくりとディードたちの元へ戻ると、二人とも嬉しそうに迎え入れてくれる。メイシアが、後で踊ってくださいと言ったので返事をしようとしたらバックハグから手で唇を塞がれた。
「悪いが行くところがあるから、ダンスの時間はない」
第二王子殿下に話しかけに来る者が多く、特に男女問わずダンスの申し込みをレライエはされていたが、その誰とも踊らなかった。セラフィーレだけは、レライエが貴族の対応をしている隙に、メイシアに連れ出されダンスを一度踊ったのだ。
その後レライエが不機嫌になってしまい、ディードが宥める事態となる。
「メイシアが面白がっているだけだから!」
「ダンスのステップの確認をしたのですよ。間違いは、早く修正しないといけないので」
肩を震わせて、メイシアが笑っている。
その後、自由にダンスを楽しむ者や、交流を深める貴族達で祝賀会は滞りなく終わった。
時間が過ぎて、第一王子殿下の従者に連れられて特別な部屋に案内された。
調度品もかなり高価なものなはずなのに、華美ではなく趣味がよく落ち着い雰囲気のサロンだった。ローテーブルの上には軽食が並べられて、この世界で初めてみるようなフルーツやデザートも多く用意されていた。
「──綺麗」
思わず、声になってしまい、皆の視線がセラフィーレに向いた為に恥ずかしさで固まっていると、陛下の目尻が下がり「構わない。気にせずに話していい」と許可がおりる。
「──はい」
一人用のソファにそれぞれ陛下と第一王子、三人がけくらいの大きめのソファに神官長と神子、同仕様の物にレライエとセラフィーレだ。王族の後ろには護衛がいて、レライエの後ろにいつもの二人が揃って立っていた。
レライエに対して陛下からの言葉があった後、ようやく本題に入った。
「セーレ殿は、神子様と召喚されたのではありませんか?」
そう、神官長から質問されたのだ。
「構わない。ずっと、セーレとダンスする日を楽しみにしていたんだ。誰にも邪魔はされたくない。それにメイシアに譲るつもりはない」
フロアの中央に二人が立つと、今日の主役の為に皆が気を利かせて脇の方へと下がっていく。視線が痛いので、出来れば近くにいて欲しいと引き留めたくなる。緊張で鼓動がレライエの耳にまで、聞こえてしまいそうだった。
「大丈夫。俺がリードするからステップを失敗してもバレない。魔力が不安定になって透けないか心配なら、途中口移しで魔力を分けようか?今日からはたくさんセーレに触れるの解禁だろう?」
「な、こんな所で。誤解されたら……大変だから」
ふっと笑い、耳元に触れないギリギリまで顔を寄せて「誤解じゃない。夜に続きを」と囁かれた。
「レ、レイ!お、大人を揶揄いすぎ」
「ははは、その調子。最初は身を任せて、余裕が出来たら好きに動いていいから。ああ、俺のものだって見せ付けるいい機会だ」
反則級の笑顔に、周りがざわついてる。でも、ダンスはメグに徹底的に叩き込まれたから、身を任せるよりは、対等に近づきたいという負けず嫌いがムクムクと表に出てくる。
音楽が流れて、最初の一歩を踏みだすと足が軽やかにステップを刻み、レライエの巧みなリードが姿勢を支えてくれる。止まることなく息ぴったりで、近い距離でも足を踏むことはない。
(た、楽しい……ダンス出来てる)
人の目も気にならない。レイの優しさがセラフィーレを気持ちの部分から支えてくれていて、安心感が強い。
「──楽しい?」
「うん。レイやメグのおかげで、ダンス出来てる気がする。レイ、願いを叶えてくれてありがとう」
レライエが途端に、真っ赤になる。
「え、ええ?ど、どうしたの?暑くなった?」
「そんな、可愛い顔は見せないで」
「?」
「俺だけのセーレでいて欲しい」
気がつけば二度のダンスを二人だけで披露することになり、ダンスの終わりに指輪にキスをされると歓声が上がった。レライエが合図をすると、少しゆっくりな曲に変わり来賓達も自然とダンスを始めた。ゆっくりとディードたちの元へ戻ると、二人とも嬉しそうに迎え入れてくれる。メイシアが、後で踊ってくださいと言ったので返事をしようとしたらバックハグから手で唇を塞がれた。
「悪いが行くところがあるから、ダンスの時間はない」
第二王子殿下に話しかけに来る者が多く、特に男女問わずダンスの申し込みをレライエはされていたが、その誰とも踊らなかった。セラフィーレだけは、レライエが貴族の対応をしている隙に、メイシアに連れ出されダンスを一度踊ったのだ。
その後レライエが不機嫌になってしまい、ディードが宥める事態となる。
「メイシアが面白がっているだけだから!」
「ダンスのステップの確認をしたのですよ。間違いは、早く修正しないといけないので」
肩を震わせて、メイシアが笑っている。
その後、自由にダンスを楽しむ者や、交流を深める貴族達で祝賀会は滞りなく終わった。
時間が過ぎて、第一王子殿下の従者に連れられて特別な部屋に案内された。
調度品もかなり高価なものなはずなのに、華美ではなく趣味がよく落ち着い雰囲気のサロンだった。ローテーブルの上には軽食が並べられて、この世界で初めてみるようなフルーツやデザートも多く用意されていた。
「──綺麗」
思わず、声になってしまい、皆の視線がセラフィーレに向いた為に恥ずかしさで固まっていると、陛下の目尻が下がり「構わない。気にせずに話していい」と許可がおりる。
「──はい」
一人用のソファにそれぞれ陛下と第一王子、三人がけくらいの大きめのソファに神官長と神子、同仕様の物にレライエとセラフィーレだ。王族の後ろには護衛がいて、レライエの後ろにいつもの二人が揃って立っていた。
レライエに対して陛下からの言葉があった後、ようやく本題に入った。
「セーレ殿は、神子様と召喚されたのではありませんか?」
そう、神官長から質問されたのだ。
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