49 / 76
48違和感 side神子
しおりを挟む
この世界で高度な浄化が出来るのは、異世界から召喚された存在だけのはずだ。なのに、レライエ殿下の傍にいるこの子の存在は、どのルートにもなかった。
秘密のルートがあるとしても、神子に関係ない所で起きるなんておかしい話だ。
綺麗な深い青い髪……まるで、殿下の色をまとっているみたいだった。
黒く禍々しい鱗がびっしりと生えている蛇のような化け物に立ち向かう姿は、美しい精霊のようで護衛達も見惚れていた。
レライエの傍にいたこの子が、かざした指先から美しい光状のものが包み込んだ後、禍々しい姿は美しい竜に戻っていく。
浄化したのか、なんの魔法をつかったのか……神子なのに分からない。
ただ化け物の姿から変化したので、最後に浄化に関わったように見せかけようしたのに、何もかもが失敗に終わる。ここにいる誰もが、この子に惹き寄せられていくようだ。
──何より、テオドールの態度があからさまだった。
俺との婚約が嫌みたいだ。王太子としての立場を確約する為にも、異世界の神子と婚約をしたらどうかと神官長が提案していた。召喚された時は嬉しそうにしていたのに、今のテオドールは即答を避け、浄化の実績がないうちは婚約する気は無いといい、王妃もテオドールの意見に同意だと連絡まで届く。
ずっと隠れて離宮を確認に行っていた理由は、多分一目惚れしたセーレに会いたかったのだろう。レライエ殿下が恋人だと言っても認めたくない理由が、バカバカしいほど分かりやす過ぎる。
悪役王子の設定が微かに残っているからなのか? レライエが何か酷いことをしているのではと疑いをかけている。そんな、微妙な世界。
魔力過多のレライエに出来たセーレという魔力欠乏症の恋人。ディードもメイドもセーレを護っている。
遠目に見えたメイドは魔法師の様で、女性にしては背の高い中性的な容姿が決定的だった。隠れキャラまでがここにいる。
(攻略対象がなんで揃いも揃って、悪役王子の恋人の傍にいるんだよ)
大切に抱きかかえられたセーレが、テオドールの言葉を否定するためにレライエにキスをした。それを嬉しそうに受け入れ、人目もはばからず深くキスを返えす。
演技とは思えない甘く溶けた表情をみせた悪役の雰囲気が、神子が思い描いた世界じゃないことを確信させる。
俺が愛される世界を壊していくイレギュラーの存在。
レライエが大切そうにセーレを抱え直している。寄りかかるセーレの服を、メグが整えていく。魔力欠乏症なら、あの浄化はきつかったはずで歩けないのも頷ける。
だがそもそも魔力が欠乏してしまう状態の恋人に、無理をさせるのは腑に落ちない。何か見落としている気がする。攻略対象に大切にされる存在の意味。
「──そうか、全部お前のせいか?」
「神子様?」
「いえ。何でもありません。テオ様。私の力が上手く使えない理由が分かった気がします。神殿に戻りましょう。神官長とも話がしたいです。あの時の召喚の儀式のこと詳しく検証しないと」
そう言うとテオドールがハッとした顔になる。
「そう……か。気になることがあるな」
テオドールは、レライエの方を見てから隠すように抱かれているセーレに視線を送った。
「レライエ。休暇が済んだら王宮で会おう。セーレ無理をさせてすまない。だが、聞きたいことがある。いずれ、呼び出すことになる」
そう言って、向きを変え護衛と共にテオドールがこの場から離れていく。
「レライエ殿下。セーレ様。王都に戻ったらゆっくり話しましょうね」
ここは俺のための世界だから。イレギュラーを早く、排除し修正していかなければならない。
秘密のルートがあるとしても、神子に関係ない所で起きるなんておかしい話だ。
綺麗な深い青い髪……まるで、殿下の色をまとっているみたいだった。
黒く禍々しい鱗がびっしりと生えている蛇のような化け物に立ち向かう姿は、美しい精霊のようで護衛達も見惚れていた。
レライエの傍にいたこの子が、かざした指先から美しい光状のものが包み込んだ後、禍々しい姿は美しい竜に戻っていく。
浄化したのか、なんの魔法をつかったのか……神子なのに分からない。
ただ化け物の姿から変化したので、最後に浄化に関わったように見せかけようしたのに、何もかもが失敗に終わる。ここにいる誰もが、この子に惹き寄せられていくようだ。
──何より、テオドールの態度があからさまだった。
俺との婚約が嫌みたいだ。王太子としての立場を確約する為にも、異世界の神子と婚約をしたらどうかと神官長が提案していた。召喚された時は嬉しそうにしていたのに、今のテオドールは即答を避け、浄化の実績がないうちは婚約する気は無いといい、王妃もテオドールの意見に同意だと連絡まで届く。
ずっと隠れて離宮を確認に行っていた理由は、多分一目惚れしたセーレに会いたかったのだろう。レライエ殿下が恋人だと言っても認めたくない理由が、バカバカしいほど分かりやす過ぎる。
悪役王子の設定が微かに残っているからなのか? レライエが何か酷いことをしているのではと疑いをかけている。そんな、微妙な世界。
魔力過多のレライエに出来たセーレという魔力欠乏症の恋人。ディードもメイドもセーレを護っている。
遠目に見えたメイドは魔法師の様で、女性にしては背の高い中性的な容姿が決定的だった。隠れキャラまでがここにいる。
(攻略対象がなんで揃いも揃って、悪役王子の恋人の傍にいるんだよ)
大切に抱きかかえられたセーレが、テオドールの言葉を否定するためにレライエにキスをした。それを嬉しそうに受け入れ、人目もはばからず深くキスを返えす。
演技とは思えない甘く溶けた表情をみせた悪役の雰囲気が、神子が思い描いた世界じゃないことを確信させる。
俺が愛される世界を壊していくイレギュラーの存在。
レライエが大切そうにセーレを抱え直している。寄りかかるセーレの服を、メグが整えていく。魔力欠乏症なら、あの浄化はきつかったはずで歩けないのも頷ける。
だがそもそも魔力が欠乏してしまう状態の恋人に、無理をさせるのは腑に落ちない。何か見落としている気がする。攻略対象に大切にされる存在の意味。
「──そうか、全部お前のせいか?」
「神子様?」
「いえ。何でもありません。テオ様。私の力が上手く使えない理由が分かった気がします。神殿に戻りましょう。神官長とも話がしたいです。あの時の召喚の儀式のこと詳しく検証しないと」
そう言うとテオドールがハッとした顔になる。
「そう……か。気になることがあるな」
テオドールは、レライエの方を見てから隠すように抱かれているセーレに視線を送った。
「レライエ。休暇が済んだら王宮で会おう。セーレ無理をさせてすまない。だが、聞きたいことがある。いずれ、呼び出すことになる」
そう言って、向きを変え護衛と共にテオドールがこの場から離れていく。
「レライエ殿下。セーレ様。王都に戻ったらゆっくり話しましょうね」
ここは俺のための世界だから。イレギュラーを早く、排除し修正していかなければならない。
329
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる
千環
恋愛
第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。
なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を庇おうとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。
末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。
めちゅう
BL
末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。
お読みくださりありがとうございます。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる