上 下
44 / 62

43セーレの願いと不安。

しおりを挟む
 第一王子殿下に触れられたせいなのか、それとも接触して来た神子の脳力に影響されたのか、セラフィーレの体調が急激に悪くなってしまった。乱れた魔力でふらついた時に、隠しキャラが、自分から他の攻略対象者の前に颯爽と現れて助けると言う、最高にときめくシュチュエーションが起きる。
 ──何故か、セラフィーレに。

「メイシアは、メグだから、こっちの味方なのはわかるんだけど。なんで、第一王子殿下が僕を気にするんだろう?魔導書グリモアール守護者ガーディアンとは、バレてはないみたいだけど気を付けよう」


 とりあえず、一晩中レライエの魔力に包まれたおかげで、整えられたみたいで朝からめちゃくちゃ調子が良い。

「セーレ様」

 名を呼ばれたので、ひょっこり顔を出して見ると、男らしく節が目立つ様になった長い指が脇に差し込まれる。本から引っ張り出されて安定のいつもの場所に乗せられる。

 何か眩しい物でもあるのか、目を少し細め後、破顔してグッと引き寄せられた。

(──尊い)


「はあ。セーレ様の願いを叶えるためとはいえ……紹介したくない」
「でも、皆、僕のこと知っているよね?」
「──紹介したら、話しかけて来ます。近くにも寄って来ます」
「え、話たら駄目なの?」
「セーレ様は、俺のです」
「まあ、そうだよね。レイとしか契約していないから。でも、ダンスをメグに教わりたいし、皆で湖のそばに遊びにも行きたかったんだけど……駄目?」

 なぜか、鼻を抑えている。どうしたのか聞こうとする前に、何かぶつぶつ呟いて落ち着いたみたいだ。
 そこからは準備が早くて、一気に着替え、レライエが食事をとる。もちろん、定位置にスプーンが来るので、パクッと口にする。

 ちょっとずつ、毒見を繰り返す。
「問題ないよ」
 それを聞いたレライエが、スプーンをとトレーに置くと、セラフィーレの頬を撫でてくる。優しく触れられるので、最近のスキンシップに戸惑ってしまう。視線がまっすぐで、怖いくらいで、思わず名を呼んだ。

「レイ?──んっ」

 唇を甘噛みするような、絶妙に甘いキスが、レライエの魔力が帯びていて、その甘い魔力に逆に力が抜けそうになっていく。

   押し返して、なるべく怒った顔を作る。

「レイ……魔力を合わせるのはお願いします」
 神子とか第一王子殿下が来たせいで、不安になっているのかも知れなくて。あまり強く拒めない。レライエが不安定だと、悪役になってしまいそうで、怖いのだ。

   神子や強制力に飲み込まれませんように。せっかくここまで来たのだから、楽しい経験は、きっとレライエにもいい影響があるはずだ。
それに皆と話たいし外にも行きたい。

「はぁ。次は実体化の安定の為に魔力を合わせましょう」
「今日は絶対、外に行こうね」

 ようやく、叶うかも知れないと思うと、自然に笑顔になってしまう。

「魔導書は俺が身に付けます。それに、絶対離れないでください。また、神子や第一王子殿下が見てる可能性があります。透ける様なことがあれば、不味いのでメグにも護衛をしてもらいますから」


 人に見えるように、しておかなければならない。今後レライエが攻略されたり、第一王子殿下が介入してこないように、仲の良さをアピールする方がいいのかも知れない。

「仲の良さをアピールしたら、第一王子殿下も、もう僕が酷いことされてないってわかるんじゃないかな?」
「──いいですね。セーレ様は、ディードの遠縁で、隣国の貴族の身分を作っています」
「身分?」
「ええ。身分証が必要になるはずなので」
「いつの間に……すごいね」
「これで、隣国にも自由に行けますよ」

「自由……本当?」

 思わずレライエに抱きつきそうになる。適度な距離も必要だと、一旦止まったのに、近付くのをやめたのをすぐ気がついたのか、腕の中に閉じ込められてギュッとしてくる。

「絶対にあいつらから護りますから」

 そうだね。たとえ連れて行かれても、絶対戻るから。

 そんな気持ちでいっぱいになっていく。




しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

可愛い悪役令息(攻)はアリですか?~恥を知った元我儘令息は、超恥ずかしがり屋さんの陰キャイケメンに生まれ変わりました~

狼蝶
BL
――『恥を知れ!』 婚約者にそう言い放たれた瞬間に、前世の自分が超恥ずかしがり屋だった記憶を思い出した公爵家次男、リツカ・クラネット8歳。 小姓にはいびり倒したことで怯えられているし、実の弟からは馬鹿にされ見下される日々。婚約者には嫌われていて、専属家庭教師にも未来を諦められている。 おまけに自身の腹を摘まむと大量のお肉・・・。 「よしっ、ダイエットしよう!」と決意しても、人前でダイエットをするのが恥ずかしい! そんな『恥』を知った元悪役令息っぽい少年リツカが、彼を嫌っていた者たちを悩殺させてゆく(予定)のお話。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...