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40攻略対象①
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第一王子殿下との関係は、平行線のままだ。真面目な王子は、神殿の魔導書を理解しないと、王家に伝わる魔導書を使用するのは無理だと決めつけて来た。こんな分厚い本を、ニ回も読むよりは、一度で済ませたいのに時間の無駄過ぎて嫌になる。
「ちょっと、王宮から借りてきてくれれば済む話じゃん」
守護者付きの魔導書が、手に入れば読まなくていいのに。テオドールは一線を引いて距離を縮める気配がない。だいたい、悪役王子が絡んで来ない。
「くそ。お邪魔虫がいないから、嫉妬しないんだろうな。でも……何で?」
顔は二葉の顔だ。美人よりの可愛い顔で、この世界で神子として扱われる黒髪、黒目で召喚までして呼び出された存在。神官長は忙しく動いていて、神子の予言した場所に神官を浄化に向かわせている。ただ神子の魔法の能力の問題で、浄化同行は危険と判断されてしまった。テオドールと一緒に浄化に行くことを提案したが、王妃から許可が降りなかったそうだ。
成人祝賀会で、悪役王子に会ってから落ち着かない。ゲームの中では、心を開かず一匹狼みたいな悪役だったのに、ディードと現れた時は、まるで隠しキャラのような隣国の王子のような枠で身惚れた。招待した令息や令嬢が、レライエに注目している。だが、王妃派に遠慮してか、誰も声をかけることが出来ないようだ。傍にいるのは、ディードだけでこちらも攻略対象らしく、美形で視線が集まっている。
(せめてディードは、欲しいな。俺の護衛騎士に出来ないかな)
神子とのダンスなら断らないと思ったのに、全て召喚の時のテオドールとの会話のせいだった。
攻略対象者と上手くいかないから、守護者付き魔導書が手に入らないし、能力も上がらない。課金は出来ないままで、近くにいる攻略対象者では先に進めそうにない。
なら狙いを変えるべきではないかと思うようになった頃、テオドールが頻繁に護衛を振り切り外出しているのを知った。
誰に会っているのか気になって、追いかけると第二王子の離宮を密かに覗いている。切なそうな悔しそうな顔をする理由がわからない。
神官達に確認を取ると、離宮に美人なメイドがいるらしい。だがメイドには会うのはそんなに難しくはないみたいなので、彼女ではないようだ。ただ結界が強過ぎて、離宮内に影が入り込むのは難しいらしく、そもそも魔法が習えず苦労するはずなのに、魔力過多の悩みも聞こえてこない。
「最初から色々おかしいんだよ」
とりあえず日課の神殿で祈りを捧げた後、なんとなく遠回りをした先、王宮の片隅でテオドールとレライエが話をしていた。珍しいなと、思って隠れて様子を伺っていると、テオドールがレライエに食ってかかっている。
「あの人を閉じ込めているのか?」
「誰も閉じ込めていません」
「離宮から出入りしている人物で該当者がいない」
「──また、監視でも始めたのですか?第一王子殿下と関わらないと言ってるのに、そちらから絡んで来るのやめて下さい」
「そうじゃない」
「嫌な者は押し付けて、気になる者は、私から取り上げようと言うことですか?なんでも、持っているのに?こんな廃墟まで、私から奪いたいのですね」
「──違う。そうじゃないんだ。レライエから奪うつもりはない」
「第一王子殿下にも、神子様や神殿に関わる方々に、私から関わる気は一切ありません。私のことを大切にしてくれる人達だけを護り、静かに暮らせたらそれでいいのです。成人したら、王国から彼らと共に出ていきます。心配しなくても、殿下を兄と思った事などありませんから。失礼します」
「──レライエ」
レライエが、足早に去っていく。向こうにディードを待たせていたようで、そのまま振り返る事なく行ってしまった。
(なんだこれ)
離宮に誰かいるのか?それも、二人の王子が気にするくらいの存在。
もしかしたら、ゲームを邪魔をしている何かではないかと、二葉は調べることにした。
「ちょっと、王宮から借りてきてくれれば済む話じゃん」
守護者付きの魔導書が、手に入れば読まなくていいのに。テオドールは一線を引いて距離を縮める気配がない。だいたい、悪役王子が絡んで来ない。
「くそ。お邪魔虫がいないから、嫉妬しないんだろうな。でも……何で?」
顔は二葉の顔だ。美人よりの可愛い顔で、この世界で神子として扱われる黒髪、黒目で召喚までして呼び出された存在。神官長は忙しく動いていて、神子の予言した場所に神官を浄化に向かわせている。ただ神子の魔法の能力の問題で、浄化同行は危険と判断されてしまった。テオドールと一緒に浄化に行くことを提案したが、王妃から許可が降りなかったそうだ。
成人祝賀会で、悪役王子に会ってから落ち着かない。ゲームの中では、心を開かず一匹狼みたいな悪役だったのに、ディードと現れた時は、まるで隠しキャラのような隣国の王子のような枠で身惚れた。招待した令息や令嬢が、レライエに注目している。だが、王妃派に遠慮してか、誰も声をかけることが出来ないようだ。傍にいるのは、ディードだけでこちらも攻略対象らしく、美形で視線が集まっている。
(せめてディードは、欲しいな。俺の護衛騎士に出来ないかな)
神子とのダンスなら断らないと思ったのに、全て召喚の時のテオドールとの会話のせいだった。
攻略対象者と上手くいかないから、守護者付き魔導書が手に入らないし、能力も上がらない。課金は出来ないままで、近くにいる攻略対象者では先に進めそうにない。
なら狙いを変えるべきではないかと思うようになった頃、テオドールが頻繁に護衛を振り切り外出しているのを知った。
誰に会っているのか気になって、追いかけると第二王子の離宮を密かに覗いている。切なそうな悔しそうな顔をする理由がわからない。
神官達に確認を取ると、離宮に美人なメイドがいるらしい。だがメイドには会うのはそんなに難しくはないみたいなので、彼女ではないようだ。ただ結界が強過ぎて、離宮内に影が入り込むのは難しいらしく、そもそも魔法が習えず苦労するはずなのに、魔力過多の悩みも聞こえてこない。
「最初から色々おかしいんだよ」
とりあえず日課の神殿で祈りを捧げた後、なんとなく遠回りをした先、王宮の片隅でテオドールとレライエが話をしていた。珍しいなと、思って隠れて様子を伺っていると、テオドールがレライエに食ってかかっている。
「あの人を閉じ込めているのか?」
「誰も閉じ込めていません」
「離宮から出入りしている人物で該当者がいない」
「──また、監視でも始めたのですか?第一王子殿下と関わらないと言ってるのに、そちらから絡んで来るのやめて下さい」
「そうじゃない」
「嫌な者は押し付けて、気になる者は、私から取り上げようと言うことですか?なんでも、持っているのに?こんな廃墟まで、私から奪いたいのですね」
「──違う。そうじゃないんだ。レライエから奪うつもりはない」
「第一王子殿下にも、神子様や神殿に関わる方々に、私から関わる気は一切ありません。私のことを大切にしてくれる人達だけを護り、静かに暮らせたらそれでいいのです。成人したら、王国から彼らと共に出ていきます。心配しなくても、殿下を兄と思った事などありませんから。失礼します」
「──レライエ」
レライエが、足早に去っていく。向こうにディードを待たせていたようで、そのまま振り返る事なく行ってしまった。
(なんだこれ)
離宮に誰かいるのか?それも、二人の王子が気にするくらいの存在。
もしかしたら、ゲームを邪魔をしている何かではないかと、二葉は調べることにした。
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