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38隠れていないメイシア①
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金髪に青い瞳から、第一王子殿下だと分かった。神子と一緒になって、レライエを追いかけて来たのかも知れない。レライエの邪魔をしに来たのなら許さない。
「今、神子様がレイと会っていると思いますが?陰でこそこそしているのは、第一王子殿下で間違いありませんか?」
「陰で、こそこそしているのは、レライエだろう?一体君は誰何だ。離宮に閉じ込められているのではないか?あれ以来、姿を見せなかった。酷いことをされているのなら、ここから助けてやる。神殿に頼んで保護してもいい」
酷いこと?レライエが、セラフィーレに酷いことなんて一度もしていない。神殿側が、星七が召喚に巻き込まれた時に、消滅させる為に攻撃してきたことを覚えている。その中に第一王子殿下もいた。
「仮にも血の繋がりのある弟殿下を、悪者にする気ですか?」
「違う。君が外に出てくることがなかったから、レライエに聞いてもそんな人はいないと言っていたんだ。神子様が、別邸に行った時なら警護も結界も緩むだろうと、レライエを引き止めているうちに、こっそり確認するように言ってくれたんだ」
手を離してくれる様子は無い。ここで第一王子を攻撃すれば、レライエをさらに悪者にしてしまう。このまま、連れ出され時間切れになれば、神殿に連れて行かれる可能性もある。
どうしたらいいのか?神子に会うかも知れないけど、レライエの側に行く方が安全かも知れない。
(ごめん。レイ……覗き魔の目的が僕だったなんて)
「僕は、来年のレライエ様の成人祝賀会の時に、ダンスパートナーを頼まれています。マナーとダンスを学んでいる最中なので、離宮から出たくないだけです。こうして、マナー訓練で疲れた僕の為に、休暇を取ってくれただけなのに。第一王子殿下が見た僕は、辛そうでしたか?」
「だが……離宮から出さないなんて」
「分からないのですか?誰のせいで、行動制限が必要なのか?王妃様に第一王子殿下に関わるなと、レイはずっと言われて来たのですよ。その意味が分からないとでも?まあ、祝賀会さえレイは、開いてもらえないかも知れないのに、僕を紹介して回れると思っているのですか?」
「それは……」
「手を離して下さい。これでも、攻撃魔法は得意なんです。レイのことが嫌なら、僕は簡単に結界を破って出ていけます。だってこの結界を作っているのは僕なんですから。どうぞ神子様とお帰り下さい」
第一王子殿下が手を離してくれたので、ひとまず室内に戻ることにする。変に王子の魔力に関わったせいか、体がおかしい。少し手先に震えが出ている。単に怖かっただけかも知れないけど、早くレイの所に戻りたい。
不味いかも知れない、早く扉に触れて中へ戻りたい。ふらつく足に力を込めて、扉に手を伸ばそうとした時、体から力が抜けていく。第一王子の前で体が透ける訳にいかない。
「レイ……」
突然、体が地面から浮き上がって、誰かの腕の中に収まっている。
「え?」
執事服のような黒服を着た人が、ニコッといたずらそう笑った。
「セーレ様。レライエ殿下が心配してますので、部屋に戻りましょう」
「メ……メイシア」
てっきりメグはメイド服で、神子の対応をレライエやディードとしていると思っていた。今回、馬車の護衛の為に馬に単独で騎乗し、女装をやめていたのを見た時、隠しキャラの美形度に興奮したのだ。
女装に違和感がないほどのキャラクター、つまりメイシアは、美人系の攻略対象だ。
「お前は、誰だ?」
「不審者に名乗る名前などありません。それとも、貴方も正式に名乗りますか?となると、正規の手続きをとり、警備隊に差し出しますが。こんな夜に、先触れなくこられるのは如何なものでしょうか?私どもも、こちらに着いたばかりで、おもてなしの準備は無理です」
第一王子殿下が、黙ってしまう。
「神子様は魔法どころか、こちらに来て常識さえ身についていないようです。婚約するのなら、きちんと教育した方がいいですね。あ、そう言ううわさを王都で聞きました」
「そう……なんだ。第一王子殿下と神子様が、いよいよ婚姻するんだね。おめでとうございます。それでは、今回の不法侵入は、内緒にしておきますので神子様とお引き取り下さい。メグ……レイの所に早く連れて行って」
「はい」
ようやく、テラスから部屋に戻ることが出来た。ソファに降ろされて指輪に触れようとした時、慌てて戻って来たレライエに抱きしめられた。
「今、神子様がレイと会っていると思いますが?陰でこそこそしているのは、第一王子殿下で間違いありませんか?」
「陰で、こそこそしているのは、レライエだろう?一体君は誰何だ。離宮に閉じ込められているのではないか?あれ以来、姿を見せなかった。酷いことをされているのなら、ここから助けてやる。神殿に頼んで保護してもいい」
酷いこと?レライエが、セラフィーレに酷いことなんて一度もしていない。神殿側が、星七が召喚に巻き込まれた時に、消滅させる為に攻撃してきたことを覚えている。その中に第一王子殿下もいた。
「仮にも血の繋がりのある弟殿下を、悪者にする気ですか?」
「違う。君が外に出てくることがなかったから、レライエに聞いてもそんな人はいないと言っていたんだ。神子様が、別邸に行った時なら警護も結界も緩むだろうと、レライエを引き止めているうちに、こっそり確認するように言ってくれたんだ」
手を離してくれる様子は無い。ここで第一王子を攻撃すれば、レライエをさらに悪者にしてしまう。このまま、連れ出され時間切れになれば、神殿に連れて行かれる可能性もある。
どうしたらいいのか?神子に会うかも知れないけど、レライエの側に行く方が安全かも知れない。
(ごめん。レイ……覗き魔の目的が僕だったなんて)
「僕は、来年のレライエ様の成人祝賀会の時に、ダンスパートナーを頼まれています。マナーとダンスを学んでいる最中なので、離宮から出たくないだけです。こうして、マナー訓練で疲れた僕の為に、休暇を取ってくれただけなのに。第一王子殿下が見た僕は、辛そうでしたか?」
「だが……離宮から出さないなんて」
「分からないのですか?誰のせいで、行動制限が必要なのか?王妃様に第一王子殿下に関わるなと、レイはずっと言われて来たのですよ。その意味が分からないとでも?まあ、祝賀会さえレイは、開いてもらえないかも知れないのに、僕を紹介して回れると思っているのですか?」
「それは……」
「手を離して下さい。これでも、攻撃魔法は得意なんです。レイのことが嫌なら、僕は簡単に結界を破って出ていけます。だってこの結界を作っているのは僕なんですから。どうぞ神子様とお帰り下さい」
第一王子殿下が手を離してくれたので、ひとまず室内に戻ることにする。変に王子の魔力に関わったせいか、体がおかしい。少し手先に震えが出ている。単に怖かっただけかも知れないけど、早くレイの所に戻りたい。
不味いかも知れない、早く扉に触れて中へ戻りたい。ふらつく足に力を込めて、扉に手を伸ばそうとした時、体から力が抜けていく。第一王子の前で体が透ける訳にいかない。
「レイ……」
突然、体が地面から浮き上がって、誰かの腕の中に収まっている。
「え?」
執事服のような黒服を着た人が、ニコッといたずらそう笑った。
「セーレ様。レライエ殿下が心配してますので、部屋に戻りましょう」
「メ……メイシア」
てっきりメグはメイド服で、神子の対応をレライエやディードとしていると思っていた。今回、馬車の護衛の為に馬に単独で騎乗し、女装をやめていたのを見た時、隠しキャラの美形度に興奮したのだ。
女装に違和感がないほどのキャラクター、つまりメイシアは、美人系の攻略対象だ。
「お前は、誰だ?」
「不審者に名乗る名前などありません。それとも、貴方も正式に名乗りますか?となると、正規の手続きをとり、警備隊に差し出しますが。こんな夜に、先触れなくこられるのは如何なものでしょうか?私どもも、こちらに着いたばかりで、おもてなしの準備は無理です」
第一王子殿下が、黙ってしまう。
「神子様は魔法どころか、こちらに来て常識さえ身についていないようです。婚約するのなら、きちんと教育した方がいいですね。あ、そう言ううわさを王都で聞きました」
「そう……なんだ。第一王子殿下と神子様が、いよいよ婚姻するんだね。おめでとうございます。それでは、今回の不法侵入は、内緒にしておきますので神子様とお引き取り下さい。メグ……レイの所に早く連れて行って」
「はい」
ようやく、テラスから部屋に戻ることが出来た。ソファに降ろされて指輪に触れようとした時、慌てて戻って来たレライエに抱きしめられた。
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