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36それでも。
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「今が駄目だと言うのなら一年後、俺の気持ちが変わらないことを証明します」
「いや、そもそも、僕は人じゃ……ないから」
推しの傍には、ずっといたい。でも、レライエの世界を狭めていないだろうか?結界を張り、外敵を排除して来た。離宮は、レライエにとっての箱庭なのだ。外に出ても大丈夫になるまで、愛情をかけてきたから……誤解を生んでしまったのかも知れない。
悪役王子になって破滅して欲しくなかったから、レライエが傷つくことなく、幸せにする未来を願っていただけで、そこに恋愛感情は無かったはずだった。
足の不自由だった星七にとって、誰かと付き合うことは、世話をしてもらうことに繋がってしまう。相手の自由を奪ってしまうから、そんな自分が嫌で一人で出来る様になりたいといつも願っていた。だからこそ、教わる機会を奪われていくレライエを、助けたくてここに来たんだ。
「──人と違うから?駄目なんですか?」
「レイは、この国の第二王子で」
「名ばかりの厄介者の王子で、命を狙われて来たのに?この国には正統な血筋の王子がいるので、俺はこの国に必要じゃありません。だから、スローライフを教えてくれるって言いませんでしたか? 王妃派や神殿の人間から、一生護ってくれるのでは?成人祝賀会は、一緒に出てくれる為にずっと練習して来たのはどうして?」
いつもの、抱きかかえられた状態から逃げる隙はない。少しだけ怒りを含ませて、それでも抑えて思いを言葉にしてくれる。どうして、ここまで優しいのだろう。
あの時、恋人……せめて従者のような立場を望めば良かったのだろうか?それだと、力が足りなくて、足枷になったかも知れない。
(ただ傍にいて、護りたかった。それをナキア様は叶えてくれた。だから、この姿は間違いじゃないんだ)
「レイのことが……大切だよ。だから、役に立ちたかった」
それは本心で、嘘じゃない。だから余計に苦しい。
レライエの手が、左手の指を優しく撫でたあと、指を絡めてくるから変に緊張してしまう。
「いろんな魔法を調べて、実体化の練習をした理由の中に俺の存在はありませんか? こうして旅行にきて、セーレ様の隣にいる相手に俺の存在は浮かびませんか?」
実体化が人と全く同じなのか、正直分からないのだ。幽霊のように透けていた体は、人と同じではないはずだ。それでもレライエの魔力が溶け込むと、体温を感じることも、彼自体に触れることが出来た。この体に心臓があるのかさえ分からないのに、胸が苦しくなったり、頬が熱を持って落ち着かなくなったりと、心が追いつかない。
「レイの隣に……ずっといたい。でも」
「今は、それだけでいいです。後一年かけて口説き落とします」
「人になれないんだよ?」
「魔導書をもっと読み込んで調べましょう。俺は成人したら、セーレ様と一緒にこの国を出たいんです」
こんなに、真っ直ぐに言われたら駄目だ。
思わず手をレライエの首に巻きつけて、顔を引き寄せると触れるだけのキスをする。
「セーレ……様?」
「一年……本当に僕でいいか、考える時間をあげるから。でも、キスまでだからね。レイはまだ子供なんだから。僕が一緒にいて、頼る様に刷り込んだだけかも知れない。僕に騙されてないかちゃんと考えて欲しい」
急に倒され視界が変わってしまう。レライエの背には天井が見える。押し倒されたみたいだ。
「だから、まだ無理だから。冷静になって!レイ落ち着いて!」
「キスならいいんですよね? 先ほど約束しましたから」
「ね、ねぇ。今日は、お披露目じゃなかった?皆待ってるはずだよ」
「少しくらい、待たせて構いません」
「待たせてたく……ん」
レライエの唇が、言葉を飲み込んでしまう。
何度か角度を変えて唇が重なって、だけど全然嫌じゃないのが困る。でも、待たせているのが気になって、落ち着かない。
ドアを叩く音が聞こえた。レライエの顔が離れ胸に閉じ込められる。
「こんな可愛い顔、誰にも見せられない。顔合わせは明日にしましょう」
腕から、優しく解放されると、レライエはドアの方に向かった。
何かを話しているみたいで、相手はセバスみたいだった。
ただ、急に顔つきが変わったのが分かる。
(何かあったのかな?)
魔法を詠唱すると、その理由が分かってしまう。
(嘘……)
「セーレ様は、ここから絶対に出ないでくださいね」
「一緒に。魔導書ごと連れて行って」
「相手は、神子です。結界を強化しているこの部屋が一番安全です」
そう言って、レライエは出て行った。
「いや、そもそも、僕は人じゃ……ないから」
推しの傍には、ずっといたい。でも、レライエの世界を狭めていないだろうか?結界を張り、外敵を排除して来た。離宮は、レライエにとっての箱庭なのだ。外に出ても大丈夫になるまで、愛情をかけてきたから……誤解を生んでしまったのかも知れない。
悪役王子になって破滅して欲しくなかったから、レライエが傷つくことなく、幸せにする未来を願っていただけで、そこに恋愛感情は無かったはずだった。
足の不自由だった星七にとって、誰かと付き合うことは、世話をしてもらうことに繋がってしまう。相手の自由を奪ってしまうから、そんな自分が嫌で一人で出来る様になりたいといつも願っていた。だからこそ、教わる機会を奪われていくレライエを、助けたくてここに来たんだ。
「──人と違うから?駄目なんですか?」
「レイは、この国の第二王子で」
「名ばかりの厄介者の王子で、命を狙われて来たのに?この国には正統な血筋の王子がいるので、俺はこの国に必要じゃありません。だから、スローライフを教えてくれるって言いませんでしたか? 王妃派や神殿の人間から、一生護ってくれるのでは?成人祝賀会は、一緒に出てくれる為にずっと練習して来たのはどうして?」
いつもの、抱きかかえられた状態から逃げる隙はない。少しだけ怒りを含ませて、それでも抑えて思いを言葉にしてくれる。どうして、ここまで優しいのだろう。
あの時、恋人……せめて従者のような立場を望めば良かったのだろうか?それだと、力が足りなくて、足枷になったかも知れない。
(ただ傍にいて、護りたかった。それをナキア様は叶えてくれた。だから、この姿は間違いじゃないんだ)
「レイのことが……大切だよ。だから、役に立ちたかった」
それは本心で、嘘じゃない。だから余計に苦しい。
レライエの手が、左手の指を優しく撫でたあと、指を絡めてくるから変に緊張してしまう。
「いろんな魔法を調べて、実体化の練習をした理由の中に俺の存在はありませんか? こうして旅行にきて、セーレ様の隣にいる相手に俺の存在は浮かびませんか?」
実体化が人と全く同じなのか、正直分からないのだ。幽霊のように透けていた体は、人と同じではないはずだ。それでもレライエの魔力が溶け込むと、体温を感じることも、彼自体に触れることが出来た。この体に心臓があるのかさえ分からないのに、胸が苦しくなったり、頬が熱を持って落ち着かなくなったりと、心が追いつかない。
「レイの隣に……ずっといたい。でも」
「今は、それだけでいいです。後一年かけて口説き落とします」
「人になれないんだよ?」
「魔導書をもっと読み込んで調べましょう。俺は成人したら、セーレ様と一緒にこの国を出たいんです」
こんなに、真っ直ぐに言われたら駄目だ。
思わず手をレライエの首に巻きつけて、顔を引き寄せると触れるだけのキスをする。
「セーレ……様?」
「一年……本当に僕でいいか、考える時間をあげるから。でも、キスまでだからね。レイはまだ子供なんだから。僕が一緒にいて、頼る様に刷り込んだだけかも知れない。僕に騙されてないかちゃんと考えて欲しい」
急に倒され視界が変わってしまう。レライエの背には天井が見える。押し倒されたみたいだ。
「だから、まだ無理だから。冷静になって!レイ落ち着いて!」
「キスならいいんですよね? 先ほど約束しましたから」
「ね、ねぇ。今日は、お披露目じゃなかった?皆待ってるはずだよ」
「少しくらい、待たせて構いません」
「待たせてたく……ん」
レライエの唇が、言葉を飲み込んでしまう。
何度か角度を変えて唇が重なって、だけど全然嫌じゃないのが困る。でも、待たせているのが気になって、落ち着かない。
ドアを叩く音が聞こえた。レライエの顔が離れ胸に閉じ込められる。
「こんな可愛い顔、誰にも見せられない。顔合わせは明日にしましょう」
腕から、優しく解放されると、レライエはドアの方に向かった。
何かを話しているみたいで、相手はセバスみたいだった。
ただ、急に顔つきが変わったのが分かる。
(何かあったのかな?)
魔法を詠唱すると、その理由が分かってしまう。
(嘘……)
「セーレ様は、ここから絶対に出ないでくださいね」
「一緒に。魔導書ごと連れて行って」
「相手は、神子です。結界を強化しているこの部屋が一番安全です」
そう言って、レライエは出て行った。
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