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34別邸②
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少し日暮れに差し掛かり、肌寒いように感じてしまう。レライエに触れて、体温を感じるせいかもしれない。
皆が移動の後の片付けが終わってから、セバスとメグにも紹介してくれるらしい。それでも、セラフィーレの気持ちを優先し、心の準備が出来るまでは無理しないでと、レライエは笑う。
(レイは、受け入れた人に対して、本当に甘過ぎる。きっと僕じゃなくても……)
なぜか胸が痛んだ。
レライエとは、お互いに一緒にいるのが当たり前になって、大切な家族になれていると思う。それにセバスとメグに、内緒にしたままは嫌なんだ。ディードと同じで、レライエを支える大切な人達だから。
ただ正直、不安がない訳ではない。特にメグことメイシアは攻略対象者だと思う。それも、難易度の高い隠しキャラだ。ゲームの中なら課金アイテムを利用すれば、簡単に仲良くなっていける。アイテムは、たしか──
(好感度上げの、特別な……お菓子?)
何かを混ぜて作るのは知ってるけど、何かは知らないので答えは分からない。神子が、メグに接触するだろうか?それとも、女装男子でバーグラーの可能性があるメグが、このゲームを引っ掻き回すかも知れない。
アイテムのお菓子があったとしても、セラフィーレが、レライエの口にするものは、全部毒見をするから大丈夫。とにかく、レライエが巻き込まれないといい。
一番怖いのはゲームの強制力。この世界を護るために、悪役王子が必要になる時が来るかも知れない。
ただレライエと双子のメイシアを護るために、立場を入れ替えたマーガレットが、もしも……メイシアの為だけに起こした行動だったなら、メイシアは悪役王子を憎んでいたりするだろうか?
どうなるのか、本当に分からない。
(ナキア様は、レライエを護ること……反対しなかったよね?)
いつでも、レライエを護る──それだけは譲らない。主人公の神子がレライエを敵と認識するのなら、一緒に立ち向かう。
攻略対象として、レライエの前に現れたら……?
「セーレ様?」
低くなった声が耳元で聞こえる。そんな近くで名前を呼ばれるのは、心臓に悪い。
「は……ひ?」
「考え事ですか?話を聞いてなかった?」
「え。あれ?」
いつのまにか、運ばれてきたのは優しい色合いの部屋だった。カフェオレっぽい色味のメインカーテンも、真っ白のレースのカーテンも、セラフィーレの好みだ。
優しい色合いの淡い緑のジュータンも、どこか落ち着く感じがする。家具もレライエの好みとは少し違うと思う。木目調の可愛らしいアンティークの家具。小物に、観葉植物みたいなものまで配置されている。
「この部屋……?」
「セーレ様の雰囲気に似合いそうです。俺が思うセーレ様のイメージを、メグに聞いてもらったんです。ここにもテラスが……あって。あ……」
「あ……?」
「いえ。先に結界をかけましょう」
セラフィーレは、優しくソファに降ろされて、レライエはジュータンの上に片膝を突いた。
青いダイヤモンドのついた指輪に、レライエがキスを落とす。その手を大切そうに大きな手が包みこんだ。
(何この人!!いや、レイだけど)
「二人で結界の魔法をかけましょう。その方が複雑になります。一度かけてしまえば、効果は続きますから」
まだ、結界にヒビが入ったことを気にしてくれているのだ。
「うん。心配かけてごめんね」
「いいえ。俺が頼りなさ過ぎたんです。お願いですから、少しで良いので俺を頼って下さい」
「少しって……結構頼ってるよ?」
セラフィーレの手を包んでいた手が、今度はお互いの指を絡めてつなぐ。レライエとおでこを合わせるようにして、結界の魔法を詠唱した。ゆっくりと水面に雫が落ちていくように、魔力の波紋が広がって行き別邸から庭へと届いているはずだ。
魔法を使った軽い脱力感を感じ、セラフィーレはレライエの青をまとっているずだ。でも、継続的に魔力は流す必要がないので、そこまで疲れたりしない。
「この指輪のおかげで、皆を楽に護れるね。レイありがとう。ふふ。大好き」
優しい顔から、少し考えるような困った顔になる。
「レイ?どうしたの?」
「たまには、我儘をいってもいいですか?」
「レイの我儘?いいよ。いつも助けてもらってるから。僕に出来ることなら」
「セーレ様しか出来ないこと」
「うん。何?」
「ご褒美のキスを下さい」
「ああ、ご褒美のキス──って、キス?え、誰と誰がするキス?」
「俺とセーレ様です。だめですか?俺じゃ嫌?」
「だめとか、嫌とか……そんなんじゃなくて」
「そんなんじゃなくて?」
「なんで、キスがご褒美なのか……理由が分からない」
「そんなの、キスしたら分かると思います。だから……いいですか?」
そう言って唇が重なった。
皆が移動の後の片付けが終わってから、セバスとメグにも紹介してくれるらしい。それでも、セラフィーレの気持ちを優先し、心の準備が出来るまでは無理しないでと、レライエは笑う。
(レイは、受け入れた人に対して、本当に甘過ぎる。きっと僕じゃなくても……)
なぜか胸が痛んだ。
レライエとは、お互いに一緒にいるのが当たり前になって、大切な家族になれていると思う。それにセバスとメグに、内緒にしたままは嫌なんだ。ディードと同じで、レライエを支える大切な人達だから。
ただ正直、不安がない訳ではない。特にメグことメイシアは攻略対象者だと思う。それも、難易度の高い隠しキャラだ。ゲームの中なら課金アイテムを利用すれば、簡単に仲良くなっていける。アイテムは、たしか──
(好感度上げの、特別な……お菓子?)
何かを混ぜて作るのは知ってるけど、何かは知らないので答えは分からない。神子が、メグに接触するだろうか?それとも、女装男子でバーグラーの可能性があるメグが、このゲームを引っ掻き回すかも知れない。
アイテムのお菓子があったとしても、セラフィーレが、レライエの口にするものは、全部毒見をするから大丈夫。とにかく、レライエが巻き込まれないといい。
一番怖いのはゲームの強制力。この世界を護るために、悪役王子が必要になる時が来るかも知れない。
ただレライエと双子のメイシアを護るために、立場を入れ替えたマーガレットが、もしも……メイシアの為だけに起こした行動だったなら、メイシアは悪役王子を憎んでいたりするだろうか?
どうなるのか、本当に分からない。
(ナキア様は、レライエを護ること……反対しなかったよね?)
いつでも、レライエを護る──それだけは譲らない。主人公の神子がレライエを敵と認識するのなら、一緒に立ち向かう。
攻略対象として、レライエの前に現れたら……?
「セーレ様?」
低くなった声が耳元で聞こえる。そんな近くで名前を呼ばれるのは、心臓に悪い。
「は……ひ?」
「考え事ですか?話を聞いてなかった?」
「え。あれ?」
いつのまにか、運ばれてきたのは優しい色合いの部屋だった。カフェオレっぽい色味のメインカーテンも、真っ白のレースのカーテンも、セラフィーレの好みだ。
優しい色合いの淡い緑のジュータンも、どこか落ち着く感じがする。家具もレライエの好みとは少し違うと思う。木目調の可愛らしいアンティークの家具。小物に、観葉植物みたいなものまで配置されている。
「この部屋……?」
「セーレ様の雰囲気に似合いそうです。俺が思うセーレ様のイメージを、メグに聞いてもらったんです。ここにもテラスが……あって。あ……」
「あ……?」
「いえ。先に結界をかけましょう」
セラフィーレは、優しくソファに降ろされて、レライエはジュータンの上に片膝を突いた。
青いダイヤモンドのついた指輪に、レライエがキスを落とす。その手を大切そうに大きな手が包みこんだ。
(何この人!!いや、レイだけど)
「二人で結界の魔法をかけましょう。その方が複雑になります。一度かけてしまえば、効果は続きますから」
まだ、結界にヒビが入ったことを気にしてくれているのだ。
「うん。心配かけてごめんね」
「いいえ。俺が頼りなさ過ぎたんです。お願いですから、少しで良いので俺を頼って下さい」
「少しって……結構頼ってるよ?」
セラフィーレの手を包んでいた手が、今度はお互いの指を絡めてつなぐ。レライエとおでこを合わせるようにして、結界の魔法を詠唱した。ゆっくりと水面に雫が落ちていくように、魔力の波紋が広がって行き別邸から庭へと届いているはずだ。
魔法を使った軽い脱力感を感じ、セラフィーレはレライエの青をまとっているずだ。でも、継続的に魔力は流す必要がないので、そこまで疲れたりしない。
「この指輪のおかげで、皆を楽に護れるね。レイありがとう。ふふ。大好き」
優しい顔から、少し考えるような困った顔になる。
「レイ?どうしたの?」
「たまには、我儘をいってもいいですか?」
「レイの我儘?いいよ。いつも助けてもらってるから。僕に出来ることなら」
「セーレ様しか出来ないこと」
「うん。何?」
「ご褒美のキスを下さい」
「ああ、ご褒美のキス──って、キス?え、誰と誰がするキス?」
「俺とセーレ様です。だめですか?俺じゃ嫌?」
「だめとか、嫌とか……そんなんじゃなくて」
「そんなんじゃなくて?」
「なんで、キスがご褒美なのか……理由が分からない」
「そんなの、キスしたら分かると思います。だから……いいですか?」
そう言って唇が重なった。
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