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46イベント発生①

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「他に被害が出ない様に、結界は湖周辺に変える。きっと、油断はしないで」
 セラフィーレは、実体化を解いて銀糸の髪、紫色の瞳に一度戻った。レライエと指を絡め詠唱する。レライエの色を纏い、隣に立っている。

 ディードとメグも傍にいる。

 湖に出る魔物……神子が水から出てきた魔物を攻略対象者と退治をすると、なにかをドロップする。ここに神子はいないのに?僕以外は攻略対象者だ。
 この地に神子も第一王子も来ているからだろうか?あれから彼らはどうしただろう?もう、王宮へ帰ったかも知れない。

 レライエと皆を護らないといけない。神子がいないのだから、浄化出来るか分からないけれどやるしかない。

「セーレ様、俺にしがみついていて。魔法だけじゃなく、剣も使うので」
「背の方でいい?魔法は効果のあるものを教える」
 レライエ背後につく。他の人に見えるとしたら背後霊みたいな存在だと思う。

 そして、湖の表面に影が近付いてきた。水面が盛り上がり、バシャーーーーンと水飛沫が上がる。

 漆黒の鱗に紅い瞳、コウモリのような翼が背中にある。大きさは自動車位で……竜みたいだ。でも翼がある竜が水中から現れるだろうか?
 ──様子がおかしい。

 レライエもディードも剣をすでに構えている。メグはメイド服のスカートをたくし上げた。太もものホルスターベルトから杖の方を抜き取る。手に持つと詠唱し、小さな棒は、細長杖ロッドに変わり、メグの身長よりも長くなっている。皆、臨戦体制だった。

『──駄目!待って!!』
「セーレ様?ですが!」

『苦しそうなんだ……。僕に行かせて。レイの魔力を僕に少し頂戴』
「──皆。少しだけ、後ろに下がってくれ」

 レライエの背から降りて、指を絡めて詠唱をすると皆に見えるようになった。そして竜の方へ近付いていく。レライエが後ろからついて来る。

 その時突然、結界が揺らいだ。

「レライエ殿下!!危ないです。下がって下さい!!」

 神子が走って来た。その後ろに、第一王子殿下と護衛が何人か追って来ている。「神子様ーー」と呼ばれているのに止まる事なく、こちらに向かって来ている。

「レイ。あの人達を止めるから、魔力を貸して」
 レライエと繋いだ指に力をこめて、透明の壁を作るイメージで魔法をつかう。メグが、さらに何か魔法を足してくれているので、足止めが出来そうだ。ディードは、セラフィーレとその壁の間に立ち、どちらのフォローも出来るようにしてくれている。

「ありがとう。ディ」
 にこりと、ディが笑った。

 神子が壁にビタンっとぶつかり、後ろにひっくり返る。第一王子殿下は、壁に気付き何かを言っている。
 集中出来ないので、すでに声を遮断している。

「レイ……行こう」
 恋人繋ぎでそのまま、湖の傍にいく。
「水の竜にしては……見た事がありません」
「水竜じゃない。翼竜だ。穢れて、呪われてる」
「セーレ様に危険があるのなら、俺が!」
「助ける。この子は助ける」

 翼竜にはない鱗が禍々しい。どうして、こんな姿になってしまったの? 仲間とは、違う姿はどんなに辛かっただろう。
 威嚇さえも、泣き叫んで仲間を呼んでいる様だった。
「レイにも、分かる?この子は泣いてる」
「痛々しい、ですね」
 ──なぜか、詠唱する魔法が頭に浮かぶ。ああ、セラフィーレは魔導書グリモアール守護者ガーディアンだ。

 皆を護る。その為の存在だから。君も助けて護りたい。

 水中から、勢いよく飛び出して来た竜に向かって片手をかざして、詠唱する。

 助けてあげるから。願いを込めて歌う様に詠唱に魔力を込めていく。歌は淡い聖銀の光をリボンのように螺旋を描く。翼竜に巻き付いて、レライエが補うよう魔力を流して来た。

 光のリボンが切れると、黒い鱗が地面に落ちては消滅していく。

 一皮剥けたように、綺麗な灰銀の滑らかな皮膚に変わり、紅く鋭い眼光は、今は愛くるしい紫色の瞳になった。その可愛いくりくりの瞳が、セラフィーレを見つめている。

「──可愛い」

(ああ、でもこんなに大きいと怖がられてしまうかな?)

「セーレ様?」
「小さくなってくれれば、連れて帰れるのにって思って」

 その一言で、翼竜はスゥ───ッと縮んでしまった。

 セラフィーレでも抱えられるそんな、猫位のサイズだ。

「君は、僕といたいの?」
 スリスリと甘えてくる。
「──連れて帰りますか?」
「いいの?」

 何かをドロップするのではなく、翼竜をゲットしてしまった。







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