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32セーレ様と。
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セーレに押し倒されそのまま様子を伺っていると、一気に赤く染まる頬を隠したいのか、そのままペタンとレライエに覆い被さってきた。何かブツブツ言っている。
(この照れ顔が、可愛くて仕方ないんだけど)
このまま、受け止めていたいのでそっと背中をさすると、ゆっくりと顔を上げたセーレが唇を小さく動かし何か呟いている。
美しい人だけど、仕草は幼くて可愛くて愛おしい。
「セーレ様は、本当に可愛いですね」
また、真っ赤になったかと思ったら……
「ちょっと、魔導書に戻るから!デ、デートの準備をしてくる!」
慌てて、その手を掴むと驚いて首を傾げている。
「レイ?デートに行くんだよね?え、あれ……勘違いだった?あ、待ってごめん。もしかして冗談だった?」
赤くなったり、青くなったり、揶揄うつもりはなかったのに困らせてしまった。
「勘違いじゃないです。ただ準備はしてあるので、セーレ様は魔導書と一緒にいつも通り俺が抱えていくだけです。馬車の準備をセバスがしてくれていて、もうすぐ呼ばれると思います。ディードとメグは馬でついて来ますので……まあ、身内で別邸に行く感じです。すみません。名ばかりの王子なので、別邸と言うほど広くもありません。気に入ってもらえるといいのですが……」
「行く!皆で行けるのってきっと楽しいよね」
「皆に姿を見せるかどうかは、無理しなくても大丈夫ですから。今回は、セーレ様が試したいことをしましょう。ここの結界は消えないので、覗き魔が留守中に来ても平気でしょうから」
「覗き魔……来るかな?」
「離宮の何を知りたいのでしょうね」
手を伸ばし、抱える様に腕の中に閉じ込めると、嬉しそうに笑ってデートでやりたい事をポツリポツリと教えてくれる。
デートの意味を分かっていて、こんなに嬉しそうにしてくれているのなら、このまま独占していたい。
時々思うのは、セーレは精霊ではない。それに生まれた時から守護者だった訳でもないようだ。足が悪かったと言うのは、ずっと昔に人だったのだろうか?魔法で移動することよりも、自分の足で走ってみたいと嬉しそうにしている。
一体セーレは何者なのだろう?本当にレライエに会いに来てくれたのではないのか?と自惚れてしまいそうになる。
(絶対に奪われたりしない。テオドールにも、神子にも、神官長など信じられる訳がない)
あの日、テラスにいたのはセーレだ。結界にヒビが入ったのを知ったのは、実体化を試した後だった。ヒビの事を知らずに、テラスに連れ出してしまったことが悔やまれてならない。その後から同じ場所を見に来るのなら、見られた可能性が高い。多分透けてはいなかったはずだ。だからこそ人と認識して、気になって仕方がないのだろう。こんなに美しい人を見て魅了された可能性が高い。
セバスに呼ばれ、セラフィーレを抱えて馬車へと移動する。覚えた魔法をかけて、馬車の外装を変える。
ディードもメグも王家の専属護衛には見えないように、ギルドからの派遣護衛騎士に扮している。メグに関して言えば女装をしていない。
(メグのこの姿をみたら、喜ぶだろうと思った通り、セーレが嬉しそうにしてる)
馬車に乗り込み、少し落ち着いたのか背を預けてくれて、小窓から流れて行く景色をみているようだ。
「外の景色は、まだそんなに変化ありませんが……楽しいですか?」
「旅行とか……したことなくて。邪魔になるし、迷惑かけたくなくて……こんなの夢みたい」
最近のセーレは、感情に揺さぶられるのか魔力に波がある。使い過ぎていた魔力が戻り、持て余しているのかも知れない。今回は、上手く魔法で定着させるのが目的だ。覗き魔が、セーレに手を出す前に、セーレが誰のものか分からせないと駄目だ。
「もう少し時間がかかりますので、俺と魔力を馴染ませましょうか?」
青いダイヤモンドをはめた指に触れると、背中を預けていた体が離れて向きを変えようとしたので、今度は向かい合わせに座ってもらう。
馬車の席ではない。そのまま、膝の上を跨ぐ様に向かい合わせになった。
「レイ……心配し過ぎだって。隣でいいんだよ?こんなに密着しなくても。レイが疲れない?それに、見えたら恥ずかしいんだけど」
「馬車の中ですから、恥ずかしくないでしょう?」
「それは、そうかもだけど。ディードとかは感が鋭いから分かってるかも知れないから」
「馬車の外にいるから、問題ないです」
指を絡めて、魔導書を読み解く時に見つけた魔法を、さらに丁寧に正確に詠唱する。実体化もかなり上手くできる様になっているので、今日はいつもよりも特別に念入りに魔力を重ねる。セーレが辛くならない様に。優しくゆっくりと魔力を織り込むように心がけていく。
色白の肌が少し朱色に色付き、髪色がレライエの色まとい、さらさらと揺れる。
紫の双眸が、青みを帯びて、笑顔を向けてくれた。
「セーレ……様、本当に綺麗だ」
つい抱き寄せてしまった。
(この照れ顔が、可愛くて仕方ないんだけど)
このまま、受け止めていたいのでそっと背中をさすると、ゆっくりと顔を上げたセーレが唇を小さく動かし何か呟いている。
美しい人だけど、仕草は幼くて可愛くて愛おしい。
「セーレ様は、本当に可愛いですね」
また、真っ赤になったかと思ったら……
「ちょっと、魔導書に戻るから!デ、デートの準備をしてくる!」
慌てて、その手を掴むと驚いて首を傾げている。
「レイ?デートに行くんだよね?え、あれ……勘違いだった?あ、待ってごめん。もしかして冗談だった?」
赤くなったり、青くなったり、揶揄うつもりはなかったのに困らせてしまった。
「勘違いじゃないです。ただ準備はしてあるので、セーレ様は魔導書と一緒にいつも通り俺が抱えていくだけです。馬車の準備をセバスがしてくれていて、もうすぐ呼ばれると思います。ディードとメグは馬でついて来ますので……まあ、身内で別邸に行く感じです。すみません。名ばかりの王子なので、別邸と言うほど広くもありません。気に入ってもらえるといいのですが……」
「行く!皆で行けるのってきっと楽しいよね」
「皆に姿を見せるかどうかは、無理しなくても大丈夫ですから。今回は、セーレ様が試したいことをしましょう。ここの結界は消えないので、覗き魔が留守中に来ても平気でしょうから」
「覗き魔……来るかな?」
「離宮の何を知りたいのでしょうね」
手を伸ばし、抱える様に腕の中に閉じ込めると、嬉しそうに笑ってデートでやりたい事をポツリポツリと教えてくれる。
デートの意味を分かっていて、こんなに嬉しそうにしてくれているのなら、このまま独占していたい。
時々思うのは、セーレは精霊ではない。それに生まれた時から守護者だった訳でもないようだ。足が悪かったと言うのは、ずっと昔に人だったのだろうか?魔法で移動することよりも、自分の足で走ってみたいと嬉しそうにしている。
一体セーレは何者なのだろう?本当にレライエに会いに来てくれたのではないのか?と自惚れてしまいそうになる。
(絶対に奪われたりしない。テオドールにも、神子にも、神官長など信じられる訳がない)
あの日、テラスにいたのはセーレだ。結界にヒビが入ったのを知ったのは、実体化を試した後だった。ヒビの事を知らずに、テラスに連れ出してしまったことが悔やまれてならない。その後から同じ場所を見に来るのなら、見られた可能性が高い。多分透けてはいなかったはずだ。だからこそ人と認識して、気になって仕方がないのだろう。こんなに美しい人を見て魅了された可能性が高い。
セバスに呼ばれ、セラフィーレを抱えて馬車へと移動する。覚えた魔法をかけて、馬車の外装を変える。
ディードもメグも王家の専属護衛には見えないように、ギルドからの派遣護衛騎士に扮している。メグに関して言えば女装をしていない。
(メグのこの姿をみたら、喜ぶだろうと思った通り、セーレが嬉しそうにしてる)
馬車に乗り込み、少し落ち着いたのか背を預けてくれて、小窓から流れて行く景色をみているようだ。
「外の景色は、まだそんなに変化ありませんが……楽しいですか?」
「旅行とか……したことなくて。邪魔になるし、迷惑かけたくなくて……こんなの夢みたい」
最近のセーレは、感情に揺さぶられるのか魔力に波がある。使い過ぎていた魔力が戻り、持て余しているのかも知れない。今回は、上手く魔法で定着させるのが目的だ。覗き魔が、セーレに手を出す前に、セーレが誰のものか分からせないと駄目だ。
「もう少し時間がかかりますので、俺と魔力を馴染ませましょうか?」
青いダイヤモンドをはめた指に触れると、背中を預けていた体が離れて向きを変えようとしたので、今度は向かい合わせに座ってもらう。
馬車の席ではない。そのまま、膝の上を跨ぐ様に向かい合わせになった。
「レイ……心配し過ぎだって。隣でいいんだよ?こんなに密着しなくても。レイが疲れない?それに、見えたら恥ずかしいんだけど」
「馬車の中ですから、恥ずかしくないでしょう?」
「それは、そうかもだけど。ディードとかは感が鋭いから分かってるかも知れないから」
「馬車の外にいるから、問題ないです」
指を絡めて、魔導書を読み解く時に見つけた魔法を、さらに丁寧に正確に詠唱する。実体化もかなり上手くできる様になっているので、今日はいつもよりも特別に念入りに魔力を重ねる。セーレが辛くならない様に。優しくゆっくりと魔力を織り込むように心がけていく。
色白の肌が少し朱色に色付き、髪色がレライエの色まとい、さらさらと揺れる。
紫の双眸が、青みを帯びて、笑顔を向けてくれた。
「セーレ……様、本当に綺麗だ」
つい抱き寄せてしまった。
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