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31レイとデート?

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 魔法と剣の訓練に、セラフィーレが実体化する為のダンスと魔力譲渡訓練。勉強にマナーにレライエは忙しい。そして、何故か結界を聖遺物レリックの指輪で張るようになってから、離宮を見張られるようになった。三年近くは特に何にもなかったのに。ゲームが始まっているせいかも知れない。
 特に嫌がらせを受ける訳ではないが、テラス側に離宮とは関係しない人物が何度か来ているようだとメグからも報告を受けている。相手も中々の魔法の使い手であるせいか、誰なのかを特定できないでいる。

 結界を壊す気はないようで、ただそこを見ているそんな感じなので、わざわざ攻撃などはせずに好きにさせている。ただ、あれから一年近く見られているので、中々しぶとい。


 害は無さそうというのが、ディードやセバスの意見だ。メグは何か思うことがあるのか、気を付けておきますと言った。レライエは、セラフィーレに対してテラスを使用しないようにと指示しそれに従っている。

 そんなに心配しなくても、結界は強固なので侵入は出来ないと思う。この指輪型の聖遺物レリックは、これを通してかけた魔法を解除するまで持続させるアイテムみたいだった。それでもレライエは心配なのか、行動を制限してきたのでちょっと息が詰まってしまう。まだ、実体化が安定してないのは本当だから、頑張るしかない。

 相変わらず神子と第一王子殿下と神官長が、浄化に出かける話は聞かない。神官達が多少派遣されているみたいだとディードが言っていたので、そこまで厄災の影響はひどくないのだろうか?それとも、神子がいるだけで世界を守っているのだろうか?

 セラフィーレは、浄化の担当ではないので任せておくのが一番だ。ストーリーに影響させない為にも傍観者でいた方がいい。いや、これ以上は関わらずに生きていきたい。

 それでもゲームのファンとしては、気になってしまうのは仕方がないと思う。巻き込まれないように情報収集をディードから、メグにお願いすることにした。

 今存在しているメグは本当のマーガレットではない。男女の双子の片割れのメイシアが、女装メイドに扮してレライエの傍にいる。間違いなくストーリーの隠しキャラだと思う。攻略する難易度が高いトリックスター的役割なら、暗躍して主人公達を混乱させるバーグラーかも知れない。ますます、好感度上げが難しいと思う。無課金勢だったので、交流が難しいキャラが出ると実力で攻略したくなるのは悪い癖だ。

 神子はどうやら魔導書は神殿のを使っているらしいけど、あまり訓練をしていないみたいだ。王家にある魔導書もかなり良いもので、テオドールの親愛を得たら利用できるはずなので、それを狙っている可能性もある。すでに本を持っているし、心配しなくてもいいと思う。セラフィーレは、神子にとってゴミだったのだから、ゲームにはきっと役に立たない。でもそれでいい。

 レイも十七歳になって、この一年でさらにイケメン度が上がった。ディードによる剣の訓練も余裕でついていく。多分体が少年から青年に変わって来たのだ。

「あ──今日も推しが格好良い……」
 腹筋がマッチョ過ぎないのだ。ガン見したいけど、顔がにやけそうなので直視できない。ルーティン通りに背中の筋肉をほぐしていく。時々漏れる色気たっぷりの、声にどきどきが止まらない。

 この一年で、実体化もかなり上手くなったので、マッサージは実体化して重さをレライエに負荷しているのだ。その方が気持ちがいいっていうので、魔力コントロールの為にも丁度いい練習になっている。

「セーレ様」
「ん?何、もっと強く体重かける?」
 レライエが上体を起こし、セラフィーレを腕の中に閉じ込める。

(顔が……近い)
 もう、ビジュアルがゲームの表紙絵そのものだ。格好良過ぎて心臓が痛い。

「あの、ちょっと照れるから。早く服着てくれる?肌が……筋肉が、格好良過ぎるんだよ」
「セーレ様は、この筋肉が好きですよね?」
「僕には、身に付かないから。憧れてるの。ディードもすごいんでしょう?いいなぁ細マッチョ」

「ディードと比べないでください。セーレ様、いつも言いますよね?その、細マッチョって」
「昔、鍛えようとしたんだけど……無理だったんだ。僕は諦めが悪いんだけど、足があまり良くなかったから」
「元々付きにくいだけかも知れません。実体化もかなり上手くいっているので、足で歩いてみませんか?その為に少し遠出しましょう。それなら、王宮の関係者に見られたりしませんから。ほら外に出たくありませんか?俺とデートをして下さい」

「デート?レイと外に行くってこと……王宮とかじゃなくて?」
「自然の多い所です。歩いたり、走るのは体重がかかると難しいかも知れません。泣かないでくださいね?」

「泣かないよ!でも、嬉しい。レイありがとう!」
思わず押し倒す勢いで、レライエに抱きついた。セラフィーレの力じゃ倒れるはずがないのに、何故か、ゆっくりとベッドに沈み込んだ。
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