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25セーレの実体化
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その日、歳下の推しにこれでもかと甘やかされ(抱っこされたり、髪の毛を結んでくれたり)、落ち着いた時には羞恥で顔をあげられなかった。
(ちょっと……構われ過ぎでは?)
朝食の用意が出来たとセバスが知らせに来て、魔導書は帯剣ベルトポーチ内へと収納された。毒味もあるので、セラフィーレはレライエに寄り添い片手抱きで運ばれて行く。片マントで腕の位置が不自然に見えないように隠し、剣触れているかのようにして、見えないセラフィーレを抱えている不自然な手の位置にならない。
これを考えたのもレライエだ。この件に関してはディードも反対してこない。最初は毒味という事で、セラフィーレの体を心配してくれたが、解毒魔法で問題ないと説得してようやく受け入れてくれた。
ディードは本当に信用がおける護衛騎士で正義感も強く、第二王子殿下付き護衛という立場を大切にしてくれている。
実際のところ、元第一王子殿下の護衛なので、元同僚からの嫌がらせもあったのだ。それを全て跳ね除ける実力者でもある。
食事は、レライエの分のみ用意されていて、ディードは傍で護衛を続けている。
レライエの太腿の上に横座りで、スプーンで口まで運ばれて毒を確認している。
(餌付け……にしか見えないのでは!?)
この様な姿が見えてしまったら、正直恥ずかしい。ディードは、見えないセラフィーレをどのように思っているのだろう。第二王子殿下から食べさせてもらっている事は、おかしいと思っている可能性は高い。
(見えてたら、しないよね?)
重さはないような体なので、太腿に乗せられても体重のことだけなら、正直罪悪感は少ない。単なる気の持ちような気はするけど。
一通りの食事が終わり、メグがお茶を運び入れるために入室して来た。お茶はディードの分も用意され、朝食後の食器などが引下げられていく。
レライエが、ディードに座る様に促すと迷いつつも彼は席についた。
「ディ、ちょっと防音と結界を強くするね」
「はい。セーレ様」
「ディード。今から試すことは、他言無用に」
「レライエ殿下。分かりました」
「じゃあ、レイ降りるね」
「このままの方が魔力が渡しやすい」
「え?いや、でも」
「ディードなら、いつもこの位置にセーレ様がいることは、分かっているはずだから」
「ああ。殿下の太腿の上にいるんですよね?」
「そ、そうだけど……そうじゃなくて。味見の時は近い方がいいだけであって」
「今から魔力を多く送るのなら、触れている面が多い方がいいと思う」
「確かに?そうなのかな……?」
「他言無用にしますので、お構いなく」
「そう?じゃ、レイお願いするね。僕も魔力を重ねて安定させるから」
「じゃ、しっかり捕まっていて」
まあディードだし、身内みたいなものだから良いのかな?横座りのまま、両手は首の部分から背中へと回した。二人の魔力を重ねる様にゆっくりと織り込んで、レライエの魔力を受け止める。体に重さが加わり、懐かしいような不思議な感覚だった。
「う……ん」
温かい流れと共にレライエの腕に力が入ったのか、一度ガッチリと抱き寄せられた。セラフィーレはレライエの背掴んだ手をゆっくりと離す。
「セーレ様ですか?」
名前を呼ばれて、振り返るとディードの瞳が大きく開かれた。
「…………まさか、ここまで美しいとは」
「大袈裟だよ、ディ」
「ディード他言無用だ!絶対に!!」
「お約束します。本当に精霊の様です」
「ねえ。レイ、重いよね?降りていい?」
「平気だから、抱っこしたままテラスまでは連れて行きましょうか?」
ゆっくりと首を振って、お願いする。仕方なさそうに降ろしてくれて、レライエは手を差し出した。ダンスの練習と思えば良いのだが、ディードの視線もあり、正直はずかしいままだ。
一気に重みを増した体が、とても重く感じる。それでも一人で立ちたいと、レライエの手を離した。ゆっくり三歩くらい進んで、テラスの扉まであと数歩の所で急に体から突然魔力が抜けていく。
振り返るとレライエの顔が僅かに歪んで見える。ピシリと張った結界にひびが入った音が、セラフィーレには聞こえた気がした。魔力が枯渇のようになり、レライエの所に戻ろうとすると、慌てて抱きとめられる。
「はぁ、まだ無理だね」
少しだけ目眩がして、レライエの肩に手をつくと、レライエの過保護スイッチが入りそうになっていた。
「セーレ様。また今度……」
「あのね、レイ。実体化を維持するの、別の方法あるかも……組み合わせとか、もっと他に」
「まだ時間はあります」
「う……ん。出来なかったね」
(めちゃくちゃ……悔しい)
「セーレ様は、離宮のほとんどの結界を張っているせいではないかと。それを魔導具で補って、セーレ様は実体化することだけに、集中してみてはどうでしょう?」
「──それで試そう」
レライエが嬉しそうに笑った。
「なら、魔導具……探そうか」
テラスに立って外を見たかったので、少し残念で名残惜しい。
「セーレ様、少しだけテラスに行きますか?」
「レイ、でもまだ結界用の魔導具が」
「風にあたるだけです。ちょっとだけ立って、その後は抱えるから」
結界にヒビが入った気がするけど、後で掛け直せば大丈夫かな?ちょっと気持ちが悪い気がする。でも、心配はさせたくない。
「ちょっとだけね。その後は本の中に戻るね」
「じゃ、セーレ様行こう」
テラスに繋がる扉が開いた。
(ちょっと……構われ過ぎでは?)
朝食の用意が出来たとセバスが知らせに来て、魔導書は帯剣ベルトポーチ内へと収納された。毒味もあるので、セラフィーレはレライエに寄り添い片手抱きで運ばれて行く。片マントで腕の位置が不自然に見えないように隠し、剣触れているかのようにして、見えないセラフィーレを抱えている不自然な手の位置にならない。
これを考えたのもレライエだ。この件に関してはディードも反対してこない。最初は毒味という事で、セラフィーレの体を心配してくれたが、解毒魔法で問題ないと説得してようやく受け入れてくれた。
ディードは本当に信用がおける護衛騎士で正義感も強く、第二王子殿下付き護衛という立場を大切にしてくれている。
実際のところ、元第一王子殿下の護衛なので、元同僚からの嫌がらせもあったのだ。それを全て跳ね除ける実力者でもある。
食事は、レライエの分のみ用意されていて、ディードは傍で護衛を続けている。
レライエの太腿の上に横座りで、スプーンで口まで運ばれて毒を確認している。
(餌付け……にしか見えないのでは!?)
この様な姿が見えてしまったら、正直恥ずかしい。ディードは、見えないセラフィーレをどのように思っているのだろう。第二王子殿下から食べさせてもらっている事は、おかしいと思っている可能性は高い。
(見えてたら、しないよね?)
重さはないような体なので、太腿に乗せられても体重のことだけなら、正直罪悪感は少ない。単なる気の持ちような気はするけど。
一通りの食事が終わり、メグがお茶を運び入れるために入室して来た。お茶はディードの分も用意され、朝食後の食器などが引下げられていく。
レライエが、ディードに座る様に促すと迷いつつも彼は席についた。
「ディ、ちょっと防音と結界を強くするね」
「はい。セーレ様」
「ディード。今から試すことは、他言無用に」
「レライエ殿下。分かりました」
「じゃあ、レイ降りるね」
「このままの方が魔力が渡しやすい」
「え?いや、でも」
「ディードなら、いつもこの位置にセーレ様がいることは、分かっているはずだから」
「ああ。殿下の太腿の上にいるんですよね?」
「そ、そうだけど……そうじゃなくて。味見の時は近い方がいいだけであって」
「今から魔力を多く送るのなら、触れている面が多い方がいいと思う」
「確かに?そうなのかな……?」
「他言無用にしますので、お構いなく」
「そう?じゃ、レイお願いするね。僕も魔力を重ねて安定させるから」
「じゃ、しっかり捕まっていて」
まあディードだし、身内みたいなものだから良いのかな?横座りのまま、両手は首の部分から背中へと回した。二人の魔力を重ねる様にゆっくりと織り込んで、レライエの魔力を受け止める。体に重さが加わり、懐かしいような不思議な感覚だった。
「う……ん」
温かい流れと共にレライエの腕に力が入ったのか、一度ガッチリと抱き寄せられた。セラフィーレはレライエの背掴んだ手をゆっくりと離す。
「セーレ様ですか?」
名前を呼ばれて、振り返るとディードの瞳が大きく開かれた。
「…………まさか、ここまで美しいとは」
「大袈裟だよ、ディ」
「ディード他言無用だ!絶対に!!」
「お約束します。本当に精霊の様です」
「ねえ。レイ、重いよね?降りていい?」
「平気だから、抱っこしたままテラスまでは連れて行きましょうか?」
ゆっくりと首を振って、お願いする。仕方なさそうに降ろしてくれて、レライエは手を差し出した。ダンスの練習と思えば良いのだが、ディードの視線もあり、正直はずかしいままだ。
一気に重みを増した体が、とても重く感じる。それでも一人で立ちたいと、レライエの手を離した。ゆっくり三歩くらい進んで、テラスの扉まであと数歩の所で急に体から突然魔力が抜けていく。
振り返るとレライエの顔が僅かに歪んで見える。ピシリと張った結界にひびが入った音が、セラフィーレには聞こえた気がした。魔力が枯渇のようになり、レライエの所に戻ろうとすると、慌てて抱きとめられる。
「はぁ、まだ無理だね」
少しだけ目眩がして、レライエの肩に手をつくと、レライエの過保護スイッチが入りそうになっていた。
「セーレ様。また今度……」
「あのね、レイ。実体化を維持するの、別の方法あるかも……組み合わせとか、もっと他に」
「まだ時間はあります」
「う……ん。出来なかったね」
(めちゃくちゃ……悔しい)
「セーレ様は、離宮のほとんどの結界を張っているせいではないかと。それを魔導具で補って、セーレ様は実体化することだけに、集中してみてはどうでしょう?」
「──それで試そう」
レライエが嬉しそうに笑った。
「なら、魔導具……探そうか」
テラスに立って外を見たかったので、少し残念で名残惜しい。
「セーレ様、少しだけテラスに行きますか?」
「レイ、でもまだ結界用の魔導具が」
「風にあたるだけです。ちょっとだけ立って、その後は抱えるから」
結界にヒビが入った気がするけど、後で掛け直せば大丈夫かな?ちょっと気持ちが悪い気がする。でも、心配はさせたくない。
「ちょっとだけね。その後は本の中に戻るね」
「じゃ、セーレ様行こう」
テラスに繋がる扉が開いた。
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