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50二冊目の魔導書①

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 魔導書とばれない為にも、レライエとの魔力を精密に合わせる練習と、メグに指導を受けてダンスも特訓をする。半日は透けることなくレライエと屋敷と庭位離れることも可能になってきた。あれから呼び出しがあるのか不安になったものの、神殿も特にこちらに接触もなく変わらない毎日を過ごしていた。変わったといえば、陛下からの命令でレライエが第二王子としての公務を担当するために王宮に通い始めた。
 ディードの護衛も許可されていて、セラフィーレは帯剣ベルト内に帯同している。この間は魔力を可能な限り抑えてレライエと同調している。

 怯えるよりは、行動を共にして情報を得る方がいい。それに離宮においておけないとレライエが、断固として魔導書を離さなかった。メグが呆れていたが、セラフィーレを護るよりもメイシアとして一人で行動して、他の魔導書を探してくれるようだ。

 そして、何より助けた翼竜がセラフィーレとメイシアにしか懐かなかったのだ。

「美人が好きなのですね」
 そうほのぼのと言うのは、翼竜に威嚇されているセバスだ。
「本当に、俺とメグの扱いが違いすぎてイラっとしますね」
 動物好きらしいディードが、翼竜を触れようとすると尻尾でビタンとはたかれている。

 一番威嚇されるのはレライエで、セラフィーレを抱きかかえているとその間に来たがり大人気ない攻防が始まる。そこでメグが回収に来ると寂しそうにするが、腕に抱かれて喜んで甘えて連れ出されていた。

「全く油断も隙きもない」
「そうですか?あんなに可愛いいのに」
 可笑しくて、笑いを堪えていると頬に手が触れて上向きにされてしまうから、次に何をされるのかすぐに分かって目を閉じる。

 チュッと唇に触れて、離れたのにもう一度深くキスをされた。
 陛下に公務を任されたこともあり、レライエは一部の貴族に王族として扱われるようになって来た。成人祝賀会のパートナーとして推薦状とは別に婚約用の釣り書まで執務室の方に数多く届いている事は知っている。第一王子がまだ婚約者を決めていないので、婚約はしないと思うが王命の時は本当にどうするのか聞けずにいる。

 レライエが十八になるのは、もうすぐだ。
 そのお披露目を成功させるため、日々頑張っているのでキスはご褒美のような感覚になりつつある。もうそろそろ、覚悟を決めるつもではいても、この先は難関だらけだった。

「そう、簡単じゃないもんね」
「セーレ?」
「なんでもない。それより、翼竜の名前をつけようか迷ってて」
 不快そうな顔付きに笑いがでてしまう、あんなに可愛いのに。

「メイシアが、名前をつけようとしてるのですが、どれも気に入らないみたいで」
「竜なんだから……リュウ」
「だから、その安直なパターン、メイシアと一緒」
「セーレは、つけたい名前はないのか?」

 綺麗な灰銀竜。瞳はセラフィーレより淡い紫色。少し自身に似ているような気がして親近感が湧いて、あの子が呪いを受けていたのなら、これからの幸せを祈りたい。

「キリエ……」
 魔力が膨れるのが分かって、ドアの方を見ると淡い光が隙間から見える。

「一体何が?」
 レライエがセラフィーレを降ろして、ドアの方に向かいかけるとバンとドアが開いた。
 すでに剣を構えてセラフィーレ庇うように立って様子を伺っている。淡い銀の光の中に翼竜がいた。
 メイシアも細長杖ロッドを構え、ディードも室内へ入って来た。

「待って!」
 皆がセラフィーレの方を見ると、光球の中にいる翼竜に向かい両手を前に出して声をかける。

『キリエ』
 光球が消える瞬間に風圧が押し寄せて、皆が飛ばされてまいとしている中でセラフィーレの髪色が銀糸に代わり、紫の瞳の色に戻っていた。
 キリエと呼ばれた翼竜は、灰銀のふわふわした髪に淡い紫の大きな瞳でセラフィーレを見上げて笑う。

『セーレ。会いたかった』
 十歳くらいの少年が、低音のボイスでうっとりとセラフィーレの名前を呼んだ。腕には一冊の灰銀色の本を抱えている。

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