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27結界の魔導具①
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実体化を維持する為に、レライエと魔力を合わせたものの、上手くいかず反動が大き過ぎた。さらに結界張り直しに魔力を使った結果、レライエにだけに見せていた姿さえ保てず足が透けている。
とりあえず抜ける魔力を安定させるために魔導書の中に戻ったせいで、心配したレライエが、魔導書を離さずに胸に抱いて魔力を流してくれているので、多分髪色が変化している。
(綺麗な青……だな)
『レイ大丈夫だよ……結界も補強したし、眠ったらいいんじゃないかな?』
本来寝る必要がないけど、レライエに抱きしめてもらって寝たら朝には魔力枯渇が収まる気がする。ディードに指摘されたように、魔力を使い過ぎたせいだと思う。
『結界のヒビの話は聞いてません。なぜ無茶をしたのですか? セーレ様が消えたりしたら、一生後悔するので無茶はやめてください』
レライエが泣いてしまいそうで、今すぐにここからでて抱きしめてあげたい。
『──僕が、歩いたり、走ることに憧れてて……心配かけてごめんね』
『絶対、俺がどうにかしてそれを叶えます。まだ出てくるの無理ですか?』
『支えてもらわないといけないから……今日は大人しくしとくよ。結界の確認も、もう一回しないと……』
『魔導具をメグに用意する様に頼みました。彼なら……性能のいい物を用意できると思うので』
『──やっぱり、メグって男の人だったんだ』
ずっと気になっていたメグの持つ雰囲気。中性的な存在が、もしかしたらと思わずにはいられなかった。ゲームの登場人物の可能性が高いため、関わり過ぎないように接して来たのに。
『──マーガレットとメイシアは男女の双子だったんです。毒味で亡くなったのは、メイシアの振りをした姉のマーガレットです』
『入れ替わってたの?』
『メイシアが毒味に選ばれたので……大した能力のない私が変わると、優秀な後継と俺を護るのだと言って笑って……血だらけになって』
その言葉を聞いて慌てて、魔導書から飛び出した。レライエが泣いてると思ったからだ。
『レイ!!』
出会って三年、強くなっていく姿しか見てなかった。体が大きくなっても、まだ子どもなのに。大切な人達が目の前で身代わりになって亡くなったのだ。そして次にマーガレットの振りをしたメイシアに何かがあったら……。思わずレライエの所へ姿を出したが、ぐらりと体が傾いて支えきれない。魔力に繋がりのない人に見せるための実体化によって、魔力をごっそり抜かれてしまった。
勝手にチートアイテムだからと、安心してた。
レライエの腕が延びてきて、抱きとめるように胸の中に閉じ込められる。
『ご、ごめん……まだ体が』
痛々しいそんな顔をして、本ごと抱えるように抱き寄せられた。
『──大切な人をこれ以上失わないようにしてるのに』
なんと言うべきか、過去を慰めてもその傷を簡単に理解出来る訳ではない。同じ経験をしたことがないのだから、痛みの度合いだって軽々しくは言えない。
レライエだって同情はされたくないはずだ。ここは、ゲームの世界ではなく、彼らの現実世界なのだから。ただ沈黙は居心地が悪くて、話を逸らすように気になっていたことを聞いてみた。
『──レイ。いつの間に俺って言い出したの?』
『ああ、公式の場は私ですが、ディードみたいになりたいので、彼らと話す時は俺にしたんです』
ますます、格好良くなって……じゃなくて、僕って言っているのが、恥ずかしい気がしてきた。
『なら僕も、俺って言ってみようかな?』
プハッと吹き出したレライエが肩を小刻みに揺らして、そのあとは笑わないように堪えているようだった。
『ね、ねえ。そんなに笑わなくても良いのに。似合わないけど、もう……本気で心配したのに』
『なら、俺だって心配しました。どうしてそんなに無茶するんですか?魔導書に繋がったままで、まだ姿を全部出せないのでしょう?』
思った以上に体に負担がいって、実はヒビの入った結界の修復は限界に近かった。でもレライエを護ることに全力を尽くしたい。だから結界を再構築させただけ。
推しの笑顔を護りたい。レライエが幸せなるためならなんでもしたいんだ。ただ痛みをこんなに伴うとは思っておらず、魔導書内の魔力に包まれていれば大丈夫になるはずだった。あの時レライエだって苦しそうにしていたから、頼りたくなくて今こんな状況になっている。
セラフィーレと星七の心が重なる。もう、邪魔になりたくない。レライエの傍にいて役に立てるなら、それだけで幸せなのだから。
『セーレ様……泣いてる?』
『泣いてない。今日は、戻るね』
顔を上げきれなくて、逃げるように本に戻ろうとしたのに、グッと体を引き寄せられる。
『──な、に?』
腕を取られて、レライエの方に引き寄せられてガッチリと抱き止められる。
『ディードと違って頼りないかも知れない。それでも、こんな時は頼って。理由は聞かないから』
絶対に泣かない……諦めない。それなのに、初めて人前で泣いてしまいそうだった。
とりあえず抜ける魔力を安定させるために魔導書の中に戻ったせいで、心配したレライエが、魔導書を離さずに胸に抱いて魔力を流してくれているので、多分髪色が変化している。
(綺麗な青……だな)
『レイ大丈夫だよ……結界も補強したし、眠ったらいいんじゃないかな?』
本来寝る必要がないけど、レライエに抱きしめてもらって寝たら朝には魔力枯渇が収まる気がする。ディードに指摘されたように、魔力を使い過ぎたせいだと思う。
『結界のヒビの話は聞いてません。なぜ無茶をしたのですか? セーレ様が消えたりしたら、一生後悔するので無茶はやめてください』
レライエが泣いてしまいそうで、今すぐにここからでて抱きしめてあげたい。
『──僕が、歩いたり、走ることに憧れてて……心配かけてごめんね』
『絶対、俺がどうにかしてそれを叶えます。まだ出てくるの無理ですか?』
『支えてもらわないといけないから……今日は大人しくしとくよ。結界の確認も、もう一回しないと……』
『魔導具をメグに用意する様に頼みました。彼なら……性能のいい物を用意できると思うので』
『──やっぱり、メグって男の人だったんだ』
ずっと気になっていたメグの持つ雰囲気。中性的な存在が、もしかしたらと思わずにはいられなかった。ゲームの登場人物の可能性が高いため、関わり過ぎないように接して来たのに。
『──マーガレットとメイシアは男女の双子だったんです。毒味で亡くなったのは、メイシアの振りをした姉のマーガレットです』
『入れ替わってたの?』
『メイシアが毒味に選ばれたので……大した能力のない私が変わると、優秀な後継と俺を護るのだと言って笑って……血だらけになって』
その言葉を聞いて慌てて、魔導書から飛び出した。レライエが泣いてると思ったからだ。
『レイ!!』
出会って三年、強くなっていく姿しか見てなかった。体が大きくなっても、まだ子どもなのに。大切な人達が目の前で身代わりになって亡くなったのだ。そして次にマーガレットの振りをしたメイシアに何かがあったら……。思わずレライエの所へ姿を出したが、ぐらりと体が傾いて支えきれない。魔力に繋がりのない人に見せるための実体化によって、魔力をごっそり抜かれてしまった。
勝手にチートアイテムだからと、安心してた。
レライエの腕が延びてきて、抱きとめるように胸の中に閉じ込められる。
『ご、ごめん……まだ体が』
痛々しいそんな顔をして、本ごと抱えるように抱き寄せられた。
『──大切な人をこれ以上失わないようにしてるのに』
なんと言うべきか、過去を慰めてもその傷を簡単に理解出来る訳ではない。同じ経験をしたことがないのだから、痛みの度合いだって軽々しくは言えない。
レライエだって同情はされたくないはずだ。ここは、ゲームの世界ではなく、彼らの現実世界なのだから。ただ沈黙は居心地が悪くて、話を逸らすように気になっていたことを聞いてみた。
『──レイ。いつの間に俺って言い出したの?』
『ああ、公式の場は私ですが、ディードみたいになりたいので、彼らと話す時は俺にしたんです』
ますます、格好良くなって……じゃなくて、僕って言っているのが、恥ずかしい気がしてきた。
『なら僕も、俺って言ってみようかな?』
プハッと吹き出したレライエが肩を小刻みに揺らして、そのあとは笑わないように堪えているようだった。
『ね、ねえ。そんなに笑わなくても良いのに。似合わないけど、もう……本気で心配したのに』
『なら、俺だって心配しました。どうしてそんなに無茶するんですか?魔導書に繋がったままで、まだ姿を全部出せないのでしょう?』
思った以上に体に負担がいって、実はヒビの入った結界の修復は限界に近かった。でもレライエを護ることに全力を尽くしたい。だから結界を再構築させただけ。
推しの笑顔を護りたい。レライエが幸せなるためならなんでもしたいんだ。ただ痛みをこんなに伴うとは思っておらず、魔導書内の魔力に包まれていれば大丈夫になるはずだった。あの時レライエだって苦しそうにしていたから、頼りたくなくて今こんな状況になっている。
セラフィーレと星七の心が重なる。もう、邪魔になりたくない。レライエの傍にいて役に立てるなら、それだけで幸せなのだから。
『セーレ様……泣いてる?』
『泣いてない。今日は、戻るね』
顔を上げきれなくて、逃げるように本に戻ろうとしたのに、グッと体を引き寄せられる。
『──な、に?』
腕を取られて、レライエの方に引き寄せられてガッチリと抱き止められる。
『ディードと違って頼りないかも知れない。それでも、こんな時は頼って。理由は聞かないから』
絶対に泣かない……諦めない。それなのに、初めて人前で泣いてしまいそうだった。
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