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26美しい人 sideテオドール
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成人祝賀会は、神子様のお披露目の場所だった。陛下の命令により、義弟であるレライエを無視する訳にはいかない。
王妃である母は、側妃の息子は厄災の捨て駒に使う予定だと言っていた。だから出産を許可しただけの名ばかりの王子だと聞かされ続けた。
捨てる者に情を移すなと、気を許すことも仲良くすることも禁止され、会うことさえも出来ない、血が半分繋がっただけの弟。
王太子の立場を確立する為に全てにおいて、レライエよりも完璧を目指すようにと教育を受けてきた。貴族の同年代の子息よりも、優秀な自信があったのに。
偶然中庭で見かけたあの子は、小柄で深い青い髪色に大きな瞳が可愛い子だった。あの子が弟なんだ。そう思って少しだけ近付こうとして、振り返ったあの子の魔力に弾かれてしまう。
二歳歳下の子供の魔力が、王太子であるテオドールより多かった。
弾かれて意識を失ったテオドールが目が覚めた時、怒り狂った王妃から頬を叩かれて、二度と恥を晒すなと注意を受ける。さらに家庭教師が増えて、魔法の訓練でボロボロになっておかしくなりそうだった。辛くて逃げ出したいそんな時、異世界からの神子の召喚の儀式の話が、出始め現実味を帯びていく。
神子を味方に付けたら、王太子として認めてもらえる。魔力も魔法も力が増え、誰よりも王太子として相応しいと言われるに違いない。だからこそ、召喚の儀を少しでも早めるように働きかけたのだ。
神官長も王妃派であり、王妃の願いと共に神殿の権威のために動いている。厄災の為にも早く神子との魔力が、テオドールに馴染む方がこの国の為になる。レライエが魔法を完璧に、習得する前に阻止しなければならない。
そして神子が召喚され、その美しい黒髪と黒い瞳に感動した。いや安堵したのかも知れない。失敗の出来ない召喚の儀式が成功したのだから。
何もかも美しい人だと思っていたのに……。
「テオ」
「神子様」
「二葉って呼んでください」
「いいえ。神子様の真名をそう簡単に呼ぶ訳にはいきません」
「テオは真面目だね。練習ちょっと休まない?」
「課題が終わってないのではありませんか?」
「大丈夫だよ。成人したから、これからは魔力も増えるから」
「そうなのですか?」
元々あまり練習に熱心ではない人だ。器用にこなしはするが、上級レベルには程遠い。魔導書の魔法呪文も初級あたりで止まっている。厄災の始まりを神子自身が予言しているが、間に合うのだろうか?
レライエに付けた護衛騎士のディードは、かなり優秀な騎士だと気がつくのも遅過ぎた。騎士同士の妬みから、優秀ではないと嘘の報告を受けていたのだ。中立派のメリオル家を王妃派の騎士が疎んだ結果だった、俺は自分で確認しなかったことを後悔する。
俺の周りには、信頼できる者が少なくないか?なにか間違えていないかと不安になる。神子が休憩をとる部屋に戻ったため、こっそりとレライエの離宮の方に来てしまった。
十六になったレライエは、ずいぶんと大人っぽくなっていた。所作も完璧で、落ち着いてみえる。護衛騎士のディードの存在も目立つ。惜しい人材を譲ってしまった後悔もある。剣の腕は騎士団長レベルと聞いて戻したいくらいだったが、あの場で切り捨てた以上、取り消す事が出来ない。
一体どんな練習をしているか、様子を見てみたかった。
だが思った以上に強く張られた結界のせいで、あまり近づくことができない。一体どうやって結界を張っているのか、意味がわからないことだらけだ。
(どうして、俺はこの結界にさえ手も足も出ないんだ?)
仕方なく戻ろうとした時、結界が緩んだのが分かった。笑い声と優しいトーンの声が聞こえて、妙に惹かれてしまう。ギリギリまで近付き、テラスの方を見るとレライエの傍に、レライエと同じ髪色の美しい人がいた。
(誰だ……?)
二人の距離が近い。レライエが優しく微笑んで、何かを話している。その言葉に反応するように少し照れた顔をレライエの肩に辺りに寄せると、レライエが片腕に抱く形で部屋に入っていく。その後、強く結界が張られてしまう。
「あの人は一体誰なんだ。レライエの恋人なのか?そんな話……」
胸がギュッと絞られるように痛んだ。どうして、レライエの傍にばかり人が集まるんだ?それにあんなに美しい人に会ったことがない。
───話してみたい。笑顔を向けて欲しい。こんな気持ちは初めてで、どうしていいのかわからないまま、この場を後にした。
王妃である母は、側妃の息子は厄災の捨て駒に使う予定だと言っていた。だから出産を許可しただけの名ばかりの王子だと聞かされ続けた。
捨てる者に情を移すなと、気を許すことも仲良くすることも禁止され、会うことさえも出来ない、血が半分繋がっただけの弟。
王太子の立場を確立する為に全てにおいて、レライエよりも完璧を目指すようにと教育を受けてきた。貴族の同年代の子息よりも、優秀な自信があったのに。
偶然中庭で見かけたあの子は、小柄で深い青い髪色に大きな瞳が可愛い子だった。あの子が弟なんだ。そう思って少しだけ近付こうとして、振り返ったあの子の魔力に弾かれてしまう。
二歳歳下の子供の魔力が、王太子であるテオドールより多かった。
弾かれて意識を失ったテオドールが目が覚めた時、怒り狂った王妃から頬を叩かれて、二度と恥を晒すなと注意を受ける。さらに家庭教師が増えて、魔法の訓練でボロボロになっておかしくなりそうだった。辛くて逃げ出したいそんな時、異世界からの神子の召喚の儀式の話が、出始め現実味を帯びていく。
神子を味方に付けたら、王太子として認めてもらえる。魔力も魔法も力が増え、誰よりも王太子として相応しいと言われるに違いない。だからこそ、召喚の儀を少しでも早めるように働きかけたのだ。
神官長も王妃派であり、王妃の願いと共に神殿の権威のために動いている。厄災の為にも早く神子との魔力が、テオドールに馴染む方がこの国の為になる。レライエが魔法を完璧に、習得する前に阻止しなければならない。
そして神子が召喚され、その美しい黒髪と黒い瞳に感動した。いや安堵したのかも知れない。失敗の出来ない召喚の儀式が成功したのだから。
何もかも美しい人だと思っていたのに……。
「テオ」
「神子様」
「二葉って呼んでください」
「いいえ。神子様の真名をそう簡単に呼ぶ訳にはいきません」
「テオは真面目だね。練習ちょっと休まない?」
「課題が終わってないのではありませんか?」
「大丈夫だよ。成人したから、これからは魔力も増えるから」
「そうなのですか?」
元々あまり練習に熱心ではない人だ。器用にこなしはするが、上級レベルには程遠い。魔導書の魔法呪文も初級あたりで止まっている。厄災の始まりを神子自身が予言しているが、間に合うのだろうか?
レライエに付けた護衛騎士のディードは、かなり優秀な騎士だと気がつくのも遅過ぎた。騎士同士の妬みから、優秀ではないと嘘の報告を受けていたのだ。中立派のメリオル家を王妃派の騎士が疎んだ結果だった、俺は自分で確認しなかったことを後悔する。
俺の周りには、信頼できる者が少なくないか?なにか間違えていないかと不安になる。神子が休憩をとる部屋に戻ったため、こっそりとレライエの離宮の方に来てしまった。
十六になったレライエは、ずいぶんと大人っぽくなっていた。所作も完璧で、落ち着いてみえる。護衛騎士のディードの存在も目立つ。惜しい人材を譲ってしまった後悔もある。剣の腕は騎士団長レベルと聞いて戻したいくらいだったが、あの場で切り捨てた以上、取り消す事が出来ない。
一体どんな練習をしているか、様子を見てみたかった。
だが思った以上に強く張られた結界のせいで、あまり近づくことができない。一体どうやって結界を張っているのか、意味がわからないことだらけだ。
(どうして、俺はこの結界にさえ手も足も出ないんだ?)
仕方なく戻ろうとした時、結界が緩んだのが分かった。笑い声と優しいトーンの声が聞こえて、妙に惹かれてしまう。ギリギリまで近付き、テラスの方を見るとレライエの傍に、レライエと同じ髪色の美しい人がいた。
(誰だ……?)
二人の距離が近い。レライエが優しく微笑んで、何かを話している。その言葉に反応するように少し照れた顔をレライエの肩に辺りに寄せると、レライエが片腕に抱く形で部屋に入っていく。その後、強く結界が張られてしまう。
「あの人は一体誰なんだ。レライエの恋人なのか?そんな話……」
胸がギュッと絞られるように痛んだ。どうして、レライエの傍にばかり人が集まるんだ?それにあんなに美しい人に会ったことがない。
───話してみたい。笑顔を向けて欲しい。こんな気持ちは初めてで、どうしていいのかわからないまま、この場を後にした。
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