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20成人祝賀会②
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王宮の夜会用ホールは、豪華な西洋の城に近い建築物だった。会場内の華やかさも味わいたいので、レライエの目線を通すように豪華絢爛な内装を堪能していく。
有名な某テーマパークの城ぐらいしか行ったことがない。テレビで見た海外の城に壁画や天使たちの天井絵があったけど、そういうのも実物はきっと素晴らしいんだろうな。
(綺麗だ……ここから出て直接、空気から肌で感じたい)
レライエといつか二人で、体験出来たらいいのに。
(歩いて、触れて感じてみたい。でも触れるのはダメだよね)
何となく浮かれていて、気を引き締めようと頬をペチペチと軽く叩いた。
レライエとディードが、王族用の控室へ案内された時、セーレは思わず背中にゾクッとするような寒気を感じて召喚時の黒い気配を思い出した。
(気持ちわる……)
二人は、その嫌な気配を感じていないみたいだ。もしかしたら神子が近くにいるのかも知れない。
この三年近く、神子側と距離を置くようにして来た。ゲームがどんな風にレライエに影響するのか分からないから。神子の情報だけは、ディードに調べてもらっていた。
それにもう一人の隠れキャラが近くにいることがわかって、その子のことも様子見をしているところだ。
(単純に護るだけじゃ、巻き込まれてしまう)
どうやら、神子の控室が近いせいで魔力を感じただけみたいだ。
剣はこの部屋に置いていくけど、それも嫌な予感がするし、念の為に魔法の呪文を唱えておく。
時間になって、広間の方へと移動するので、王妃派が何かして来た時のことも想定しておこう。そんな風に考えていたら、ワアアと歓声があがり、どうやら神子と第一王子殿下が揃って登場したみたいだった。
一応このゲームのファンなので、第一王子のビジュアルも嫌いではない。レライエに対しての態度は嫌いが、さすがメインキャラクターだなと惚れ惚れしてしまう。隣に並ぶ神子も、純白に銀糸の刺繍とレースの神官服は美しく見えた。
(でも……)
『セーレ様。神子様のところに挨拶に行きますので、魔力を抑えてて下さい』
『ごめん。魔力が乱れてた?気になる?』
『いいえ。ただ、少し動揺しているみたいだったので』
いけない。陛下の傍には王妃もいる。難癖をつけてくるかも知れない。ディードも傍にいるから、問題を起こすとは思えないけど用心しておくべきだ。
『分かった。気を付けるね。何かあれば教えるから』
『はい』
つつがなく陛下と王妃に挨拶をし、第一王子と神子に祝辞を述べている。きちんとマナーを学んでいるので、レライエの一つ一つの仕草が、とても洗礼されていて王子らしさが身に付いてきた。
マナー教師として執事のセバスが優秀すぎるし、ダンス講師としてメイドのメグは指先まで美しい、そんなダンスを踊ってみせた。
想像以上に周りに恵まれたので、セラフィーレは胸がいっぱいで、涙を堪える。
(なんか……直ぐにレイが、巣立って行ってしまいそう)
挨拶も終わり、音楽が流れると主役の二人が中央へ移動していく。
レライエとディードも脇の方へ移動して、少し歓談していると第一王子と神子のダンスが始まる。美しい衣装の神子と殿下の組み合わせは目を惹くので、主役のダンスが終わると、溢れんばかりの拍手と歓声に包まれる。
そして、誰も第二王子の傍にこない。それが現実の扱いだった。王妃派が怖いので関わる者もいないと思うけど、セラフィーレとしては少し胸が痛む。
そして未成年であることを理由に、早めの退出を陛下に許可を得ていたため、レライエは帰ろうとディードと共にその場から離れていく。会場から出るため王族用の通路の扉に着いた時、後ろから「第二王子殿下」と呼び止められた。
「せっかくなので、私とダンスしませんか?」
レライエは、何も答えず黙って彼らをみていた。
「何か言ったらどうなんだ?」
テオドールの低い声に、イラっとするのはセラフィーレだけじゃないはずだ。
「私もディードも──神子様に関わらないようにと、王太子殿下と約束しています」
(あ……そう言えばそんな事があったっけ)
「な、レライエ……お前」
「そんなの昔の話でしょう?」
神子が、レライエに向かって手を伸ばそうとするのがとても嫌だ。
「──王太子殿下の言葉を軽視する事はできません。それでは、先に失礼いたします」
「ええーーーー。こんなに素敵になったのだから、ダンスしようよ。ねっ? 私たちがダンスしても良いよねテオ!!」
ディードも引き攣ってるし、テオドールは表情には出さないものの、レライエを見る目は、退出を促しているのが分かった。
『レイ、誤解されないように……ディードの方に寄っててね』
『──はい』
神子が、向きをテオドールの方に向けて、どうしても駄目なのか聞いている。
多分嫉妬させたいのだろう。ちょっと神子の靴裏をツルツルにしてみた。
もう一歩と、神子がテオドールに近づくと同時に思いっきり体勢が傾いて、押し倒すように二人で転んで、想像以上の大きな音がホールに響く。
慌てて、騎士たちが集まってきて神子に怪我はないかと大騒ぎになり、二人でどこかに行ってしまった。
取り残されたレライエ達は、そのまま控え室に向かい早急に馬車で離宮へと逃れた。ホッとしたレライエと違い、神子はレライエを攻略しようとしているのではないか? とセラフィーレは不安な思いに胸が痛んだ。
有名な某テーマパークの城ぐらいしか行ったことがない。テレビで見た海外の城に壁画や天使たちの天井絵があったけど、そういうのも実物はきっと素晴らしいんだろうな。
(綺麗だ……ここから出て直接、空気から肌で感じたい)
レライエといつか二人で、体験出来たらいいのに。
(歩いて、触れて感じてみたい。でも触れるのはダメだよね)
何となく浮かれていて、気を引き締めようと頬をペチペチと軽く叩いた。
レライエとディードが、王族用の控室へ案内された時、セーレは思わず背中にゾクッとするような寒気を感じて召喚時の黒い気配を思い出した。
(気持ちわる……)
二人は、その嫌な気配を感じていないみたいだ。もしかしたら神子が近くにいるのかも知れない。
この三年近く、神子側と距離を置くようにして来た。ゲームがどんな風にレライエに影響するのか分からないから。神子の情報だけは、ディードに調べてもらっていた。
それにもう一人の隠れキャラが近くにいることがわかって、その子のことも様子見をしているところだ。
(単純に護るだけじゃ、巻き込まれてしまう)
どうやら、神子の控室が近いせいで魔力を感じただけみたいだ。
剣はこの部屋に置いていくけど、それも嫌な予感がするし、念の為に魔法の呪文を唱えておく。
時間になって、広間の方へと移動するので、王妃派が何かして来た時のことも想定しておこう。そんな風に考えていたら、ワアアと歓声があがり、どうやら神子と第一王子殿下が揃って登場したみたいだった。
一応このゲームのファンなので、第一王子のビジュアルも嫌いではない。レライエに対しての態度は嫌いが、さすがメインキャラクターだなと惚れ惚れしてしまう。隣に並ぶ神子も、純白に銀糸の刺繍とレースの神官服は美しく見えた。
(でも……)
『セーレ様。神子様のところに挨拶に行きますので、魔力を抑えてて下さい』
『ごめん。魔力が乱れてた?気になる?』
『いいえ。ただ、少し動揺しているみたいだったので』
いけない。陛下の傍には王妃もいる。難癖をつけてくるかも知れない。ディードも傍にいるから、問題を起こすとは思えないけど用心しておくべきだ。
『分かった。気を付けるね。何かあれば教えるから』
『はい』
つつがなく陛下と王妃に挨拶をし、第一王子と神子に祝辞を述べている。きちんとマナーを学んでいるので、レライエの一つ一つの仕草が、とても洗礼されていて王子らしさが身に付いてきた。
マナー教師として執事のセバスが優秀すぎるし、ダンス講師としてメイドのメグは指先まで美しい、そんなダンスを踊ってみせた。
想像以上に周りに恵まれたので、セラフィーレは胸がいっぱいで、涙を堪える。
(なんか……直ぐにレイが、巣立って行ってしまいそう)
挨拶も終わり、音楽が流れると主役の二人が中央へ移動していく。
レライエとディードも脇の方へ移動して、少し歓談していると第一王子と神子のダンスが始まる。美しい衣装の神子と殿下の組み合わせは目を惹くので、主役のダンスが終わると、溢れんばかりの拍手と歓声に包まれる。
そして、誰も第二王子の傍にこない。それが現実の扱いだった。王妃派が怖いので関わる者もいないと思うけど、セラフィーレとしては少し胸が痛む。
そして未成年であることを理由に、早めの退出を陛下に許可を得ていたため、レライエは帰ろうとディードと共にその場から離れていく。会場から出るため王族用の通路の扉に着いた時、後ろから「第二王子殿下」と呼び止められた。
「せっかくなので、私とダンスしませんか?」
レライエは、何も答えず黙って彼らをみていた。
「何か言ったらどうなんだ?」
テオドールの低い声に、イラっとするのはセラフィーレだけじゃないはずだ。
「私もディードも──神子様に関わらないようにと、王太子殿下と約束しています」
(あ……そう言えばそんな事があったっけ)
「な、レライエ……お前」
「そんなの昔の話でしょう?」
神子が、レライエに向かって手を伸ばそうとするのがとても嫌だ。
「──王太子殿下の言葉を軽視する事はできません。それでは、先に失礼いたします」
「ええーーーー。こんなに素敵になったのだから、ダンスしようよ。ねっ? 私たちがダンスしても良いよねテオ!!」
ディードも引き攣ってるし、テオドールは表情には出さないものの、レライエを見る目は、退出を促しているのが分かった。
『レイ、誤解されないように……ディードの方に寄っててね』
『──はい』
神子が、向きをテオドールの方に向けて、どうしても駄目なのか聞いている。
多分嫉妬させたいのだろう。ちょっと神子の靴裏をツルツルにしてみた。
もう一歩と、神子がテオドールに近づくと同時に思いっきり体勢が傾いて、押し倒すように二人で転んで、想像以上の大きな音がホールに響く。
慌てて、騎士たちが集まってきて神子に怪我はないかと大騒ぎになり、二人でどこかに行ってしまった。
取り残されたレライエ達は、そのまま控え室に向かい早急に馬車で離宮へと逃れた。ホッとしたレライエと違い、神子はレライエを攻略しようとしているのではないか? とセラフィーレは不安な思いに胸が痛んだ。
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