2 / 61
1巻き込まれ転生・星七
しおりを挟む生きてる?星七は、腕や掌を見つめると火傷一つ負ってないことに気がついた。あれ程の火事で、怪我一つないのなら……火事が夢だったか、すでに死後の世界にいるのか、どちらなのかと周りを確認する。
真っ白な世界で、綺麗な純白の長い髪が揺れた。自分より歳下にも見えるけれど、纏う雰囲気はずっと年上に感じてしまう。小説で言うならば、エルフのようにも見えた。目が合った途端、年齢不詳の美少年が笑った。
『厄介なのに巻き込まれたね』
「厄介……?巻き込まれた?」
よく覚えていないが、避難途中に誰かに杖を蹴飛ばされて……逃げ遅れたのは確かだ。もしかしたら、この足じゃなければ逃げられたかも知れない。
でもそんなことは、死んだ今考えてもどうにもならない。生まれつきなのだから、誰も責められない。
足のことを責めたりしたら、傷つくのは母親だけだ。ここまで、大切に育ててもらった恩しかないのに。
仮に死後の世界だとしたら、エルフではなく神さまかも知れない。
その疑問が聞こえたのか、神様(仮)が優しく微笑んだ。
『君は彼に巻き込まれたんだよ。彼の一つ目の願いはね、君の世界に転生することだった。残念だけど、色々と失敗したみたいだね。前回の彼は、今の君と同じで事故に巻き込まれて死んだんだよ。巻き込まれた場合は、二つの願いを叶えるのが通例なんだ』
いったん言葉を切った後、失敗した彼の、二つ目の願いを教えてくれた。
『もしも転生を失敗した時は、別の世界でやり直しするのを叶えて欲しいってね』
神様は、そのまま星七の言葉待たず、独り言のように説明をしてきた。
『彼も必死だったんだけどねぇ。強欲は身を滅ぼすよね。だって、彼だけの意思で世界は成り立たないから。それに願いを叶える存在は、私一人じゃないからね』
そしてコホンっとわざとらしく咳をするので、自然と神さまの顔を注視した。
『だから……巻き込まれた君にも、平等に二つの願いを叶えてあげる』
「願い……?」
(二つも?何でも良いのかな?)
『何でもいいよ。彼の言ってたような好きなゲームとかラノベとか言う世界に送ろうか? そこで君も主人公になる?失敗した時の為にもう一回願い事をキ一プする?悪いけど、さらに何度もやり直すとかは駄目だよ』
願いを叶えると言う割に……蔑んでいるように星七は感じてしまう。まるで、とても嫌なことをしなければいけないみたいに。
本当に死後の世界かは分からないけど、願うくらいは良いのかな?異世界転生が本当にあるのなら……。魔法が使えたら、自由に動けるかもしれない。それに可能なら……行ってみたい世界がある。そう思って言葉にした。
「好きな異世界ゲームがあります。大好きな彼を助けて護りたいので彼の傍で、一緒に生きていける存在になりたいです」
『ふ~ん。恋人ってこと?』
恋人と聞いて、首を振った。
最初は姉に頼まれて、手伝っていたBLゲームだった。いつのまにか不遇な彼が、最推しのキャラになっていた。
応援も手助けもしたい、でも恋人になるのは別問題。なんせ、リアルで恋人が出来たことも、片恋さえ経験のない星七には、恋愛が今一つ分からない。
『そっか。恋人じゃなくてもいい訳だ。じゃあ、もう一つは何?』
何も言わなくてもお見通しみたいで、BLを理解してるのか分からないけど、男のくせにとか言われなくて良かった。
願い事がもう一つ叶うとしたら……。
星七は一度目を閉じて考えてから、ゆっくりと顔を上げて、神様をしっかりと見る。
「僕が死んだ後の世界で、家族……母さんと六花姉さんが悲しまず幸せになることです」
音もなく傍に来た神様が、ふっと笑った。
『──いいよ。ちょっと……たし、……ね。そうだ、君に私の名を教えてあげる。ナキアだ。それから』
少し聞きづらかったけど、名前だけは分かった。好きなゲームの世界であの条件が許されるのなら、全力で彼を護って良いのだと、星七は自然と笑顔になる。
──だって僕は、不遇な彼に幸せになって欲しい。諦めるなんてできない。
「ナキア様。ありがとう」
「それから……アレが」
急に世界が白く輝いた。神様の説明中に……何かに引っ張られてしまい、意識が消えていった。
392
お気に入りに追加
889
あなたにおすすめの小説
R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)
黒崎由希
BL
目覚めたら、姉にゴリ推しされたBLゲームの世界に転生してた。
しかも人気キャラの王子様って…どういうことっ?
✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻✻
…ええっと…
もう、アレです。 タイトル通りの内容ですので、ぬるっとご覧いただけましたら幸いです。m(_ _)m
.
王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~
楠ノ木雫
BL
俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。
これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。
計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……
※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。
※他のサイトにも投稿しています。
可愛い悪役令息(攻)はアリですか?~恥を知った元我儘令息は、超恥ずかしがり屋さんの陰キャイケメンに生まれ変わりました~
狼蝶
BL
――『恥を知れ!』
婚約者にそう言い放たれた瞬間に、前世の自分が超恥ずかしがり屋だった記憶を思い出した公爵家次男、リツカ・クラネット8歳。
小姓にはいびり倒したことで怯えられているし、実の弟からは馬鹿にされ見下される日々。婚約者には嫌われていて、専属家庭教師にも未来を諦められている。
おまけに自身の腹を摘まむと大量のお肉・・・。
「よしっ、ダイエットしよう!」と決意しても、人前でダイエットをするのが恥ずかしい!
そんな『恥』を知った元悪役令息っぽい少年リツカが、彼を嫌っていた者たちを悩殺させてゆく(予定)のお話。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる