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24セーレの願い事
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昨日バックハグから、向かい合わせに変えたのはセラフィーレだ。しかも目が覚めてみると、自らレライエに抱きついている。
「ひょぉ、わっ、あ……ご、ごめん」
パッと手を離した。でも、セラフィーレが離しただけなので、レライエの腕の中に閉じ込められたままだ。
「おはよ───ござい、ます」
「あ、うん。おはよ。レイ」
推しが眩しい。シャンデリアよりも朝日よりも眩しい。そして今日もイケメンに感謝するしかない。
(落ち着け……)
昨日考えてたことを実行する。ディードに姿を見せること。魔導書のセラフィーレが婚約者の振りをするのは無理だ。それでも成人祝賀会のダンスパートナーなら、ディードの遠縁の貴族として設定をお願い出来ないか聞きたい。
マナーはセバスに指導を受けているレライエの姿を、ずっと見ているから学べている。知識も勉強だけは得意だったからこれも問題ない。後は、メグからダンスの女性パートを今から習えば問題ない。
メグやセバスにも、認識してもらって……簡単じゃないかも知れないな。でも魔導書の存在は、可能な限り秘密にしておかないとだめだ。
それに王妃派や神官長にバレたら、一緒に召喚され一時とは言え魔力をまとったのだから、神子の魔導書になれと言われるのも困る。残り二冊のうち、一冊なら……特別ルートで手に入るかも知れないし。そちらに誘導して見るのもいいが、何せあの魔力を喜んで受け入れるとも思えない。とにかく引き離されるようなヘマはしない様に気を付けよう。
(だいたい、相性が最初から悪かったもんね)
って、考えている間も抱きしめられて、すりすりされている。昨日セラフィーレ自身も同じ様にしたが、推しからは駄目だ。刺激が強すぎる。
(可愛いけど、破壊力がっ。いい香りもする)
「レイ。今日お願いがあるんだけど」
擦り寄っていたレライエが、少しだけ体を引いてくれた。
「セーレ様のお願いですか?──離れる、別れる、置いて出て行くとか以外なら」
「出て行かないって」
「あ、婚約者を作るのも無しです」
「それは、王命なら断れないよね?」
「第一王子殿下の邪魔になりたくない、揉めたくないと言えば良いと思います。成人したら領地で隠居生活することを提案してもいいと思います」
「隠居生活……単なるスローライフで良くない?」
「スローライフ?」
「田舎でのんびり、まったり?領地経営」
(隠居生活……と言えば、そうなのか?でも、若いから好きな人とイチャイチャとかはありだよね?)
「スロ……ライフ? まあ、セーレ様と二人なら楽しいですね。それに、神子と第一王子殿下が厄災を解決してくれるでしょうから。目立たずにセーレ様とずっと一緒にスローライフしましょう」
「レイ……でも、未練とかない?」
「あの時、セーレ様に会っていなかったら、こうして生きていないと思うので」
「僕は、本当は、もっとレイを自由にしてあげたい」
「自由ですよ。だってほら、魔法も剣も使える様になりました」
寝そべっていた体勢から、向かい合わせに太腿に乗せられて抱きしめられる。
「安定した魔力のおかげでセーレ様とこうして一緒なのは嬉しいですね。ただ重みを感じないのが残念です。ちゃんと実体化が出来たらいいのに。体温ももっと感じたいです」
(本当にそうなったなら……)
「それで、セーレ様お願いごとは、なんですか?」
「──ダンスのパートナーなんだけど。実体化を本気で、試していきたくて。ディードに協力をしてもらおうかと」
「嬉しいですが、なぜそんな話になるのですか?」
セラフィーレが考えたことを一通り話して聞かせてみた。
「セーレ様をディードの遠縁に……ダンスをメグに習うのですね?」
「いきなりじゃ、ダンスは無理だから。魔導書のことは秘密にしたいから、レイの魔力の安定もさらに頑張ってもらうとか……やっぱりいい。図々しいよね」
「セーレ様?」
「魔導書だから、連れて行ってはもらえるけど、自分の足で走ったり、ダンスとかしてみたくなって。ごめん。自分のことばかりだね。魔導書としてはバレたくないというか……」
またギュッと抱きしめられて、背中をポンポンとして来た。これではどちらが大人かわからない。
「魔導書のことは、絶対にバレない方がいいです。王妃も第一王子だって奪いに来る可能性があります。もちろん、渡す気はありません」
「──うん」
「自由に動きたい気持ちも、俺には分かります。ちゃんと計画を練りましょう」
「──いいの?レイを護るだけなら、魔導書から出なきゃ良いことなのに」
「俺も、もっと触れたいし。出来るなら俺の婚約者として発表しましょう」
「いやいやいや……魔導書だよ!冷静になって!虫避けにはなるから」
「俺とセーレ様の身の安全に為です、ね?」
「安全の為?でも、婚約者はちょっと待って。まだレイ以外に認識される様な、実体化の維持の練習もしてない」
「練習、がんばりましょうね」
そしてこれが、まさかの事態を招いてしまった。
「ひょぉ、わっ、あ……ご、ごめん」
パッと手を離した。でも、セラフィーレが離しただけなので、レライエの腕の中に閉じ込められたままだ。
「おはよ───ござい、ます」
「あ、うん。おはよ。レイ」
推しが眩しい。シャンデリアよりも朝日よりも眩しい。そして今日もイケメンに感謝するしかない。
(落ち着け……)
昨日考えてたことを実行する。ディードに姿を見せること。魔導書のセラフィーレが婚約者の振りをするのは無理だ。それでも成人祝賀会のダンスパートナーなら、ディードの遠縁の貴族として設定をお願い出来ないか聞きたい。
マナーはセバスに指導を受けているレライエの姿を、ずっと見ているから学べている。知識も勉強だけは得意だったからこれも問題ない。後は、メグからダンスの女性パートを今から習えば問題ない。
メグやセバスにも、認識してもらって……簡単じゃないかも知れないな。でも魔導書の存在は、可能な限り秘密にしておかないとだめだ。
それに王妃派や神官長にバレたら、一緒に召喚され一時とは言え魔力をまとったのだから、神子の魔導書になれと言われるのも困る。残り二冊のうち、一冊なら……特別ルートで手に入るかも知れないし。そちらに誘導して見るのもいいが、何せあの魔力を喜んで受け入れるとも思えない。とにかく引き離されるようなヘマはしない様に気を付けよう。
(だいたい、相性が最初から悪かったもんね)
って、考えている間も抱きしめられて、すりすりされている。昨日セラフィーレ自身も同じ様にしたが、推しからは駄目だ。刺激が強すぎる。
(可愛いけど、破壊力がっ。いい香りもする)
「レイ。今日お願いがあるんだけど」
擦り寄っていたレライエが、少しだけ体を引いてくれた。
「セーレ様のお願いですか?──離れる、別れる、置いて出て行くとか以外なら」
「出て行かないって」
「あ、婚約者を作るのも無しです」
「それは、王命なら断れないよね?」
「第一王子殿下の邪魔になりたくない、揉めたくないと言えば良いと思います。成人したら領地で隠居生活することを提案してもいいと思います」
「隠居生活……単なるスローライフで良くない?」
「スローライフ?」
「田舎でのんびり、まったり?領地経営」
(隠居生活……と言えば、そうなのか?でも、若いから好きな人とイチャイチャとかはありだよね?)
「スロ……ライフ? まあ、セーレ様と二人なら楽しいですね。それに、神子と第一王子殿下が厄災を解決してくれるでしょうから。目立たずにセーレ様とずっと一緒にスローライフしましょう」
「レイ……でも、未練とかない?」
「あの時、セーレ様に会っていなかったら、こうして生きていないと思うので」
「僕は、本当は、もっとレイを自由にしてあげたい」
「自由ですよ。だってほら、魔法も剣も使える様になりました」
寝そべっていた体勢から、向かい合わせに太腿に乗せられて抱きしめられる。
「安定した魔力のおかげでセーレ様とこうして一緒なのは嬉しいですね。ただ重みを感じないのが残念です。ちゃんと実体化が出来たらいいのに。体温ももっと感じたいです」
(本当にそうなったなら……)
「それで、セーレ様お願いごとは、なんですか?」
「──ダンスのパートナーなんだけど。実体化を本気で、試していきたくて。ディードに協力をしてもらおうかと」
「嬉しいですが、なぜそんな話になるのですか?」
セラフィーレが考えたことを一通り話して聞かせてみた。
「セーレ様をディードの遠縁に……ダンスをメグに習うのですね?」
「いきなりじゃ、ダンスは無理だから。魔導書のことは秘密にしたいから、レイの魔力の安定もさらに頑張ってもらうとか……やっぱりいい。図々しいよね」
「セーレ様?」
「魔導書だから、連れて行ってはもらえるけど、自分の足で走ったり、ダンスとかしてみたくなって。ごめん。自分のことばかりだね。魔導書としてはバレたくないというか……」
またギュッと抱きしめられて、背中をポンポンとして来た。これではどちらが大人かわからない。
「魔導書のことは、絶対にバレない方がいいです。王妃も第一王子だって奪いに来る可能性があります。もちろん、渡す気はありません」
「──うん」
「自由に動きたい気持ちも、俺には分かります。ちゃんと計画を練りましょう」
「──いいの?レイを護るだけなら、魔導書から出なきゃ良いことなのに」
「俺も、もっと触れたいし。出来るなら俺の婚約者として発表しましょう」
「いやいやいや……魔導書だよ!冷静になって!虫避けにはなるから」
「俺とセーレ様の身の安全に為です、ね?」
「安全の為?でも、婚約者はちょっと待って。まだレイ以外に認識される様な、実体化の維持の練習もしてない」
「練習、がんばりましょうね」
そしてこれが、まさかの事態を招いてしまった。
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