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21パーティの後で。
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すでに、ディードは部屋に戻らせていた。セラフィーレはいつものように離宮を守るため結界を張り、さらにレライエの部屋にも別の結界を構築して魔力を乗せる。
先程の神子の様子が、ちらついて落ち着かない。レライエが湯浴みに行っている間に、ベッドの縁に座り祝賀会のことを思い出していた。
(まさかね……難易度MAXのレライエを攻略する気じゃないよね?)
相手は神子で、攻略に来たらと不安になってしまう。星七の時にレライエを攻略できていない。無課金勢だったから、何度もやり直しをしていただけだった。本物の神子が本気になったら、セラフィーレに勝ち目はない。ただ王妃派と揉めたくないとレライエは言っていたので、第一王子殿下の傍にいる神子に簡単に気を許すとも思えないけど。
セラフィーレは魔導書を抱きしめて、ゆっくりとクッションに沈み込むように背を預けた。
「神子と関わらない方が、レイが幸せになるって思い込んでた……」
根本から大きな間違いなのだ。この世界を救う神子が、第一王子殿下や、ディードを愛し救うように、レライエのことだって誰よりも幸せに出来る可能性がある。
「もしかしたら、ここに僕がいたらレイの邪魔になる?」
『邪魔なんだよ!!』
火事の時に誰かに言われた言葉だ。もっとも子供の頃は、さらに酷い言葉を言われていたから、そこまで傷つきはしない。
それでも、レライエに邪魔だと言われたらと想像して、ギュッと目を瞑った。
「レイから……いつか離れるべき?」
ギシリっとベッドが軋んだ。
「──俺を捨てる気ですか?」
声変わりして低くなった声が更に低く、冷たくセラフィーレの耳に届いた。
ベッドが軋むまで気が付かず、ほとんど音もなく現れた目の前にいる人の、視線から逃げられない。いつの間にか湯浴みから戻って来たレライエに、迫られているみたいに両手の間に閉じ込められている。推しの顔が目の前にあるので、少しづつ顔に熱が集まっていく。
「──え?捨てないよ?」
「今、俺から離れるようなこと言いませんでしたか?」
「──いつか、レイにも大切な人が出来たらね。こんなに頻繁に外に出ないというか。邪魔にならないように……って。ほら本の中で大人しくする感じ?かな……」
レライエの顔が近づいて、セラフィーレの首元辺りに顔を寄せて来たので、まだ乾かし終わってない湿った髪の毛が頬に触れてくる。
離れる様なことを言ったから、慌ててここに来たのだろうか?少し泣いているような感じもする。護るって決めているのだから、他の人との幸せごと応援して護るっていうべきかな?
「──いなくならないで」
小さな声には先程の鋭さはない。
必要とされたいのは、セラフィーレ自身も同じだ。捨てられたくないのも。腕をおずおずとレライエの背に回し優しく撫でた後、もう片方の手でレライエの髪の毛に触れる。
「風邪引いちゃうから」
風魔法で、髪を綺麗に乾かして更に撫でるようにすると、レライエは顔をあげた。
泣きそうにしている。その顔にそっと触れると抱き起こされてレライエの腕の中に閉じ込められる。
「俺にはセーレ様だけだ」
「──うん。ずっと護るって約束したのに。ごめん……ちょっと神子様を見てたら、レイとお兄さん達の関係とか……上手く繋いでくれたりしないかなと思ってしまって」
「必要ない」
「レイ……」
まだ、レライエは十六歳だ。後ろ盾のない弱い存在。
神子に預けるにしても、見極めないといけない。
「レイ。僕の言い方で不安にさせてごめんね。どうしたら……許してくれる?」
「キ……抱きしめてて下さい」
「き?」
「このままでいいです」
「いいよ。疲れたなら、ほらもう寝て。ぐっすり眠れるように安眠の魔法かけようか?」
「魔法はいいです」
「そう?」
「──魔法に頼らず、自然に眠れた方がいいですよね?」
「わかった。じゃあ、レイが寝るまでこうしてるね」
「いいえ。セーレ様も休んでください」
「僕は寝なくても大丈夫だし、疲れてないけど……本当にレイは心配症過ぎる」
思わず笑うと、レライエが少し拗ねたように呟いた。
「──いいから、もう寝ましょう」
「うん。お休みなさい」
静かに目を閉じる。いつも不思議な感覚になる。体がゆっくりと沈んでいく。
「セーレ様……お休みなさい」
レイとの魔力の相性がいいのか、本当に気持ちよく癒しの中へと落ちていく。しばらくして、フニッと柔らかい感触が唇に触れた気がした。レライエの優しい笑顔が見え、僕の推しは本当に尊いと思ったまま意識が沈んでいった。
先程の神子の様子が、ちらついて落ち着かない。レライエが湯浴みに行っている間に、ベッドの縁に座り祝賀会のことを思い出していた。
(まさかね……難易度MAXのレライエを攻略する気じゃないよね?)
相手は神子で、攻略に来たらと不安になってしまう。星七の時にレライエを攻略できていない。無課金勢だったから、何度もやり直しをしていただけだった。本物の神子が本気になったら、セラフィーレに勝ち目はない。ただ王妃派と揉めたくないとレライエは言っていたので、第一王子殿下の傍にいる神子に簡単に気を許すとも思えないけど。
セラフィーレは魔導書を抱きしめて、ゆっくりとクッションに沈み込むように背を預けた。
「神子と関わらない方が、レイが幸せになるって思い込んでた……」
根本から大きな間違いなのだ。この世界を救う神子が、第一王子殿下や、ディードを愛し救うように、レライエのことだって誰よりも幸せに出来る可能性がある。
「もしかしたら、ここに僕がいたらレイの邪魔になる?」
『邪魔なんだよ!!』
火事の時に誰かに言われた言葉だ。もっとも子供の頃は、さらに酷い言葉を言われていたから、そこまで傷つきはしない。
それでも、レライエに邪魔だと言われたらと想像して、ギュッと目を瞑った。
「レイから……いつか離れるべき?」
ギシリっとベッドが軋んだ。
「──俺を捨てる気ですか?」
声変わりして低くなった声が更に低く、冷たくセラフィーレの耳に届いた。
ベッドが軋むまで気が付かず、ほとんど音もなく現れた目の前にいる人の、視線から逃げられない。いつの間にか湯浴みから戻って来たレライエに、迫られているみたいに両手の間に閉じ込められている。推しの顔が目の前にあるので、少しづつ顔に熱が集まっていく。
「──え?捨てないよ?」
「今、俺から離れるようなこと言いませんでしたか?」
「──いつか、レイにも大切な人が出来たらね。こんなに頻繁に外に出ないというか。邪魔にならないように……って。ほら本の中で大人しくする感じ?かな……」
レライエの顔が近づいて、セラフィーレの首元辺りに顔を寄せて来たので、まだ乾かし終わってない湿った髪の毛が頬に触れてくる。
離れる様なことを言ったから、慌ててここに来たのだろうか?少し泣いているような感じもする。護るって決めているのだから、他の人との幸せごと応援して護るっていうべきかな?
「──いなくならないで」
小さな声には先程の鋭さはない。
必要とされたいのは、セラフィーレ自身も同じだ。捨てられたくないのも。腕をおずおずとレライエの背に回し優しく撫でた後、もう片方の手でレライエの髪の毛に触れる。
「風邪引いちゃうから」
風魔法で、髪を綺麗に乾かして更に撫でるようにすると、レライエは顔をあげた。
泣きそうにしている。その顔にそっと触れると抱き起こされてレライエの腕の中に閉じ込められる。
「俺にはセーレ様だけだ」
「──うん。ずっと護るって約束したのに。ごめん……ちょっと神子様を見てたら、レイとお兄さん達の関係とか……上手く繋いでくれたりしないかなと思ってしまって」
「必要ない」
「レイ……」
まだ、レライエは十六歳だ。後ろ盾のない弱い存在。
神子に預けるにしても、見極めないといけない。
「レイ。僕の言い方で不安にさせてごめんね。どうしたら……許してくれる?」
「キ……抱きしめてて下さい」
「き?」
「このままでいいです」
「いいよ。疲れたなら、ほらもう寝て。ぐっすり眠れるように安眠の魔法かけようか?」
「魔法はいいです」
「そう?」
「──魔法に頼らず、自然に眠れた方がいいですよね?」
「わかった。じゃあ、レイが寝るまでこうしてるね」
「いいえ。セーレ様も休んでください」
「僕は寝なくても大丈夫だし、疲れてないけど……本当にレイは心配症過ぎる」
思わず笑うと、レライエが少し拗ねたように呟いた。
「──いいから、もう寝ましょう」
「うん。お休みなさい」
静かに目を閉じる。いつも不思議な感覚になる。体がゆっくりと沈んでいく。
「セーレ様……お休みなさい」
レイとの魔力の相性がいいのか、本当に気持ちよく癒しの中へと落ちていく。しばらくして、フニッと柔らかい感触が唇に触れた気がした。レライエの優しい笑顔が見え、僕の推しは本当に尊いと思ったまま意識が沈んでいった。
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