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18ゲームスタート前
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もうすぐゲームがスタートする。神子も神殿で魔法を基礎から習い、第一王子殿下とも交流しているみたいだ。今のところ神子の傍にいる攻略対象者は、第一王子殿下と神官長だけ。護衛騎士枠のディードは第二王子殿下の傍にいて、神子との交流の機会が全くない。
(初めて会った時に、テオドールがディードをレイにあげちゃったし……)
色々と違うことが起きてるけど、厄災は起きないなんてことは、流石にないはず。だから、レライエが強くなるのは大事なことだ。
レライエは願い通り、ディードに師事し剣の訓練を受けている。最初は体格差がある中で、少しは優しくしても良いのではないかと思ったくらいだ。木製剣の持ち方から始まり、型を習い打撃の訓練に入ると、レライエはあざだらけになった。魔法で治癒するのは簡単だけど、自己回復の為にも化膿し悪化しそうな傷以外は、そのままにするようにと、ディードに嗜められた。簡単に治せると思うと無茶をする。
当たり前だが、怪我をしない方がいい。第二王子を特別扱いすることなく、正にスパルタで、ボロボロになるまで訓練をしている。
セーレは正直、魔法チートでレライエを守れば良いと思っていた部分がある。現代日本で生活していて、このように鬼気迫る状況を知らない。もしもセラフィーレがいない最悪の状態が来た時、怪我をしたまま戦う必要があるから。
「怪我をしても、隙を見て逃げるくらいになって下さい」
どんな状況でも動けないと駄目だという、ディードの言葉に重みを感じる。
(この人は本当にレイのことを大切にしてくれる)
それからは、魔法も甘やかすことなく教え、機転を効かせるために、色々な場面を想定して指導することにした。ただ、レライエの傷やアザは痛々しい。夜は最低限の癒しの魔法と、身長が急速に伸び出した彼の為に、筋肉を解す為にマッサージをセラフィーレが、レライエに施してから寝るのがルーティンに加わった。
成長痛もかさなっているので、マッサージは念入りにしてあげたい。
(推しの……筋肉が。ご褒美過ぎる)
「んん。セーレ様、そこ気持ち……いい」
「え、あっ……こ、こ、ここ? もう少し解す?」
「う……んん」
(ひゃーーー)
変態な妄想のせいで、どもってしまい恥ずかしい。レライエはベッドの上で腹ばいで上半身は裸だった。
真っ赤になっているだろう顔を、見せずにいられる背中側のマッサージは嬉しい。太もも裏に跨りグッグッと親指で押し、手のひらで円を描く様にすると、レライエの少し低くなった声にどきりとしてしまう。
「──はぁ……とてもいいです」
もう茹でダコみたいになっている顔は、水魔法で抑えるしかない。全部無駄に色気が増したレライエのせいだ。
実際のところ騎士のディードの方が、何倍も頼れるお兄さんになっていると思う。
(僕もディみたいに兄貴っぽくなりたかったんだけど、可愛らしい感じなんだよなぁ。すでに三兄弟の一番下みたいになってる。ううう)
今にも眠ってしまいそうになったレライエの背中を軽く揺さぶり、寝衣を着る様に促す。セラフィーレより逞しくなった腕が伸びてきて、向かい合わせに抱き締められた。
「レイ!寝ぼけちゃだめだよ。シャツ着て!風邪を引いてしまう」
「セーレ……が温かいから平気……」
「そんな訳ないって、魔導書なんだから」
「セーレ……様の魔力が、きっと相性が良いから、気持ちいい。このままがいい」
(いやいやいや。嬉しいけど、向かい合わせはきついんだって)
「こら、レイ!本当に風邪引くって」
「なら、ブランケットの中で、二人でくっついとけば、だいじょ……ぶ」
レライエの寝息が聞こえ始めた。こうなったら、朝までぐっすりコースになってしまう。魔法で引き寄せたブランケットを二人の体を覆う様にかけて、室内を暗くする。レライエが深く眠った後、セラフィーレは耳澄まし、離宮内をサーチしながら異常がないか確認する。今のところは、強い外敵が来ていないので平穏なままだ。
実は陛下からはきちんと、第二王子の予算が割り当てられていた。王妃派の文官などにより、数年間予算を横領されていた。王妃は気づいていて黙認していたみたいだが、セラフィーレはこれを見逃さなかった。魔法で偶然を装い陛下に気づかせただけ。
(予算を取り戻したのは大きいよね)
レライエを隠し護るよりは、敵対しない臣下として、いずれ王都を離れる計画を立てるつもりだ。第一王子殿下を脅かす存在ではなく、多少僻地いいので、王家の領地の一部分の領主になればいい。
別に第一王子殿下が、王太子として才能が無いわけではない。王太子としての重圧と、王妃の意地でこちらを敵対視しているだけなので、神子と殿下が上手くくっつけば、この国も安泰へ進む。だから関係修復をして行こうと、セラフィーレは心に決めている。
神子と第一王子殿下の成人祝賀会が、一緒に行われることも決まった。側妃の子であっても、第二王子殿下であり王の血筋を祝賀会に招待しない訳にはいかない。こちらも出席を断ることが出来なかった。
どうしたって、ゲームが始まれば隠れ様がないのだから。
レライエの机の上に、無造作に置かれた招待状があった。
(初めて会った時に、テオドールがディードをレイにあげちゃったし……)
色々と違うことが起きてるけど、厄災は起きないなんてことは、流石にないはず。だから、レライエが強くなるのは大事なことだ。
レライエは願い通り、ディードに師事し剣の訓練を受けている。最初は体格差がある中で、少しは優しくしても良いのではないかと思ったくらいだ。木製剣の持ち方から始まり、型を習い打撃の訓練に入ると、レライエはあざだらけになった。魔法で治癒するのは簡単だけど、自己回復の為にも化膿し悪化しそうな傷以外は、そのままにするようにと、ディードに嗜められた。簡単に治せると思うと無茶をする。
当たり前だが、怪我をしない方がいい。第二王子を特別扱いすることなく、正にスパルタで、ボロボロになるまで訓練をしている。
セーレは正直、魔法チートでレライエを守れば良いと思っていた部分がある。現代日本で生活していて、このように鬼気迫る状況を知らない。もしもセラフィーレがいない最悪の状態が来た時、怪我をしたまま戦う必要があるから。
「怪我をしても、隙を見て逃げるくらいになって下さい」
どんな状況でも動けないと駄目だという、ディードの言葉に重みを感じる。
(この人は本当にレイのことを大切にしてくれる)
それからは、魔法も甘やかすことなく教え、機転を効かせるために、色々な場面を想定して指導することにした。ただ、レライエの傷やアザは痛々しい。夜は最低限の癒しの魔法と、身長が急速に伸び出した彼の為に、筋肉を解す為にマッサージをセラフィーレが、レライエに施してから寝るのがルーティンに加わった。
成長痛もかさなっているので、マッサージは念入りにしてあげたい。
(推しの……筋肉が。ご褒美過ぎる)
「んん。セーレ様、そこ気持ち……いい」
「え、あっ……こ、こ、ここ? もう少し解す?」
「う……んん」
(ひゃーーー)
変態な妄想のせいで、どもってしまい恥ずかしい。レライエはベッドの上で腹ばいで上半身は裸だった。
真っ赤になっているだろう顔を、見せずにいられる背中側のマッサージは嬉しい。太もも裏に跨りグッグッと親指で押し、手のひらで円を描く様にすると、レライエの少し低くなった声にどきりとしてしまう。
「──はぁ……とてもいいです」
もう茹でダコみたいになっている顔は、水魔法で抑えるしかない。全部無駄に色気が増したレライエのせいだ。
実際のところ騎士のディードの方が、何倍も頼れるお兄さんになっていると思う。
(僕もディみたいに兄貴っぽくなりたかったんだけど、可愛らしい感じなんだよなぁ。すでに三兄弟の一番下みたいになってる。ううう)
今にも眠ってしまいそうになったレライエの背中を軽く揺さぶり、寝衣を着る様に促す。セラフィーレより逞しくなった腕が伸びてきて、向かい合わせに抱き締められた。
「レイ!寝ぼけちゃだめだよ。シャツ着て!風邪を引いてしまう」
「セーレ……が温かいから平気……」
「そんな訳ないって、魔導書なんだから」
「セーレ……様の魔力が、きっと相性が良いから、気持ちいい。このままがいい」
(いやいやいや。嬉しいけど、向かい合わせはきついんだって)
「こら、レイ!本当に風邪引くって」
「なら、ブランケットの中で、二人でくっついとけば、だいじょ……ぶ」
レライエの寝息が聞こえ始めた。こうなったら、朝までぐっすりコースになってしまう。魔法で引き寄せたブランケットを二人の体を覆う様にかけて、室内を暗くする。レライエが深く眠った後、セラフィーレは耳澄まし、離宮内をサーチしながら異常がないか確認する。今のところは、強い外敵が来ていないので平穏なままだ。
実は陛下からはきちんと、第二王子の予算が割り当てられていた。王妃派の文官などにより、数年間予算を横領されていた。王妃は気づいていて黙認していたみたいだが、セラフィーレはこれを見逃さなかった。魔法で偶然を装い陛下に気づかせただけ。
(予算を取り戻したのは大きいよね)
レライエを隠し護るよりは、敵対しない臣下として、いずれ王都を離れる計画を立てるつもりだ。第一王子殿下を脅かす存在ではなく、多少僻地いいので、王家の領地の一部分の領主になればいい。
別に第一王子殿下が、王太子として才能が無いわけではない。王太子としての重圧と、王妃の意地でこちらを敵対視しているだけなので、神子と殿下が上手くくっつけば、この国も安泰へ進む。だから関係修復をして行こうと、セラフィーレは心に決めている。
神子と第一王子殿下の成人祝賀会が、一緒に行われることも決まった。側妃の子であっても、第二王子殿下であり王の血筋を祝賀会に招待しない訳にはいかない。こちらも出席を断ることが出来なかった。
どうしたって、ゲームが始まれば隠れ様がないのだから。
レライエの机の上に、無造作に置かれた招待状があった。
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