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17神子と神官長
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召喚された後、魔力を測定されたが大した反応がない。神官長の表情からは、何を考えているか読めない分、なんと言えば正解なのか分からない。二葉にとって、三年も早くゲームの世界に呼び出された弊害としか、言いようがなかった。
「あの、魔法のない世界にいたので……今すぐに使えないのかも知れません」
「そうかも知れませんね」
冷ややかな神官長の口振りに、文句をいいたくなったが、後ろ盾を得る為には良い子にしておくべきだ。
やり直しはもう出来ない。
「異世界に召喚されて、まだ数日しか経っていません。これからこの世界に慣れて行くしかありません。だって元の世界には、戻れないのですよね?」
涙ぐみ、辛い顔を見せて少しでも被害者の振りをする。
──だが。
「神子様は、第二王子殿下に言いましたよね?」
「え?」
(何か言ったっけ?)
「召喚の日。『いいよ。そんな汚れた物を欲しいなんて、君変わってるね。私の物みたいだから欲しいのかな?』そう言ったんですよ」
そんなこと、よく覚えているなと二葉は、舌打ちしそうになる。
「二葉様は、神子として選ばれた自覚が最初からありましたよね? 特別な力を持っていて隠しているのではありませんか?」
どう言えば、今の魔力の少なさを納得して貰えるのだろう?ゲームは十八歳からですなんて、意味不明過ぎて伝わる気がしない。魔法を補うのは魔導書だけど、それが手に入るのはゲームが始まってからだ。
魔導書は王家にもあるはずだし、今なら神殿から手配してもらってもいいはずだ。守護者付きは、それこそゲームが始まり攻略対象との好感度が増す必要がある。
軽く二年以上先の話で、頭が痛い。
約二百年に一度しか召喚の儀式が出来ないのだ。俺を神子として育てる選択する方が、厄災の備えになると思う。見た目も神子に該当するのだから王国民の理解を得やすいはず。一体どうしたら納得させられるかと考えている。
そうか……この先数年の出来事なら分かる。未来予知を売りにすればそれらしいのではないか?二葉は、神子である可能性の高さを訴えていくことにした。
「──私の世界では、魔法はありません。ですが、突然違う世界に連れて行かれ、こつ然と姿を消す人がいるのです。私の国ではそれを神隠しと言います」
「神子様以外に、そう言うことがあったと?」
「実際、私は神に会ってここに来るように言われたんです」
二葉が指定した世界に来ただけで、神に頼まれた訳じゃないけど、それっぽく話を作っていく。未来予知……先見って言い方がそれっぽい気がする。
「神に会ったのですか?」
「炎に包まれ、これから起こることを記憶して行くようにと言われたんです」
「浄化だけでなく、先見が出来るのですね?」
「先見なら自信があります。体力的に不出来のせいか、ここに召喚される時に魔力を多く失ったようですが、ある時期になれば回復するようです。今の魔力では信じてもらえそうもありませんが。信じられないなら、元の世界に帰る方法を一緒に探して頂けませんか?」
火事の炎から救い出し、二葉が行きたいと思った世界へ転移させてくれたのは、結果的に神様だ。神様の加護があると思わせればいい。
「神子様を呼び出して起きながら、神子様を元の世界へ戻す力はありません。そこは、この世界の為にどうか許していただきたい。召喚の際に魔力を奪ってしまったのかも知れません。魔力が戻るまで、お手伝いをさせて下さい」
「神子……と認めて下さるのですか?」
二葉は、ホッと胸を撫で下ろした。帰る場所もなく、神子として覚醒するまでまだ先だ。今捨てられて、神殿から追い出されたくはない。平民とか、貧乏な暮らしをするくらいなら……現代にいた方がマシだ。泣き落とししか方法はないが、魔法の訓練をさせてくれれば、きっとこの世界を救う神子になれるはずだ。
「召喚されて、この世界に来たのは、間違いなく二葉様です。魔力が全くない訳ではありません。神子として、この世界のために魔法の訓練を受けていただけますか?」
思った通りになってニヤケそうな顔を抑えつつ、二葉は潤んだ瞳で神官長に微笑んだ。
「はい。私の国でも、十八歳になれば大人として認めてもらえます。それまで、魔法を学ぶ機会を私に下さい」
「異世界から呼んだ、大切な黒髪黒目の神子様です。誠心誠意ご指導させていただきます」
訓練に参加し、仮の魔導書で学びながら二葉は、ゲームのスタートまで良い子で過ごした。
「あの、魔法のない世界にいたので……今すぐに使えないのかも知れません」
「そうかも知れませんね」
冷ややかな神官長の口振りに、文句をいいたくなったが、後ろ盾を得る為には良い子にしておくべきだ。
やり直しはもう出来ない。
「異世界に召喚されて、まだ数日しか経っていません。これからこの世界に慣れて行くしかありません。だって元の世界には、戻れないのですよね?」
涙ぐみ、辛い顔を見せて少しでも被害者の振りをする。
──だが。
「神子様は、第二王子殿下に言いましたよね?」
「え?」
(何か言ったっけ?)
「召喚の日。『いいよ。そんな汚れた物を欲しいなんて、君変わってるね。私の物みたいだから欲しいのかな?』そう言ったんですよ」
そんなこと、よく覚えているなと二葉は、舌打ちしそうになる。
「二葉様は、神子として選ばれた自覚が最初からありましたよね? 特別な力を持っていて隠しているのではありませんか?」
どう言えば、今の魔力の少なさを納得して貰えるのだろう?ゲームは十八歳からですなんて、意味不明過ぎて伝わる気がしない。魔法を補うのは魔導書だけど、それが手に入るのはゲームが始まってからだ。
魔導書は王家にもあるはずだし、今なら神殿から手配してもらってもいいはずだ。守護者付きは、それこそゲームが始まり攻略対象との好感度が増す必要がある。
軽く二年以上先の話で、頭が痛い。
約二百年に一度しか召喚の儀式が出来ないのだ。俺を神子として育てる選択する方が、厄災の備えになると思う。見た目も神子に該当するのだから王国民の理解を得やすいはず。一体どうしたら納得させられるかと考えている。
そうか……この先数年の出来事なら分かる。未来予知を売りにすればそれらしいのではないか?二葉は、神子である可能性の高さを訴えていくことにした。
「──私の世界では、魔法はありません。ですが、突然違う世界に連れて行かれ、こつ然と姿を消す人がいるのです。私の国ではそれを神隠しと言います」
「神子様以外に、そう言うことがあったと?」
「実際、私は神に会ってここに来るように言われたんです」
二葉が指定した世界に来ただけで、神に頼まれた訳じゃないけど、それっぽく話を作っていく。未来予知……先見って言い方がそれっぽい気がする。
「神に会ったのですか?」
「炎に包まれ、これから起こることを記憶して行くようにと言われたんです」
「浄化だけでなく、先見が出来るのですね?」
「先見なら自信があります。体力的に不出来のせいか、ここに召喚される時に魔力を多く失ったようですが、ある時期になれば回復するようです。今の魔力では信じてもらえそうもありませんが。信じられないなら、元の世界に帰る方法を一緒に探して頂けませんか?」
火事の炎から救い出し、二葉が行きたいと思った世界へ転移させてくれたのは、結果的に神様だ。神様の加護があると思わせればいい。
「神子様を呼び出して起きながら、神子様を元の世界へ戻す力はありません。そこは、この世界の為にどうか許していただきたい。召喚の際に魔力を奪ってしまったのかも知れません。魔力が戻るまで、お手伝いをさせて下さい」
「神子……と認めて下さるのですか?」
二葉は、ホッと胸を撫で下ろした。帰る場所もなく、神子として覚醒するまでまだ先だ。今捨てられて、神殿から追い出されたくはない。平民とか、貧乏な暮らしをするくらいなら……現代にいた方がマシだ。泣き落とししか方法はないが、魔法の訓練をさせてくれれば、きっとこの世界を救う神子になれるはずだ。
「召喚されて、この世界に来たのは、間違いなく二葉様です。魔力が全くない訳ではありません。神子として、この世界のために魔法の訓練を受けていただけますか?」
思った通りになってニヤケそうな顔を抑えつつ、二葉は潤んだ瞳で神官長に微笑んだ。
「はい。私の国でも、十八歳になれば大人として認めてもらえます。それまで、魔法を学ぶ機会を私に下さい」
「異世界から呼んだ、大切な黒髪黒目の神子様です。誠心誠意ご指導させていただきます」
訓練に参加し、仮の魔導書で学びながら二葉は、ゲームのスタートまで良い子で過ごした。
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