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リスタート
12.最終話。続く想いと手紙と私。
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縁の退院。
疲労、貧血……睡眠不足。色々無理して来た、つまりもう若くないですからね定期的に健康診断に行くように医師に指導されていた。
美魔女だけど……よる年波には敵わないみたいでと、笑ったら、めちゃくちゃ怒られた。
璃桜の車で、縁を迎えに来て今から家に戻る所だ。
璃桜の、ピアスは相変わらずだったのだけど、雰囲気が変わったのだ。
落ち着いた感じだ。
一体どうしたのだろう。聞いてみようと思っていたけど、縁が怒るのでそっちは後回しにした。
「酷い、めちゃ心配したのに。一人にされたらどうしようってなったんだからね!」
「死にません」
「不養生で倒れたくせに」
「寧々子が、嫁に行くまで死にません」
その位元気なら、安心だけどもっと長生きして欲しい。
「本当に、倒れたの嘘みたいに元気ですね」
二人のやり取りを、黙って聞いていた璃桜が会話に自然に混ざってきた。
「璃桜くんも言うようになったわね」
「──元気でなりよりです」
本当に、璃桜が馴染んでしまって不思議な関係になりつつある。家庭教師の先生と生徒でもあり、手紙屋の仲間になる。
人には見えない者を感じとったり、不思議な猫に懐かれている人。寧々子自身も、変な人扱いだったから仲間といえばそうかもしれない。
璃桜の家族が、超お人好しな人達だった。だからこんなにも受け入れてもらえたのだと思った。
「縁さん。それより、聞いてもいい?」
「何?」
「縁さんが、悩んでいた手紙。それは、縁さんが届けるの?」
「ああ、あの手紙ね……」
「私が届けようか?」
「届けなくていいの」
「え?」
「──私宛なの。昔の恋人からの」
「おじいちゃん以外の人? どんな関係の人なの?」
「秘密」
「けち」
「過去は気にしないから」
「そうかもだけど……」
「覚えておいてあげたらいいのよ。ちゃんと、目の前にいてくれた事。その優しさに触れて幸せだった事」
「忘れないよ。忘れられないもの。あの時の記憶が戻ってよかった。お父さんにもお母さんにも、会えたから。幸せだったって思えたよ」
「璃桜くんの、おかげね」
「だ、大福のおかげよ。手紙を届けてくれたんだから」
「寧々子の言う通りって事にしとくわね」
「ちょっと、縁さん」
「本当に二人とも元気になって良かったです」
「そう言えば、鴉間神社って……縁結びだったかしら?」
「手紙屋の招き猫が、招いた縁が強かったんでしょう」
「そうかもね。ねぇ黒髪の璃桜くんも素敵ね」
「まあ、就活のことも考えたら、髪色くらい戻そうかと」
「ふ~ん」
ちょっと、縁が怪しんでる。
遅めの反抗期って、言ったせいかと寧々子は口を噤んだ。怒ってないと思いたい。
でも、落ち着いた璃桜はさらに目を惹く。本当に黙っていたらイケメンなのだから。
「手紙を届ける時に、派手すぎるとも思ったので。その時はピアスも減らします」
「真面目か……」
「寧々、なんか言った?」
「何でもありません」
「良いコンビね。今日あたり、手紙が届いてそう。その時はお願いするわね」
手紙を届けたい気持ちも。受け取る気持ちも。両方分かった今、この想いを繋いであげたいと寧々子は思う。
どうか、想いが届きますように。傷ついた想いが、少しでも軽くなりますように。
その為に、手紙屋の見習いを続けて行く事を寧々子は誓ったのだ。
終わり
疲労、貧血……睡眠不足。色々無理して来た、つまりもう若くないですからね定期的に健康診断に行くように医師に指導されていた。
美魔女だけど……よる年波には敵わないみたいでと、笑ったら、めちゃくちゃ怒られた。
璃桜の車で、縁を迎えに来て今から家に戻る所だ。
璃桜の、ピアスは相変わらずだったのだけど、雰囲気が変わったのだ。
落ち着いた感じだ。
一体どうしたのだろう。聞いてみようと思っていたけど、縁が怒るのでそっちは後回しにした。
「酷い、めちゃ心配したのに。一人にされたらどうしようってなったんだからね!」
「死にません」
「不養生で倒れたくせに」
「寧々子が、嫁に行くまで死にません」
その位元気なら、安心だけどもっと長生きして欲しい。
「本当に、倒れたの嘘みたいに元気ですね」
二人のやり取りを、黙って聞いていた璃桜が会話に自然に混ざってきた。
「璃桜くんも言うようになったわね」
「──元気でなりよりです」
本当に、璃桜が馴染んでしまって不思議な関係になりつつある。家庭教師の先生と生徒でもあり、手紙屋の仲間になる。
人には見えない者を感じとったり、不思議な猫に懐かれている人。寧々子自身も、変な人扱いだったから仲間といえばそうかもしれない。
璃桜の家族が、超お人好しな人達だった。だからこんなにも受け入れてもらえたのだと思った。
「縁さん。それより、聞いてもいい?」
「何?」
「縁さんが、悩んでいた手紙。それは、縁さんが届けるの?」
「ああ、あの手紙ね……」
「私が届けようか?」
「届けなくていいの」
「え?」
「──私宛なの。昔の恋人からの」
「おじいちゃん以外の人? どんな関係の人なの?」
「秘密」
「けち」
「過去は気にしないから」
「そうかもだけど……」
「覚えておいてあげたらいいのよ。ちゃんと、目の前にいてくれた事。その優しさに触れて幸せだった事」
「忘れないよ。忘れられないもの。あの時の記憶が戻ってよかった。お父さんにもお母さんにも、会えたから。幸せだったって思えたよ」
「璃桜くんの、おかげね」
「だ、大福のおかげよ。手紙を届けてくれたんだから」
「寧々子の言う通りって事にしとくわね」
「ちょっと、縁さん」
「本当に二人とも元気になって良かったです」
「そう言えば、鴉間神社って……縁結びだったかしら?」
「手紙屋の招き猫が、招いた縁が強かったんでしょう」
「そうかもね。ねぇ黒髪の璃桜くんも素敵ね」
「まあ、就活のことも考えたら、髪色くらい戻そうかと」
「ふ~ん」
ちょっと、縁が怪しんでる。
遅めの反抗期って、言ったせいかと寧々子は口を噤んだ。怒ってないと思いたい。
でも、落ち着いた璃桜はさらに目を惹く。本当に黙っていたらイケメンなのだから。
「手紙を届ける時に、派手すぎるとも思ったので。その時はピアスも減らします」
「真面目か……」
「寧々、なんか言った?」
「何でもありません」
「良いコンビね。今日あたり、手紙が届いてそう。その時はお願いするわね」
手紙を届けたい気持ちも。受け取る気持ちも。両方分かった今、この想いを繋いであげたいと寧々子は思う。
どうか、想いが届きますように。傷ついた想いが、少しでも軽くなりますように。
その為に、手紙屋の見習いを続けて行く事を寧々子は誓ったのだ。
終わり
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電車うさぎ様
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いつも、うさぎさんの応援が力になってます。
今年の11月に向けて頑張ります🥹😊
︎︎︎