32 / 32
リスタート
12.最終話。続く想いと手紙と私。
しおりを挟む
縁の退院。
疲労、貧血……睡眠不足。色々無理して来た、つまりもう若くないですからね定期的に健康診断に行くように医師に指導されていた。
美魔女だけど……よる年波には敵わないみたいでと、笑ったら、めちゃくちゃ怒られた。
璃桜の車で、縁を迎えに来て今から家に戻る所だ。
璃桜の、ピアスは相変わらずだったのだけど、雰囲気が変わったのだ。
落ち着いた感じだ。
一体どうしたのだろう。聞いてみようと思っていたけど、縁が怒るのでそっちは後回しにした。
「酷い、めちゃ心配したのに。一人にされたらどうしようってなったんだからね!」
「死にません」
「不養生で倒れたくせに」
「寧々子が、嫁に行くまで死にません」
その位元気なら、安心だけどもっと長生きして欲しい。
「本当に、倒れたの嘘みたいに元気ですね」
二人のやり取りを、黙って聞いていた璃桜が会話に自然に混ざってきた。
「璃桜くんも言うようになったわね」
「──元気でなりよりです」
本当に、璃桜が馴染んでしまって不思議な関係になりつつある。家庭教師の先生と生徒でもあり、手紙屋の仲間になる。
人には見えない者を感じとったり、不思議な猫に懐かれている人。寧々子自身も、変な人扱いだったから仲間といえばそうかもしれない。
璃桜の家族が、超お人好しな人達だった。だからこんなにも受け入れてもらえたのだと思った。
「縁さん。それより、聞いてもいい?」
「何?」
「縁さんが、悩んでいた手紙。それは、縁さんが届けるの?」
「ああ、あの手紙ね……」
「私が届けようか?」
「届けなくていいの」
「え?」
「──私宛なの。昔の恋人からの」
「おじいちゃん以外の人? どんな関係の人なの?」
「秘密」
「けち」
「過去は気にしないから」
「そうかもだけど……」
「覚えておいてあげたらいいのよ。ちゃんと、目の前にいてくれた事。その優しさに触れて幸せだった事」
「忘れないよ。忘れられないもの。あの時の記憶が戻ってよかった。お父さんにもお母さんにも、会えたから。幸せだったって思えたよ」
「璃桜くんの、おかげね」
「だ、大福のおかげよ。手紙を届けてくれたんだから」
「寧々子の言う通りって事にしとくわね」
「ちょっと、縁さん」
「本当に二人とも元気になって良かったです」
「そう言えば、鴉間神社って……縁結びだったかしら?」
「手紙屋の招き猫が、招いた縁が強かったんでしょう」
「そうかもね。ねぇ黒髪の璃桜くんも素敵ね」
「まあ、就活のことも考えたら、髪色くらい戻そうかと」
「ふ~ん」
ちょっと、縁が怪しんでる。
遅めの反抗期って、言ったせいかと寧々子は口を噤んだ。怒ってないと思いたい。
でも、落ち着いた璃桜はさらに目を惹く。本当に黙っていたらイケメンなのだから。
「手紙を届ける時に、派手すぎるとも思ったので。その時はピアスも減らします」
「真面目か……」
「寧々、なんか言った?」
「何でもありません」
「良いコンビね。今日あたり、手紙が届いてそう。その時はお願いするわね」
手紙を届けたい気持ちも。受け取る気持ちも。両方分かった今、この想いを繋いであげたいと寧々子は思う。
どうか、想いが届きますように。傷ついた想いが、少しでも軽くなりますように。
その為に、手紙屋の見習いを続けて行く事を寧々子は誓ったのだ。
終わり
疲労、貧血……睡眠不足。色々無理して来た、つまりもう若くないですからね定期的に健康診断に行くように医師に指導されていた。
美魔女だけど……よる年波には敵わないみたいでと、笑ったら、めちゃくちゃ怒られた。
璃桜の車で、縁を迎えに来て今から家に戻る所だ。
璃桜の、ピアスは相変わらずだったのだけど、雰囲気が変わったのだ。
落ち着いた感じだ。
一体どうしたのだろう。聞いてみようと思っていたけど、縁が怒るのでそっちは後回しにした。
「酷い、めちゃ心配したのに。一人にされたらどうしようってなったんだからね!」
「死にません」
「不養生で倒れたくせに」
「寧々子が、嫁に行くまで死にません」
その位元気なら、安心だけどもっと長生きして欲しい。
「本当に、倒れたの嘘みたいに元気ですね」
二人のやり取りを、黙って聞いていた璃桜が会話に自然に混ざってきた。
「璃桜くんも言うようになったわね」
「──元気でなりよりです」
本当に、璃桜が馴染んでしまって不思議な関係になりつつある。家庭教師の先生と生徒でもあり、手紙屋の仲間になる。
人には見えない者を感じとったり、不思議な猫に懐かれている人。寧々子自身も、変な人扱いだったから仲間といえばそうかもしれない。
璃桜の家族が、超お人好しな人達だった。だからこんなにも受け入れてもらえたのだと思った。
「縁さん。それより、聞いてもいい?」
「何?」
「縁さんが、悩んでいた手紙。それは、縁さんが届けるの?」
「ああ、あの手紙ね……」
「私が届けようか?」
「届けなくていいの」
「え?」
「──私宛なの。昔の恋人からの」
「おじいちゃん以外の人? どんな関係の人なの?」
「秘密」
「けち」
「過去は気にしないから」
「そうかもだけど……」
「覚えておいてあげたらいいのよ。ちゃんと、目の前にいてくれた事。その優しさに触れて幸せだった事」
「忘れないよ。忘れられないもの。あの時の記憶が戻ってよかった。お父さんにもお母さんにも、会えたから。幸せだったって思えたよ」
「璃桜くんの、おかげね」
「だ、大福のおかげよ。手紙を届けてくれたんだから」
「寧々子の言う通りって事にしとくわね」
「ちょっと、縁さん」
「本当に二人とも元気になって良かったです」
「そう言えば、鴉間神社って……縁結びだったかしら?」
「手紙屋の招き猫が、招いた縁が強かったんでしょう」
「そうかもね。ねぇ黒髪の璃桜くんも素敵ね」
「まあ、就活のことも考えたら、髪色くらい戻そうかと」
「ふ~ん」
ちょっと、縁が怪しんでる。
遅めの反抗期って、言ったせいかと寧々子は口を噤んだ。怒ってないと思いたい。
でも、落ち着いた璃桜はさらに目を惹く。本当に黙っていたらイケメンなのだから。
「手紙を届ける時に、派手すぎるとも思ったので。その時はピアスも減らします」
「真面目か……」
「寧々、なんか言った?」
「何でもありません」
「良いコンビね。今日あたり、手紙が届いてそう。その時はお願いするわね」
手紙を届けたい気持ちも。受け取る気持ちも。両方分かった今、この想いを繋いであげたいと寧々子は思う。
どうか、想いが届きますように。傷ついた想いが、少しでも軽くなりますように。
その為に、手紙屋の見習いを続けて行く事を寧々子は誓ったのだ。
終わり
20
お気に入りに追加
11
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
⚠️不倫等を推奨する作品ではないです。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
たとえ世界に誰もいなくなっても、きみの音は忘れない
夕月
ライト文芸
初夏のある日、蓮は詩音という少女と出会う。
人の記憶を思い出ごと失っていくという難病を抱えた彼女は、それでも明るく生きていた。
いつか詩音が蓮のことを忘れる日が来ることを知りながら、蓮は彼女とささやかな日常を過ごす。
だけど、日々失われていく彼女の記憶は、もう数えるほどしか残っていない。
病を抱えながらもいつも明るく振る舞う詩音と、ピアノ男子 蓮との、忘れられない――忘れたくない夏の話。
作中に出てくる病気/病名は、創作です。現実の病気等とは全く異なります。
第6回ライト文芸大賞にて、奨励賞をいただきました。ありがとうございます!
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
Shizukuruさま♡
ギリギリですが応援を送らせていただきます!
頑張ってー♡
しずちゃんファイトー!
めーちゃん
いつもと違うジャンルの挑戦難しかったです。
応援本当にありがとう😊
励みになりました。
電車うさぎ様
応援ありがとうございました。
何とか、完結まで辿り着きました。
今年もがんばってコンテストに参加します。
本当にいつもありがとうございます⸜🌷︎⸝
やっとやっとこちらの作品が読めました (涙)
最初から最新話まで一気読み(目が...目が...またまた涙)
BLではないShizukuru様もスキ😍デス
全然応援できなくてごめんなさいm(__)m
ハートマーク押しまくり投票もしました🤗
ラストまで頑張ってくださいネ 🏁フレーフレー
Shizu様教(狂)信者の🚃🐰は11月までに体調を整えて万全の態勢で応援したいと思っています
いつも素敵なお話をありがとうございます😆💕✨
電車うさぎ様
いつも応援ありがとうございます。
めちゃくちゃ嬉しいです😭
お身体大事にしてください。無理しないでね。
いつも、うさぎさんの応援が力になってます。
今年の11月に向けて頑張ります🥹😊
︎︎︎