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「待って!」
あの時と同じだ。大福が手紙を銜えて走って逃げた。
──璃桜の所に。
上半身を起こした時、叔母さんの声が聞こえる。
「良かった……ちょっと熱ぽいから、どうしようかと思ってたの。待っててね。汗を拭くのにホットタオル持ってくる。でも、目は冷やした方がいいかな」
そう言って璃桜の叔母が部屋を後にした。
「大福……いない? 夢?」
期待した自分の愚かさに、また寧々子は、泣きそうになった。
用意されたタオルは二つ。最初はホットタオルを渡され、着替えてから冷たいタオルを目に当てる。
目隠しの状態のまま、クッションを背もたれに脱力してしまう。熱を測ると37度2分。
このくらいなら、学校に行けないわけではない。数学の授業の進みは早い。休んだら、きっと後悔してしまう。
(きっとブサイクな顔になってるよね?)
何となく、サボりのようで気が引ける。
色々と言い訳をつけようとする。
縁が入院した事、それに熱が上がるかもしれない。
何より、酷い顔だ。
休むのはどうなのか?グルグルと考えては、ため息をついていた。時間だけが過ぎて行く。
再三世話をしてくれる璃桜の叔母は、迷っている寧々子に告げる。
「高校には連絡したから大丈夫。今日休めば連休になるし、風邪を移さずにすむから気にしないの」
「はい」
「疲れが出てるのよ。後でお粥を持ってくるから。たまには……」
たまには……の後、少し声のトーンを落として「休養も必要。気に病んだりしないの」
そう言って、また出ていってしまった。
「叔母さん、めちゃお世話してくれてる。本当に、ここの人達は優しいな」
大福は……猫だもんね。夢の内容を思い返した。
──都合のいい夢だったんだ。そう結論付けようとした時、ノック音がした。
「どうぞ」
叔母さんかと思い、タオルを当てたまま入室を許可する。
いい匂いがして、タオルをずらすと金髪が見えた。
「あれ……? えっ、なんで」
「許可をもらったから」
「なんの?」
「入室の」
「いや、あの……叔母さんだと思ってた」
「だろうね。顔ひどいな」
「失礼過ぎる……」
美形に顔がひどいって言われるなんて。さらに頭まで良いなんて、世の中不公平だ。
「そんな事言えるなら、思ったより元気だ」
大福と寝るように薦めたのは、璃桜だった。
「いい夢なんかじゃなかった」
「とりあえず、お粥。腹が減るとイライラもするし、マイナス思考になるだろ?」
「マイナスも何も……」
「ほら、アーン」
「はぁ?」
口を開いた所にスプーンが押し込まれる。火傷しないか、一瞬ビクッとしてまった。思わず、もぐもぐと飲み込んだ。
──美味しい。食べやすい温かさの卵のお粥だ。
「美味しい……」
「ほら」
またスプーンが目の前にくる。
「自分で、食べるから」
こんなの恥ずかしくて無理だ。
「なら、しっかり食べろ。兄貴が作った特製粥だから」
「日向さんが?」
「料理は兄貴が一番上手いんだ」
そうなんだ。作っている様子が目に浮かぶ。
「やっと笑った。何を見たかとか、食べたら教えて。話がしたい」
頷くと、今までで一番優しい璃桜の笑顔があった。
あの時と同じだ。大福が手紙を銜えて走って逃げた。
──璃桜の所に。
上半身を起こした時、叔母さんの声が聞こえる。
「良かった……ちょっと熱ぽいから、どうしようかと思ってたの。待っててね。汗を拭くのにホットタオル持ってくる。でも、目は冷やした方がいいかな」
そう言って璃桜の叔母が部屋を後にした。
「大福……いない? 夢?」
期待した自分の愚かさに、また寧々子は、泣きそうになった。
用意されたタオルは二つ。最初はホットタオルを渡され、着替えてから冷たいタオルを目に当てる。
目隠しの状態のまま、クッションを背もたれに脱力してしまう。熱を測ると37度2分。
このくらいなら、学校に行けないわけではない。数学の授業の進みは早い。休んだら、きっと後悔してしまう。
(きっとブサイクな顔になってるよね?)
何となく、サボりのようで気が引ける。
色々と言い訳をつけようとする。
縁が入院した事、それに熱が上がるかもしれない。
何より、酷い顔だ。
休むのはどうなのか?グルグルと考えては、ため息をついていた。時間だけが過ぎて行く。
再三世話をしてくれる璃桜の叔母は、迷っている寧々子に告げる。
「高校には連絡したから大丈夫。今日休めば連休になるし、風邪を移さずにすむから気にしないの」
「はい」
「疲れが出てるのよ。後でお粥を持ってくるから。たまには……」
たまには……の後、少し声のトーンを落として「休養も必要。気に病んだりしないの」
そう言って、また出ていってしまった。
「叔母さん、めちゃお世話してくれてる。本当に、ここの人達は優しいな」
大福は……猫だもんね。夢の内容を思い返した。
──都合のいい夢だったんだ。そう結論付けようとした時、ノック音がした。
「どうぞ」
叔母さんかと思い、タオルを当てたまま入室を許可する。
いい匂いがして、タオルをずらすと金髪が見えた。
「あれ……? えっ、なんで」
「許可をもらったから」
「なんの?」
「入室の」
「いや、あの……叔母さんだと思ってた」
「だろうね。顔ひどいな」
「失礼過ぎる……」
美形に顔がひどいって言われるなんて。さらに頭まで良いなんて、世の中不公平だ。
「そんな事言えるなら、思ったより元気だ」
大福と寝るように薦めたのは、璃桜だった。
「いい夢なんかじゃなかった」
「とりあえず、お粥。腹が減るとイライラもするし、マイナス思考になるだろ?」
「マイナスも何も……」
「ほら、アーン」
「はぁ?」
口を開いた所にスプーンが押し込まれる。火傷しないか、一瞬ビクッとしてまった。思わず、もぐもぐと飲み込んだ。
──美味しい。食べやすい温かさの卵のお粥だ。
「美味しい……」
「ほら」
またスプーンが目の前にくる。
「自分で、食べるから」
こんなの恥ずかしくて無理だ。
「なら、しっかり食べろ。兄貴が作った特製粥だから」
「日向さんが?」
「料理は兄貴が一番上手いんだ」
そうなんだ。作っている様子が目に浮かぶ。
「やっと笑った。何を見たかとか、食べたら教えて。話がしたい」
頷くと、今までで一番優しい璃桜の笑顔があった。
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