手紙屋 ─ending letter─【完結】

Shizukuru

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 賑やかな人達に囲まれて、気持ちが紛れているのは確かだった。
不安が消えた訳でもない。それでも、頼っていいのだろうか?

 寧々子が泊まる部屋は、意外にも洋室のベットルームで可愛らしいインテリアが飾られていた。

「心配しないで、義姉さんの部屋じゃないから。私の子供の頃からの部屋なの。雑貨とか趣味で、自宅は狭いからね。ここに飾らせてもらってるだけ」

 客間でも、亡くなった人の部屋でもない。何よりも気兼ねするなとそう言ってくれてるのだ。
赤の他人なのに、身内のような扱いで、親身になってもらえている。
その気持ちが嬉しくて仕方がない。

「あの、私が使ってもいいんですか?」
「だって、隣に神社があって母屋の和室で……ってちょっと怖くない? 襖だから、鍵も掛からないもの。自慢の甥っ子達だけど、寧々子ちゃんにしてみたら、親戚でもない男の人だもんね。この部屋なら鍵もかかるから安心でしょ?」

 もし母親が生きていたら、叔母さんくらいの年齢。それが不思議な安心感になった。

「寧々子ちゃん、何かあったら声かけて隣の部屋に泊まるから」

 また頭を撫でられて「はい」と小さく答える。
部屋から出て行く叔母は、最後まで寧々子を気にして手を振ってドアを閉じた。

「──お休みなさい」

 明かりを消して、ようやく一人になる。静かになると、倒れた縁の姿を思い出した。

「縁さん、いなくならないで。一人になりたくない」

 ポツリと呟けば、涙が溢れてきた。
ぐずっ……ぐずっと、声を出さないようにベッドで小さくなる。声を殺して、小さく小さくなろうとする。

しばらくして、外から声が聞こえてきた。何か話をしている。トントンとノック音と「寧々子ちゃん」と叔母の声がした。

涙を拭いて、鼻をかみ。ドアの近くまで行くと「寧々子ちゃん、寝た?」ともう一度声がかかる。

(もしかして、何かあったの?)
慌ててドアを開けると叔母さんと、もう一人が立っていた。

「り、おうさん? 連絡でもあったんですか? 縁さんに何か」
「ほら、泣いてた」
「本当だわ。しっかりした振りをしてただけなのね」

「あの?」

さらに璃桜の腕の中に白い物体がいた。トンと腕の中から飛んで、トトトと寧々子の足に擦り寄った。


 「大福……?」
「一緒に寝たいらしい。一応雄だけど」
「へ?雄? え、単なる猫だし、性別は気にしないけど」

「──大福と寝たらだから、大福コレ置いてくよ」

「待って何で?」
「そのままの意味、一人は怖いだろ?」

「そうそう。未成年のお嬢さんに、りー君と添い寝させる訳にはねぇ。私じゃ余計に気を遣うだろうし。なんだけど、大福が側にいるとよく眠れるのよ」

「な、璃桜さんと添い寝って、そんなこと」

(恋人みたいに見られてるの?)

「叔母さん……悪趣味。下世話。最低」
「怖い、怖いから!そんな目で見ないでよ。笑って流すとこでしょ?」

「そもそも俺みたいなのと噂されたら気の毒だよ。兄貴ならともかく。兄貴には彼女がいるから、薦めないで下さいね」

「ほんと、そう言うとこ面倒くさいわね。寧々子ちゃん、遅くにごめんなさいね。アニマルセラピーと思って、大福と休んでみて。じゃ、本当にお休みなさい」


そう言って、今度こそ二人は退出した。

大福を残して。










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