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「あの、本当に家で一人で大丈夫です」
救急車で運ばれて原因もまだはっきりわからない。検査して何かが見つかった時どうしたらいいのか?不安だらけの中、璃桜だけではなく、日向が来てくれたのは心強かった。
学生の自分がどうにも出来ない部分を、日向が全てカバーしてくれたのだから。
後は家に帰って寝るだけだったのに。それなのに鴉間一家が、寧々子を心配だと言い拉致の如く連れ帰った。
家に一度立ち寄り着替えだ、学校の用意だとせかされ、縁に届けるものまで持って車に乗せられた。
乗った自分が悪いのだけど、と寧々子は冷静になった。
「心配で寝れないでしょう?部屋は余ってるし、もしもだけど、病院から急に呼び出されても、行くの大変だから。それに男だらけじゃあれだから、叔母さんにも来てもらってるんだ」
「そ、そこまでしてもらわなくても」
本当に大事過ぎて、冷や汗ものだ。明日、また璃桜に車に乗せられて通学とかしたら誤解が益々ひどくなるからだ。
璃桜は目立ち過ぎるのだ。金髪、ピアスよりも結局、顔が良すぎて注目されてしまう。
「父の妹なんだ。近所にいて、よく家に来るから平気平気。叔母さんの方が寧々子ちゃんの事心配して連れて来るように言ったんだよ。叔母さん家も男世帯で……娘に憧れてるから」
「でも、家の事も……」
「晩御飯くらいから朝までいていいから。夕方だけ家に戻ればいいでしよ? 学校の荷物や縁さんの物も必要だろうし、璃桜に送迎させるよ。」
ミラー越しに日向からウィンクされる。運転中の璃桜は、ちらりとこちらを見るだけだ。
「遠慮しないの。こんな時くらい甘えたらいい」
「手紙……も気になるし」
「寧々子ちゃんは、縁さんからは頼まれてない?」
「──はい」
「じゃあ、気にしなくていいんだよ」
「でも、待ってる人に申し訳なくて」
「── 必要だったなら、縁さんなら、ちゃんとそう言うよ」
日向が話してる間、璃桜はただ聞いてるだけだった。鴉間家に着いて荷物を降ろしてる所に誰かが近づいて来る。
「おかえり。ひー君。りー君。わ、可愛い……寧々子ちゃんよね?」
少し茶色の髪を後ろにお団子にしている背の高い女性だった。ラフなTシャツにデニム。四十代位に見える。
「あ、初めまして。黒須寧々子です。夜分にすみません」
「疲れたでしょ。何か軽く食べる?それともお風呂にする?」
「叔母さんの聞き方、新婚さんみたいだね」
「ひー君。いいでしょ? 女の子よ。娘に欲しい! 可愛い……着せ替えしたい」
「欲望がだだ漏れ過ぎる」
「りー君は黙って。ほら、荷物全部を持ってあげなさい。気の利かない男はだめよ。良いのは、顔だけって言われるわよ」
「りー君は、頭も良いよ」
ニコッと日向が笑った。本当に弟の事が大切な事が伝わって来る。日向が兄バカ振りを発揮した。
「仲が良くて羨ましいです」
兄弟も従兄弟もいない、寧々子の素直な感想だった。
ただ、ピタリと三人の動きが止まった。
璃桜達の叔母が、ブハッと吹き出して寧々子に近づき、頭を撫でた。
「えっ?」
「ふふ、反抗期のせいでね。ちょっと揉めてたのよ。なんせ一家の柱だったお義姉さんが亡くなったから」
「一家の柱……?」
「兄は生きてるわよ。我が兄ながら良い人過ぎて騙されやすくて。ちょっと頼りない所があるの。お義姉さんは、それを支えてて、そして嘘を見抜く人だったのよ」
「嘘を見抜く……。あ、だから璃桜さんの事信じてくれてたんですね」
思わず璃桜の方を見ると、ちょっと驚いた後、視線を逸らされてしまった。
救急車で運ばれて原因もまだはっきりわからない。検査して何かが見つかった時どうしたらいいのか?不安だらけの中、璃桜だけではなく、日向が来てくれたのは心強かった。
学生の自分がどうにも出来ない部分を、日向が全てカバーしてくれたのだから。
後は家に帰って寝るだけだったのに。それなのに鴉間一家が、寧々子を心配だと言い拉致の如く連れ帰った。
家に一度立ち寄り着替えだ、学校の用意だとせかされ、縁に届けるものまで持って車に乗せられた。
乗った自分が悪いのだけど、と寧々子は冷静になった。
「心配で寝れないでしょう?部屋は余ってるし、もしもだけど、病院から急に呼び出されても、行くの大変だから。それに男だらけじゃあれだから、叔母さんにも来てもらってるんだ」
「そ、そこまでしてもらわなくても」
本当に大事過ぎて、冷や汗ものだ。明日、また璃桜に車に乗せられて通学とかしたら誤解が益々ひどくなるからだ。
璃桜は目立ち過ぎるのだ。金髪、ピアスよりも結局、顔が良すぎて注目されてしまう。
「父の妹なんだ。近所にいて、よく家に来るから平気平気。叔母さんの方が寧々子ちゃんの事心配して連れて来るように言ったんだよ。叔母さん家も男世帯で……娘に憧れてるから」
「でも、家の事も……」
「晩御飯くらいから朝までいていいから。夕方だけ家に戻ればいいでしよ? 学校の荷物や縁さんの物も必要だろうし、璃桜に送迎させるよ。」
ミラー越しに日向からウィンクされる。運転中の璃桜は、ちらりとこちらを見るだけだ。
「遠慮しないの。こんな時くらい甘えたらいい」
「手紙……も気になるし」
「寧々子ちゃんは、縁さんからは頼まれてない?」
「──はい」
「じゃあ、気にしなくていいんだよ」
「でも、待ってる人に申し訳なくて」
「── 必要だったなら、縁さんなら、ちゃんとそう言うよ」
日向が話してる間、璃桜はただ聞いてるだけだった。鴉間家に着いて荷物を降ろしてる所に誰かが近づいて来る。
「おかえり。ひー君。りー君。わ、可愛い……寧々子ちゃんよね?」
少し茶色の髪を後ろにお団子にしている背の高い女性だった。ラフなTシャツにデニム。四十代位に見える。
「あ、初めまして。黒須寧々子です。夜分にすみません」
「疲れたでしょ。何か軽く食べる?それともお風呂にする?」
「叔母さんの聞き方、新婚さんみたいだね」
「ひー君。いいでしょ? 女の子よ。娘に欲しい! 可愛い……着せ替えしたい」
「欲望がだだ漏れ過ぎる」
「りー君は黙って。ほら、荷物全部を持ってあげなさい。気の利かない男はだめよ。良いのは、顔だけって言われるわよ」
「りー君は、頭も良いよ」
ニコッと日向が笑った。本当に弟の事が大切な事が伝わって来る。日向が兄バカ振りを発揮した。
「仲が良くて羨ましいです」
兄弟も従兄弟もいない、寧々子の素直な感想だった。
ただ、ピタリと三人の動きが止まった。
璃桜達の叔母が、ブハッと吹き出して寧々子に近づき、頭を撫でた。
「えっ?」
「ふふ、反抗期のせいでね。ちょっと揉めてたのよ。なんせ一家の柱だったお義姉さんが亡くなったから」
「一家の柱……?」
「兄は生きてるわよ。我が兄ながら良い人過ぎて騙されやすくて。ちょっと頼りない所があるの。お義姉さんは、それを支えてて、そして嘘を見抜く人だったのよ」
「嘘を見抜く……。あ、だから璃桜さんの事信じてくれてたんですね」
思わず璃桜の方を見ると、ちょっと驚いた後、視線を逸らされてしまった。
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