手紙屋 ─ending letter─【完結】

Shizukuru

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2.

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    あの時、大福は本当に何しに来たのだろう? 何もその場の変化は現れない。璃桜も特に何も言わなかった。

星那は、目を腫らしていたけど、やっと会いに来れたと最後は笑っていた。

自分の部屋に飾る花を買って帰ると言って、途中で車から降りて別れた。


◇◇◇



    家庭教師として、璃桜は週二回程、黒須家に来ている。
寧々子の部屋ではなく、リビングの側の作業台のようなオープンスペースだ。

黒須家は、縁と二人だけで暮らすには、広い間取りだ。
寧々子の個室だと、縁の仕事部屋から離れてしまう。

つまりは、先生とは言え狭い空間に二人だけにならないように、配慮を縁がしたのだ。

縁が時々リビングへ来ては、手を振ってコーヒーを片手に戻っていく。

お家カフェみたいな、割と立派なコーヒーマシンがカウンターに設置してある。水もボトルスタンドのようになっているので紅茶やお茶もお手軽に作れる。自慢のスペースだ。

「璃桜くん、遠慮せずにコーヒーとか飲んでね。お菓子とかもご自由にね」

「ありがとうございます」
璃桜を見ると、ん?って顔をした。

「黒猫には、紅茶用意しようか?レモンティー?」
「砂糖も欲しいです。おやつも」

頭を使うのだ。糖分が欲しい。
璃桜の口元が少し上がって、笑っているのが分かる。

「その問題解けたら、一度休もうか?」

髪の毛が伸び、少し黒い部分が見えてつい、疑問を口にした。

「髪の毛……また金髪にするんですか?」
「──問題解いて、飲み物用意するから」
「はーい」

横で採点されながら、紅茶を一口飲む。ちょっと甘めのレモンティーだ。

学校で、納得がいかなかった所も璃桜の説明はストンと理解出来る。教えるの天才なんじゃないか?と思うレベルだ。

「──理解早いな。全問正解」

心の中でガッツポーズ。二ヘラと頬が緩みそうなそんな感覚。

「璃桜さんの教え方が上手いので」
「そんな、ゴマすりいらないけど?」

言い方はアレだけど、満更でもない顔をしてノートを台の上に置いた。

「黒猫の家のコーヒー、上手いな。後で縁さんに豆の種類教えてもらおう」

縁はコーヒーも紅茶も、好きなのでかなり本格的な豆などを通販で買っている。寧々子は、コーヒーの香りは好きだが、まだ苦さになれなくて飲めないのだ。

「黒猫には、まだ早いもんね」

お子様って言われてるみたいでショックだったけど。紅茶の茶葉も、美味しくてグレードが高いから構わない。

「紅茶も美味しいので、大丈夫です」

最初の出会いから、こんな感じになるとは思わなかったけれど、今では良き兄のような雰囲気がある。いや良き兄なら、日向の方か?と思わなくもない。

なんか、掴みどころがない。友人であり、先生であり、助っ人なのかな?

「何、ガン見してるの?」
「ああ、えっと、気になってる事が二つほどあって」

璃桜の眉間に皺がよった。

「金髪の話?」
「ファションって事ですか? 受験終わって就職活動が始まるまでに、やってみたかったみたいな?それと、あの時の大福は、なんだったのかと」

「髪の毛は……虫除け。気にしなくていい」
「虫除け? 金髪だと虫が来ないの? ええっと……じゃ、大福は?」

「──星那から、夢を見たって聞かされた」
「夢? 」

「凪先輩に会えたらしいよ」
「え、ええ!?」

でね。それでも星那は嬉しそうだった」

嬉しくて涙が溢れそうになってしまう。
「本当に泣き虫」
そう言った璃桜も、少し瞳が潤んでいた。



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