22 / 32
リスタート
2.
しおりを挟む
あの時、大福は本当に何しに来たのだろう? 何もその場の変化は現れない。璃桜も特に何も言わなかった。
星那は、目を腫らしていたけど、やっと会いに来れたと最後は笑っていた。
自分の部屋に飾る花を買って帰ると言って、途中で車から降りて別れた。
◇◇◇
家庭教師として、璃桜は週二回程、黒須家に来ている。
寧々子の部屋ではなく、リビングの側の作業台のようなオープンスペースだ。
黒須家は、縁と二人だけで暮らすには、広い間取りだ。
寧々子の個室だと、縁の仕事部屋から離れてしまう。
つまりは、先生とは言え狭い空間に二人だけにならないように、配慮を縁がしたのだ。
縁が時々リビングへ来ては、手を振ってコーヒーを片手に戻っていく。
お家カフェみたいな、割と立派なコーヒーマシンがカウンターに設置してある。水もボトルスタンドのようになっているので紅茶やお茶もお手軽に作れる。自慢のスペースだ。
「璃桜くん、遠慮せずにコーヒーとか飲んでね。お菓子とかもご自由にね」
「ありがとうございます」
璃桜を見ると、ん?って顔をした。
「黒猫には、紅茶用意しようか?レモンティー?」
「砂糖も欲しいです。おやつも」
頭を使うのだ。糖分が欲しい。
璃桜の口元が少し上がって、笑っているのが分かる。
「その問題解けたら、一度休もうか?」
髪の毛が伸び、少し黒い部分が見えてつい、疑問を口にした。
「髪の毛……また金髪にするんですか?」
「──問題解いて、飲み物用意するから」
「はーい」
横で採点されながら、紅茶を一口飲む。ちょっと甘めのレモンティーだ。
学校で、納得がいかなかった所も璃桜の説明はストンと理解出来る。教えるの天才なんじゃないか?と思うレベルだ。
「──理解早いな。全問正解」
心の中でガッツポーズ。二ヘラと頬が緩みそうなそんな感覚。
「璃桜さんの教え方が上手いので」
「そんな、ゴマすりいらないけど?」
言い方はアレだけど、満更でもない顔をしてノートを台の上に置いた。
「黒猫の家のコーヒー、上手いな。後で縁さんに豆の種類教えてもらおう」
縁はコーヒーも紅茶も、好きなのでかなり本格的な豆などを通販で買っている。寧々子は、コーヒーの香りは好きだが、まだ苦さになれなくて飲めないのだ。
「黒猫には、まだ早いもんね」
お子様って言われてるみたいでショックだったけど。紅茶の茶葉も、美味しくてグレードが高いから構わない。
「紅茶も美味しいので、大丈夫です」
最初の出会いから、こんな感じになるとは思わなかったけれど、今では良き兄のような雰囲気がある。いや良き兄なら、日向の方か?と思わなくもない。
なんか、掴みどころがない。友人であり、先生であり、助っ人なのかな?
「何、ガン見してるの?」
「ああ、えっと、気になってる事が二つほどあって」
璃桜の眉間に皺がよった。
「金髪の話?」
「ファションって事ですか? 受験終わって就職活動が始まるまでに、やってみたかったみたいな?それと、あの時の大福は、なんだったのかと」
「髪の毛は……虫除け。気にしなくていい」
「虫除け? 金髪だと虫が来ないの? ええっと……じゃ、大福は?」
「──星那から、夢を見たって聞かされた」
「夢? 」
「凪先輩に会えたらしいよ」
「え、ええ!?」
「夢の中でね。それでも星那は嬉しそうだった」
嬉しくて涙が溢れそうになってしまう。
「本当に泣き虫」
そう言った璃桜も、少し瞳が潤んでいた。
星那は、目を腫らしていたけど、やっと会いに来れたと最後は笑っていた。
自分の部屋に飾る花を買って帰ると言って、途中で車から降りて別れた。
◇◇◇
家庭教師として、璃桜は週二回程、黒須家に来ている。
寧々子の部屋ではなく、リビングの側の作業台のようなオープンスペースだ。
黒須家は、縁と二人だけで暮らすには、広い間取りだ。
寧々子の個室だと、縁の仕事部屋から離れてしまう。
つまりは、先生とは言え狭い空間に二人だけにならないように、配慮を縁がしたのだ。
縁が時々リビングへ来ては、手を振ってコーヒーを片手に戻っていく。
お家カフェみたいな、割と立派なコーヒーマシンがカウンターに設置してある。水もボトルスタンドのようになっているので紅茶やお茶もお手軽に作れる。自慢のスペースだ。
「璃桜くん、遠慮せずにコーヒーとか飲んでね。お菓子とかもご自由にね」
「ありがとうございます」
璃桜を見ると、ん?って顔をした。
「黒猫には、紅茶用意しようか?レモンティー?」
「砂糖も欲しいです。おやつも」
頭を使うのだ。糖分が欲しい。
璃桜の口元が少し上がって、笑っているのが分かる。
「その問題解けたら、一度休もうか?」
髪の毛が伸び、少し黒い部分が見えてつい、疑問を口にした。
「髪の毛……また金髪にするんですか?」
「──問題解いて、飲み物用意するから」
「はーい」
横で採点されながら、紅茶を一口飲む。ちょっと甘めのレモンティーだ。
学校で、納得がいかなかった所も璃桜の説明はストンと理解出来る。教えるの天才なんじゃないか?と思うレベルだ。
「──理解早いな。全問正解」
心の中でガッツポーズ。二ヘラと頬が緩みそうなそんな感覚。
「璃桜さんの教え方が上手いので」
「そんな、ゴマすりいらないけど?」
言い方はアレだけど、満更でもない顔をしてノートを台の上に置いた。
「黒猫の家のコーヒー、上手いな。後で縁さんに豆の種類教えてもらおう」
縁はコーヒーも紅茶も、好きなのでかなり本格的な豆などを通販で買っている。寧々子は、コーヒーの香りは好きだが、まだ苦さになれなくて飲めないのだ。
「黒猫には、まだ早いもんね」
お子様って言われてるみたいでショックだったけど。紅茶の茶葉も、美味しくてグレードが高いから構わない。
「紅茶も美味しいので、大丈夫です」
最初の出会いから、こんな感じになるとは思わなかったけれど、今では良き兄のような雰囲気がある。いや良き兄なら、日向の方か?と思わなくもない。
なんか、掴みどころがない。友人であり、先生であり、助っ人なのかな?
「何、ガン見してるの?」
「ああ、えっと、気になってる事が二つほどあって」
璃桜の眉間に皺がよった。
「金髪の話?」
「ファションって事ですか? 受験終わって就職活動が始まるまでに、やってみたかったみたいな?それと、あの時の大福は、なんだったのかと」
「髪の毛は……虫除け。気にしなくていい」
「虫除け? 金髪だと虫が来ないの? ええっと……じゃ、大福は?」
「──星那から、夢を見たって聞かされた」
「夢? 」
「凪先輩に会えたらしいよ」
「え、ええ!?」
「夢の中でね。それでも星那は嬉しそうだった」
嬉しくて涙が溢れそうになってしまう。
「本当に泣き虫」
そう言った璃桜も、少し瞳が潤んでいた。
20
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。
⚠️不倫等を推奨する作品ではないです。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる